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アサーティブな自己表現で事業承継の課題を解決する!

事業承継の課題解決は、今や日本経済の成長にとって待ったなしの状況です。事業承継が進まない理由は様々ですが、経営者と後継者の気持ちのすれ違いや対話不足も大きな原因ではないでしょうか。関係者との対話を円滑にし、事業承継を円滑に進めるアサーティブな自己表現とは・・・

(掲載日 2021/03/19)

「事業承継で大切なアサーティブ・コミュニケーション」

【はじめに】


 「アサーティブ・コミュニケーション」という言葉を耳にしたことはありますか?

 「アサーティブ・コミュニケーション」あるいは「アサーション」は、「自分も相手も大切にする自己表現法」です。近年は、企業研修に取り入れられるなどビジネスの場でも注目されています。

 事業承継を進める上で、「経営理念や思いを、対話を通じて伝えること」はとても大切だと言われます。しかし、残念ながら、「言わなくても分かるはず」「伝えたつもり」など、経営者と後継者の対話不足のために、気持ちや考えがうまく伝わっていないことがあります。自分の意見を押し付けて相手を思い通りに動かそうとしたり、反対に、言いたいことを我慢して言えなかったりすると、ものごとが望ましい方向に進まなくなるおそれがあるでしょう。

 どうすれば、相手を尊重しながら、自分の気持ちを率直に表現することができるでしょうか。話し方・聞き方のコツをお伝えします。

【事業承継に早めに取り組むことは重要】


 帝国データバンクの調査によりますと、2020年の社長の平均年齢は60.1歳と、調査を開始した1990年以降、初めて60歳を上回りました。また、全国の後継者不在率は65.1%と依然高水準で、「早めの後継者選定および育成に取り組むことの重要性が増している」としています。(出典:「特別企画:全国社長年齢分析」帝国データバンク2021年2月発表、「全国企業『後継者不在率』動向調査(2020年)」帝国データバンク2020年11月発表)

 事業承継支援の現場でも、経営者から「後継者はいない」との声がよく聞かれると言われます。しかし、候補者はいたとしても「後継者と認めたくない」「きっと継ぎたくないだろう」「業績が思わしくないので、継がせたくない」と経営者が一人で思い込み、後継者とのコミュニケーションを遠慮している場合があるとしたら、大変もったいないことです。



【コミュニケーション3つのタイプ】


 アサーションの考え方では、人間関係における自己表現には、大きく分けて3つのタイプがあるとされています。人によって傾向が異なり、さらに、同じ人でも場面や相手によって表現のタイプが変わることがあります。

タイプ1.「非主張的自己表現(ノンアサーティブ)」
 自分よりも他者を優先して自分の意見を率直に言えない、あるいは、言ったとしても、自信がなく曖昧な表現のために理解されにくい自己表現です。自己主張しないので、異なる意見にも同意したと取られてしまいがちです。自分を抑え続けると、心身ともに不調をきたしたり不満がたまり過ぎたりして、突然、気持ちが爆発することがあります。

タイプ2. 「攻撃的自己表現(アグレッシブ)」
 自分のことを第一に考え、自分の意見を押し通します。他者を軽んじて優位に立とうとします。命令口調や、ときには大声で怒鳴ったりします。一時的に意見が通ったとしても、周りからは自分勝手で配慮のない人と見られてしまい、敬遠され孤立するおそれがあります。

タイプ3. 「アサーティブな自己表現」
 自分自身の気持ちや考えを大切にすると同時に、他者への配慮も忘れない自己表現です。自分の思いを捉えて、正直に、率直に相手に伝えようとします。そして、話した後は、相手の反応を待って対応しようとします。たとえ、意見が合わず思い通りにはいかなかったとしても、そのことを受け止め納得したり、新たに歩み寄りの話し合いを行ったりします。その結果、安定した気持ちのよい関係性を築くことができます。
 
 これら3つのタイプの特徴は、次の表の通りです。日頃の自分の言動は、どのタイプに近いでしょうか?

