流通経路、中間業者の数やタイプを適切に選択するなど、自社の商品・サービスを顧客のもとへ効率的に提供する流れができている
企業がどんなにすばらしい商品を提供しても、もしくは、広告によって顧客に購買意欲が起こっても、顧客の手の届くところに商品が届けられなくては、マーケティングは成功しません。
商品を顧客まで届けるための経路のことを、「流通チャネル」と呼びます。全米マーケティング協会(American Marketing Association)は、流通チャネルを下記のように定義しています。
流通チャネルとは、商品、製品もしくはサービスをマーケティングするための、企業内部の組織、および企業外部の販売店および代理店、すなわち卸売業者および小売業者の組織の構成である。
戦略的に流通チャネルを選択・管理
効果的なマーケティングを行うためには、戦略的に流通チャネルを「選択」し、「管理」することが重要となります。流通チャネル選択のための意思決定事項は、以下のとおりです。
- チャネルの数
単一のチャネルを利用するのか(例えば、専門小売店での販売に限定)、複数のチャネルを利用するのかということです(例えば、専門小売店での販売とインターネット販売)。 - チャネルの長さ
直販か、小売業を利用するのか、卸売業を利用するのか、といった事項に関する意思決定です。
典型的には、消費財の場合には3つ、生産財の場合には2つに類型化されます(下の図参照)。なお、卸売段階はさらにいくつかの段階に分かれることがあります。 - どのタイプの中間業者を利用するのか
例えば、商品を専門店で販売するのか、あるいは、ディスカウント店で販売するのかということです。
自社商品の「市場特性」(その商品の消費者もしくは使用者はだれであるか。どこで、いつ、どれだけ購入するのか。小売部門の状態など)や「製品特性」(消費財か、生産財か。破損性、技術的な複雑性など)を考慮して、最適な流通チャネルを選択することが重要になります。
Case Study
現場情報がダイレクトに伝わる流通経路を持て
Q社は付加価値の高いアッパーマーケットを狙っている。同社では既存の流通チャネルに製品を販売しているほか、自社でも小売店を展開している。直営店は販売そのものが運営の目的だ。直営店は他店とまったく異なる品揃えが特徴で、当店でしか手に入らないユニークな商品を販売している。顧客だけでなく流通業者からも高い評価を得ており、東京・自由が丘を手始めに大阪、名古屋などへ横展開している。
(文房具製造/販売・136人)
R社の販売方法は直販と代理店の2通りがある。多いのは直販であり、売上の60%を占める。商品開発には顧客のダイレクトな情報が必要になるため、自社独自の営業部門は欠かせない。開発テンポの早いユーザーにきちんとついて行かなければならない。
(防塵ユニフォームアパレル業・55人)
S社では、開発製品については、同じ業界の他のユーザーに水平展開するような提案をしている。同社が扱う石油関係の仕事は技術が似ているため、うまくいったものを成功事例として他社に持っていくことで効率よく販路を開拓している。
(機械用カーボン等製造・175人)
Step Up
(1)自社の商品・サービスの提供経路として、代理店等を有効に活用している
流通チャネルに関しては、3つの基本政策があります。下記のうち、自社に適した戦略を選ぶようにしましょう。
第1の流通チャネル政策は、「開放的チャネル政策」です。消費者の購買頻度の高さに適合するように、できるだけ多くの小売店に配荷し、卸売業者も多く用います。メーカーのコントロール力は最も弱くなります。
第2は、「排他的チャネル政策」です。ブランド・イメージの厳格な管理、希少性の維持や、消費者への高サービスの必要性から小売店を限定します。メーカーのコントロール力は最も強くなります。
第3は、「選択的チャネル政策」です。販売窓口をある程度制限するなど、メーカーは適度なコントロール力を有します。上記2政策の中間的特徴を持ちます。
「排他的チャネル政策」や「選択的チャネル政策」を採用する場合には、代理店の活用も有効になるでしょう。代理店を含めた流通チャネルを、単なる取引先ではなく、パートナーと捉えることが、流通戦略に成功するためのポイントです。