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1 戦略・経営者(市場・競合の把握・SWOT分析・戦略的経営行動)

自社の強みの源泉や弱みを把握している

強みを伸ばし、弱みを克服

 どんなに優れた大企業にも弱点は存在します。逆に、中小企業であっても市場で生き残っているからには何らかの強みがあるはずです。自社の弱みをできるだけ克服し、強みをより大きく伸ばしていくことが、競争を勝ち抜くためには不可欠です。

 その前提として、まずは、何が自社の長所で、何が自社の短所かを明らかにする必要があります。古代中国の兵法家である孫子は、「敵を知って自分を知っていれば百戦しても負けない。敵を知らずに自分だけ知っていれば、一勝一負。敵も自分も知らなければすべての戦いに敗れる」と説きました。戦いに勝つためには、敵、すなわち顧客や業界動向といった外部環境だけではなく、自分、すなわち自社の内部環境も十分に把握する必要があるという点では、まさに企業経営にも通じる言葉でしょう。

経営戦略の基本はSWOT分析から

 こうした内部環境と外部環境をわかりやすく整理し、目標達成のための経営戦略を構築する助けとなるのがSWOT分析です。まず、自社でコントロールできる内部環境とコントロールが難しい外部環境のそれぞれについて、目標の達成にプラスとなる要素、マイナスとなる要素を把握していきます。プラスとなる内部環境が「強み:Strengths」、マイナスとなる内部環境が「弱み:Weaknesses」、プラスとなる外部環境は「機会:Opportunities」、マイナスとなる外部環境は「脅威:Threats」で、それぞれの頭文字をとってSWOTと名づけられました。

 下表に示したのは、ある老舗レストランの簡単なSWOT分析です。周辺人口の増加は「機会」となりますが、ライバルとなるフランス料理店の進出は「脅威」です。こうした市場に対して、味のよさという「強み」で勝負していますが、店の古さは「弱み」となっています。なお、ここでは簡略化してありますが、実際にはできるだけ多くの要素を書き出すべきです。こうした状況を把握したうえで、「強み」を伸ばし、「弱み」を克服する経営戦略を立てていくことが重要なのです。

 ここで注意すべきは、外部環境も内部環境も常に変化しています。毎月というわけにはいきませんが、経営計画を練り直す際や、ライバルの出店など、環境に大きな変化があった時には、再度分析をしてみることが必要でしょう。

Case Study

独自の経験を積み重ね、強みをどんどん伸ばせ

 G社の業態はコイルセンターといわれ、鉄鋼メーカーから出荷されるアルミコイルをユーザーの仕様に合わせて切断している。加工対象の素材をアルミに特化したことで、技術力を高めると同時に市場での存在感を増し、アルミ専業のコイルセンターではオンリーワンの企業だ。
(スリッター加工・63人)

 H 社が扱う各種の測定器は、同じような物を他社でも作ることができる。しかし、測定データの分析の仕方については、他社には真似できないという点が重要である。人の目で見た感覚を数値化する。これこそがノウハウであり、同社のいうところのアピアランスである。
(計測器等製造・29人)

 I 社の振動計のコア技術は30年前から変わらないもので、他社でもこの技術を真似ることは可能だという。ただし、原理は真似ができても正確に測るための技術として、ノイズとの区分けやノイズ対策、フィルター対策などが必要になる。これらのさまざまな測定状況や測定対象物に関するデータの蓄積があるので他社はなかなか参入できない。
(振動計測装置等製造・23人)

Step Up

(1)強みをさらに伸ばすための方策を実施している

 先の洋食レストランの「味の良さ」が長年勤めた料理人によるものだとすれば、料理人が移籍したり引退したりすれば、一気に強みが消えるかもしれません。したがってこのケースでは、待遇の改善や後継者の育成など、ある程度長期的な戦略を立てていく必要があることがわかります。企業の強みは競争力の源泉ですから、失うことのないよう維持し、さらに強化するようにしていくことが大切です。

(2)弱みを克服するための方策を実施している

 古いレストランは資金をかけて改装するのがベストでしょう。しかし常に掃除をして清潔さを保つことで、設備の古さはある程度は克服できるかもしれません。また、「弱み」はある意味では企業の特徴ですから、場合によっては「強み」に意図的に変えるという戦略も考えられます。例えば古いというイメージを逆手にとって、レトロなイメージを前面に出して宣伝していくということも考えられます。企業の持つ弱点を全て克服するのは難しいかもしれませんが、一つずつでも少なくしていく姿勢は重要でしょう。

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