<3つのタイプの自己表現 特徴一覧表>

出典:「アサーション入門 自分も相手も大切にする自己表現法」(講談社現代新書 著:平木典子)




【アサーティブの基本ステップ】


 なぜ、アサーティブになれないのでしょうか?その背景には、「自分の本心を自分で把握できていないから」「失敗や周りの反応を必要以上に気にしすぎるから」「アサーティブな自己表現のスキルが身についていないから」などの理由が考えられます。
 そこで、アサーションをイメージしやすいように、基本ステップを見てみましょう。

ステップ1. 自分の気持ちを確かめる
 まずは自分の意見や気持ちを確かめます。いつもはっきりと明快であるとは限らず、あいまいな考えや気持ちがあることにも気づくことが大切です。プラスの感情、マイナスの感情、迷いや不安などもありのままに受け入れることが、自分を大切にするアサーションの第一歩です。

ステップ2. 正直に言語化する
 最初のステップで確かめた気持ちを、できるだけ正直に率直に言語化します。「迷っている」「困っている」「うまく言えない」といった気持ちも伝えてよいのです。

ステップ3. 相手の表現を大切にする
 言語化した自分の気持ちを、相手がどう受け止めたかに心を寄せます。言いっぱなしではなくて、今度は相手の表現を待って「聴く」ステップです。



【アサーティブな自己表現のスキル】


アサーティブな表現を身につけるために役立つ、5つのスキルをご紹介します。

スキル1.「私(アイ)メッセージ」で伝える
 自分の気持ちを伝えるときは、「私」を主語にして言語化します。例えば、「あなたは、仕事が遅い」と断定的に言うと、決めつけと取られる可能性があります。仕事が遅いと感じているのは「私」であり、相手は「そんなことはない」と反論するかもしれません。そこで、「私は急いでいるので、早くして欲しい」と「私」を主語にすることで、受け入れられやすくなる工夫をします。

スキル2. 肯定的に話す
 意見が食い違う場合、「できない」「そうじゃない」「だからだめなんだ」と否定的な表現をしてしまいがちです。「〇〇のやり方ならできる」「◯日後ならできる」というように肯定的な表現をすることで、話し合いを前向きに進めることができます。

スキル3. 傾聴姿勢を示す
 アサーティブ・コミュニケーションでは、「伝える」だけでなく、相手の話をよく「聴く」ことがとても大切です。積極的に聞く「傾聴」の姿勢を示すことで、相手は大切にしてもらっていると感じます。事業承継において、経営者の創業時の思いや理念、後継者の新しい取り組みへの意欲など、相手の気持ちに寄り添って相手の言いたいことを聞く姿勢を示せるかどうかが、関係性をよくする鍵を握ります。

スキル4. 非言語コミュニケーションを意識する
 言葉以外の視覚情報、具体的には、目線、表情、姿勢、手の動きなどの非言語コミュニケーションは、思う以上に大きな影響力を持っています。例えば、会話中に腕を組んで威圧的な態度を取ることは、攻撃的な自己表現です。一方、自信なさげにうつむいて相手と目線を合わさないのは非主張的自己表現です。相手がどう受け取るかについて、意識を向けることが大切です。

スキル5.「DESC法」で整理して伝える
 話し合いで何かを決めたり課題を解決したりする場面では、「DESC法」にあてはめて表現することが役に立ちます。DESC法とは、「Describe:状況の描写」「Express:主観的な気持ちの表現」「Specify:解決に向けての提案」「Choose:相手の反応を想定したうえでの選択」それぞれの頭文字からきています。各ステップの内容は、次のとおりです。

Describe  状況の描写状況を客観的、具体的に述べます。意図や気持ちは含めません。
Express  気持ちの表現自分の主観的な考えや思いを述べます。感情的にならないように。
Specify  解決策の提案相手にこうしてほしいと望む行動や、解決に向けた提案を述べます。
Choose  選択肢の準備相手の反応(イエス/ノー)を想定し、次の表現を準備・選択します。



【さいごに】


 2019年度版中小企業白書(第2部P.227) には、「事業を継ぐ可能性のあるものが、信頼の置ける第三者を交えて事業承継に向けて話し合うのも、現経営者と円滑に準備を進めるために有効な一つの選択肢といえるだろう」と記されています。
 経営者と後継者の思いをつなげて気持ちよく事業承継を進めていくために、「自分も相手も大切にするアサーティブ・コミュニケーション」の手法を、何か一つ試してみてはいかがでしょうか。


参考文献:
「アサーション入門 自分も相手も大事にする自己表現法」(講談社現代新書 著:平木典子)
「改訂版 アサーション・トレーニング さわやかな<自己表現>のために」(発行 日本・精神技術研究所/発売 金子書房 著:平木典子)

著者プロフィール

井田 優里(中小企業診断士/事業承継士)

現在、公益財団法人の事業承継プロジェクトマネージャーとして、事業承継計画策定支援等、経営者の気持ちに寄り添ったお手伝いができるよう活動中。信条は「経営者への敬意と傾聴を大切に」。「アサーティブ・コミュニケーション」等、集合研修に約7年間従事。関西AMラジオ局「お天気お姉さん」、酒類業界の取材・執筆の経験を活かし、「話す」「聞く」ことの研鑽を重ねている。

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