自社の商品・サービスに顧客がどれだけ満足しているかを客観的に把握している
顧客満足度を高め、顧客が顧客を呼ぶ仕組みを
マーケティングにおいては、「はじめに顧客ありき」という顧客志向の発想を持ち、顧客の声に耳を傾けることが重要となります。マーケティングの目標は、顧客満足の向上です。企業は、自社の商品やサービスに顧客がどれだけ満足しているか、すなわち「顧客満足度」を把握することが欠かせません。
企業が提供する商品・サービスに満足している顧客は、リピーターになってくれますし、口コミでよい評判を広げてくれることも期待できるでしょう。顧客満足度を高めることによって、顧客が顧客を呼ぶメカニズムが生まれるのです。
逆に、顧客は不満があれば、利用する企業を変えてしまうことは、下の図からも明らかです。この図は小売業の事例ですが、利用していた店に対する満足度が低い顧客は、3年もすれば、別の店に移行してしまうことを示しています。
顧客の選択肢が増加している今日、不満を持ちながら利用し続けるといった、惰性の利用はほとんどないといってよいでしょう。顧客満足度を高めることは、顧客を維持する基本になります。
顧客満足度を高めるためには、顧客に満足をもたらす要因を把握することが不可欠です。自社の顧客の満足につながっているのは、商品の機能なのか、商品のイメージなのか、サービスなのか、アフターサービスなのか、接客なのか、それとも他の理由なのかを把握することです。
不満を把握し、不満を解消
顧客の満足度を高める一方で、顧客の不満を解消することも大切です。前述の通り、不満な顧客は、早かれ遅かれ、別の企業に移行してしまいます。さらに、顧客の不満は、企業にとっての「悪い口コミ」をもたらし、企業のイメージを下げてしまうことにもなります。
これまでの研究では、よい口コミよりも、悪い口コミのほうが、その伝播力が高いことが示されています。満足した顧客は約3人に話すが、不満な顧客は約11人にその体験を話すともいわれます。よい体験(満足)よりも、悪い体験(不満)のほうが印象に残りやすいからでしょう。
顧客の不満を解消するためには、顧客に不満を抱かせている要因が何であるのかを把握する必要があります。顧客の不満をもたらしているのは、商品なのか、サービスなのか、接客なのか、それとも他の理由なのかを把握し、それを解消することです。
顧客の満足度、不満足度を把握するためには、定期的に顧客満足度調査を行うことが欠かせません。
Case Study
声を聞くことから始まる顧客満足
J社には試作や開発の相談案件は大手企業などから毎日やってくる。しかし試作を引き受けるのは、開発予算を用意している企業に限っている。こうして優良顧客と取引することで、むしろリピート率は高いという。年に2回行うアンケートも顧客の満足度を高めている。また同社は、ターゲットにした産業におけるトップクラスの企業との取引を重視している。当該分野でのスペックは、トップ企業がリードするためだ。
(めっき技術開発・92人)
K社では、ある取引先から「生地の性質」などの問題提起がくると、他社からも同様の問題提起をされる可能性があるので、その件に関して社内の関係者全員に周知させておくようにしている。売れ行きの急な変化についても情報の共有を徹底している。
(帯/着物の縫製・10人)
Step Up
(1)顧客満足データは、アンケートをとるなど定期的に収集されている
顧客の満足度は定期的に調査をして、現状の満足度の水準を把握するとともに、時系列的な変化を把握することが大切です。
顧客満足度は、アンケートを利用することが一般的です。アンケートにおいて、満足度は、5段階のスケールで把握することが多いようです。5段階のスケールには、以下の2つのパターンがあります。1つは「とても満足5」「満足4」「どちらともいえない3」「不満2」「とても不満1」というタイプ、もう1つは「満足5」「やや満足4」「どちらともいえない3」「やや不満2」「不満1」というタイプです。
どちらのタイプがよい、悪いということはありませんので、自社に適したタイプを選択すればよいでしょう。いずれにしても、最も左の選択肢(トップボックスと呼ばれます)に○をつける人数(割合)が、真の顧客満足度を図るための指標になるといわれています。
(2)顧客満足度を向上させるための対策を講じている
顧客満足度を向上させるためには、「満足度の規定要因」(顧客満足度に影響を及ぼす要因)を把握することが大切です。そのためには、自社のマーケティング項目(例えば、製品の品質、価格、接客など)と満足度の因果関係を把握することが有効です。もし、「接客」が満足度を高める要因であるならば、より接客を重視したマーケティングを行うことによって顧客満足度の向上が期待できます。
「重要度(インパクト)-満足度(パフォーマンス)分析」も、顧客満足度の向上に役立ちます。これは自社のマーケティング項目について、顧客が考える「重要度」と現状の「満足度」の関係をみるものです。ポイントは、「重要度」は高いものの、「満足度」が低い項目です。こういった項目を改善することによって、顧客満足度の向上が期待できます。