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システム導入で失敗しないために押さえるべきポイント

IT・デジタル化による生産性向上や業務効率化は、中小企業の重要な課題のひとつです。しかし、「システムやITツールを導入したものの、思ったような効果が得られない」という声も少なくありません。今回は、中小企業がシステム導入による効果を得るためのポイントを紹介します。

(掲載日 2025/03/13)

中小企業・小規模事業者がシステム導入を検討する際に知っておきたいこと

現代のビジネスでは、ITを活用してビジネスを変革するDX(デジタルトランスフォーメーション)の流れが強まっています。こうした流れは大企業だけでなく、中小企業にとっても新たなビジネスチャンスをもたらします。しかし、ITシステム導入には多くの課題があり、中小企業では導入に踏み切れないところも多いのが現状です。そこで、本記事では、中小企業がDX推進のために必要なシステム導入のポイントを説明します。

1章:システム導入の基本的な考え方


1-1.目的を達成するための手段としてシステムを導入する

システム導入の第一歩は、目的を明確にすることです。例えば、売上拡大や人材不足の解消など、改善の先に何を成し得るのかゴールを設定しましょう。システムはあくまでも目的を達成するための手段です。システム導入が目的になってしまった場合、期待効果が生じず、実務でも従業員が混乱してしまうことでしょう。


1-2.現状の課題を出してどこをシステム化するか検討する

システム導入の目的が明確になったら現状の業務での課題を出していきましょう。販路拡大や業務効率化など課題はたくさんあるかと思いますが、そうした課題のどこを優先的にシステム化するか検討します 。下記は小規模事業者が実際に取り組んだデジタル化やITツール導入の事例です。


課題に対するシステムでの解決事例システムを導入する際に検討したこと
給与明細作成業務のデジタル化勤怠管理→給与計算の作業の流れを把握する。一連の作業のどこが非効率となっており、システムで効率化できるのか検討する。
消費者のオンラインでの購買活動に対応するためにECサイトを運用して商圏範囲外の顧客へ商品を販売消費者の購買行動を分析して対面販売に加えオンライン販売の体制を整える。また、そこに顧客を送客するための方法も検討する。
紙の教材販売から電子書籍のデータ販売へのシステム化紙での教材販売からオンライン学習プラットフォームで動画教材の販売に変えるだけでなく、継続的な売上確保の仕組みも検討する。

こうして課題を明確にすることで、どこから手をつければよいか明確になってくるでしょう。下のデータは業務のデジタル化(DX)への取り組み状況のアンケート結果です。取り組み状況の内、成果が最も出たと回答したのは経理業務の電子化が約4割、続いて人事業務が約3割でした。このことから営業系の業務より事務作業系の業務の方がデジタル化しやすいことがうかがえます。

出典:産業能率大学 総合研究所「2022年社長のDX実態調査


1-3.システム導入時は費用対効果を必ず検討する

また、システム導入を検討する際にもう一つ大事な点は費用対効果を算出することです。費用対効果とは、簡単に言えば投資額に対してどのくらい効果(コストカットや売上増加)が生じるかという計算を行うことです。いくら良いシステムでも自社にとってどのくらい効果が出るかわからない状況では、数百万円の投資はしないでしょう。中小企業の場合はIT導入補助金などの制度を検討することで投資額を抑えることができるためオススメします。


2章:中小企業のシステム導入の考え方の違い


2-1.システムの形態

システムと一言で表現するにしてもユーザーはさまざまな形態のシステムを選択することが可能です。世に出ているシステムは主に大きく4つに分けることができ、それぞれの特徴を下記の図で示します。

※筆者作成


中小企業ですと、システム投資に必要な資金を潤沢に確保することが難しい点やIT人材の不足が課題となることが多いため、従来の開発やパッケージソフトより、初期投資が少なく運用コストが安いノーコードツールやクラウドサービスが適しているケースが多いです。また、機能面の自由度とはシステムで使える内容が利用者側にとって使いやすいものかどうかという意味です。フルスクラッチのような自社専用にシステムを作れば自由に機能も使えますが、クラウドサービスのような既にある機能を利用する場合は自社用の機能ではないため、自由度は下がってしまいます。同じ“〇〇システム”と言っても内容が大きく変わるため注意しましょう。


2-2.中小企業がシステムを検討するときに注目すべきポイント

では、中小企業がシステムを選ぶならどこを意識すれば良いか、以下のポイントを重視すると良いでしょう。

1.機能面と価格
使わない機能を豊富に盛り込んだ高いシステムは不要。必要な機能を低コストで導入。

2.サポート環境
システムの設定や運用後のトラブルが生じるため、有人のサポート環境は欲しい。

3.画面の使いやすさ
ITに不慣れな従業員でも使えるような直感的に使えて操作性の高い画面を選択。

特に、導入しても使わないで放置することもあるため、従業員が業務で使えることを最優先に検討すべきです。したがって、2と3は必須だと考えます。また、クラウドサービスは機能を無料で体験できるトライアル期間があるものも多いため、実際に触れて確認してみることをオススメします。


3章:システム導入のメリット・デメリット

業務の課題を洗い出し、業務をデジタル化することで、どのようなメリットやデメリットが生じるのか、それぞれの例を紹介していきます。


3-1.システム導入のメリット

1.コスト削減
システムの導入により、紙などの資材を使用していた業務が無くなり、資材自体が必要なくなるため、資材コスト削減だけでなく、従業員の作業時間短縮で人件費削減にもつながります。

2.顧客満足度向上による競争力強化
顧客の情報をデータ化することでデータ分析が行えるようになり、今まではわからなかった消費者のニーズや潜在化していたリスクを炙り出すことができて企業の競争力強化に繋がります。

3.テレワーク対応など、多様な働き方の実現
ZoomやMicrosoft Teamsのようなクラウドサービスの普及によりリモートワークができる環境が整いました。これにより、さまざまな働き方や人材の活用ができる組織が作れるようになりました。

システム導入のメリットは多岐に渡ります



3-2.システム導入のデメリット

1.初期投資や月額利用料が発生
システムを導入するには必ず一定の費用が生じます。開発なら初期導入費+保守・運用費、クラウドサービスなら導入費(初期設定を外注する場合)+月額利用料が発生します。社内でしっかり運用しないと計画通りの費用対効果を出すことができず、システムを入れたのに利益が悪化するなんてこともあるため注意が必要です。

2.従業員のITスキル育成が必要
社内で従業員がシステムを使ってもらわないと想定していた効果が出ずに宝の持ち腐れとなってしまいます。しっかり活用できるように操作マニュアルやOJT(実務を通じた指導)での操作教育をする環境が必要となります。

3.サイバーセキュリティ対策の強化
近年、中小企業のセキュリティの脆弱さを狙って大手の情報を抜くために中小企業へハッキングを仕掛けるケースが多発しています。不審なメールを開いたり、社外でパソコン作業して情報が漏洩するなどのトラブルが多発していることから、情報漏洩させないようなセキュリティ対策と従業員教育の負担が発生します。

こうしたさまざまなメリットやデメリットを考慮してシステム導入を進めていきます。


4章:無料で使えるITツールの紹介

最後に、中小企業が社内の業務をデジタル化させるための第一歩としてコストを抑えたITツールを紹介していきます。自社の業務をデジタル化する中で必要なものを選択して業務効率化を図っていきます。

<無料で使える業務アプリ一覧(一部有料)>
1.ドキュメント共有・ファイル管理:Googleドライブ、DropBox、OneDrive
2.コミュニケーションツール:Slack、Chatwork、MicroSoft Teams
3.ウェブサイト・マーケティングツール:Wix、Googleサイト、Jimdo
4.デザイン制作ツール:Canva

これらは全てクラウドサービスで利用するため、ネットワーク環境があればどの企業でも使うことができます。システム保守やメンテナンスも要らず、システムベンダー側で運用サポートもついているため、導入のハードルを下げてくれます。自社にどのシステムが合っているかを見てもらいたい場合は、支援機関の無料相談窓口などで専門家の客観的なアドバイス等をもらいながら最適なシステムを導入していきましょう。

著者プロフィール

朝隈 達也(AsM経営研究所 代表)

中小企業向けに経営コンサルティングや補助金申請支援、セミナーや研修講師を行う。特に小売業やサービス業の事業者様に対してDX支援や業務改善、マーケティング支援などを得意とする。

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