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「社長のひとり営業」からの脱却が売上アップと人材育成に効く

経営資源に限りがある中小企業にとって、営業効率の向上は実現すべき課題です。しかし、「何から着手すればよいのかわからない」と悩む経営者も多いのではないでしょうか。そこで営業効率アップが期待できる施策をご紹介。キーワードは「顧客のグループ分け」「チーム営業」です。

(掲載日 2022/08/04)

売上アップ×人材育成 社長のひとり営業をチーム営業に

多くの社長は、売上を伸ばし、利益を増やすために日々奮闘されていると思います。社長は会社のすべてに責任がありますが、ここでは営業について、もてる人材と時間を有効に使って売上を伸ばし、人を育てる方法について考えます。

まずは、お客さまをグループに分けて人材と時間の使いかたを効率化します。そのうえで、社長のひとり営業をチーム営業に変え、これまで以上にお客さまの声に応えていくという地道な取組みです。

現状の人員体制で効率的に売上アップを図る方法


みなさんが実感されているように、営業が足で稼ぐ時代から、ホームページやSNSを活用してお客さまを呼び込むWEBマーケティングの時代になっています。お客さまは、パソコンやスマートフォンを使って情報を集め、話を聞きたい相手を絞り込んでいます。いま、人に頼った営業は古いのかもしれません。

しかし、WEBマーケティングを任せられる人材がいない、そもそも自分がいなくなったら営業が心配、という社長はどうしたら良いのでしょうか。

そこで、いまある体制のなかで、効率を高めて売上を伸ばすことを考えてみましょう。

既存のお客さまに目を向ける


みなさんの営業力とリーダーシップで会社を切り盛りされているものの、人脈、強みを活かせる取引先が限られていて売上が大きく伸びない、新規開拓まで手がまわらないのが実情かもしれません。

そこで、まずは、目の前のお客さまとの取引を広げることに集中してはいかがでしょうか。

事業の成長戦略をつくるとき、下図のように、お客さまと製品・サービスを既存と新規に分けて考える方法があります。長い目でみれば、新規のお客さまや新しい製品・サービスを開拓していくことが大切ですが、新しいことに取り組むためには、いまより多くの時間とエネルギーが必要になります。したがい、ひとり営業で頑張っている社長にとっては現実的ではありません。

筆者作成


お客さまをグループ分けする


次に、営業を効率化するために、お客さまをグループ分けして優先順位をつけます。
すべてのお客さまを大切にすることが商売の基本ですが、どのような会社でも人材や時間に限りがあるので、なにごとについても、優先順位、「やること」と「やらないこと」を決めなければなりません。

優先順位をつけるためには基準が必要ですが、次のようなRFMがよく使われています。

R(Resency) :最近いつご注文があったか
F(Frequency):これまで、どのくらい多くのご注文をいただいているか
M(Monetary) :ご注文金額はいくらか

すなわち、5年間ご注文がなかったお客さまや1年に1回しか注文してくれないお客様、注文金額が少ないお客さまは、優先度を下げざるを得ないという考え方です。

RFMそれぞれを5段階に分けるのが一般的ですが、パターンが多くなるので、思い切って3段階に絞ってみましょう。

たとえば、上位20%を「Sランク」、次の60%を「Aランク」、下位20%を「Bランク」とします。そして、社長や社員のみなさんの感覚を信じながら、「優良」、「新規」、「一般」、「離反」というグループに分けていきます。

筆者作成


新規のお客さまを選ぶときは、「最近いつ」と「注文回数」に着目します。この例では、最近ご注文をいただいたX社とZ社が候補になります。次に、Z社の注文回数は中くらい(Aランク)ですので、最近「はじめて」ご注文をいただいたのではないと判断し、X社を新規のお客さまとします。

筆者作成


優良なお客さまを選ぶときは、「注文回数」と「注文金額」に着目します。この例では、「注文回数」と「注文金額」のいずれもSランクとなっているO社とQ社が候補になります。このうち、Q社はしばらく取引がないので「離反」したと判断し、O社を優良なお客さまとします。これは、ひとつの例ですので、お客さまの構成やお取引の状況に合わせてアレンジしてください。なかには、注文回数は多いものの金額が小さいお客さまと、注文金額は大きいが注文回数が中くらいのお客さまとでは、どちらの優先順位を高くするのかなど悩ましい組合せもあるでしょうが、割り切ってグループ分けしていきましょう。

ここで大切なのは、完璧を求めて時間をかけ過ぎないということです。グループ分けは、あくまで準備作業ですので、それが目的とならないよう気を付けてください。

これまで、なんとなく感じていたことを基準によって見える化し、社員のみなさんの認識を揃えることが、効率的な営業の第一歩です。

「優良」「新規」のお客さまを優先的に営業


グループ分けしたあとは、優良、新規のお客さまとの取引拡大に人材と時間を使い、効率良く売上を伸ばすことに集中します。

たとえば、優良、新規、一般、離反のお客さまの売上が60、5、30、5百万円だったとします。ここで、優良および新規のお客さまとの関係づくりに集中し、売上を10%増やせれば、一般のお客さまは現状維持でよい、離反したお客様との取引はあきらめると手を抜いても、それぞれの売上は66、5.5、30、0百万円となります。つまり、売上が100百万円から101.5百万円に増えるという計算が成り立つので、思い切った営業ができるようになります。

「社長のひとり営業」から「チーム営業」に変える


次に、社長のひとり営業を社員のみなさんとのチーム営業に変えましょう。

社長の営業力が傑出しているほど、ノウハウを見える化し、社員のみなさんに伝えるのは大変です。「自分でやったほうが楽だ」と思われるかもしれません。

しかし、お客さまが会社の場合、ひとり営業ではさまざまな限界があります。

ご存じのように、お客さまの購買部門が、すべてを決めているのではありません。お客さまが商品やサービスを必要とするのは、解決したい組織的な課題があるからです。たとえば、ユーザーの要望に応えたい営業部門、新製品をつくりたい製造部門、資金繰りを改善したい経理部門などがかかわってきます。したがい、チームとして営業活動したほうが、さまざまな部門の要望や動きを、より素早く、より正確につかめるようになります。

チーム営業に“進化”させるメリット


社長のひとり営業が、ふたり営業になっただけでも大きく変わります。

  • ・ 情報入手ルートが2倍になります。お客様の関係者が4名であれば、4本(4名×ひとり)の情報入手ルートが8本(4名×ふたり)に増えます。

  • ・ 情報の裏をとることができます。社長が得た情報と、ご担当が聞いた情報をくらべることで、情報の確からしさや、だれが、どこまでの情報を持っているのかを推測できます。

  • ・ 交渉全体がスムーズになります。社長のひとり営業では、「はい」も「いいえ」もすべて最終回答になってしまいます。ご担当がいれば、事前に調整する「すき間」ができるので、お互い押し引きしたうえで落としどころを探り、最後に社長が決断できるようになります。

  • ・ 戦略をたてやすくなります。ご担当が集めてきた情報を分析し、じっくりと打ち手を考える時間的、精神的余裕がうまれます。

  • ・ お客さまからみて安心です。社長がいかにお元気だとしても、万一のことを考えると、社長以外と話ができるのは大きな安心材料になります。


お客さまのなかでは、組織的な意思決定のプロセスが進んでいきます。いま、「だれ」が「なに」を決める段階にあるのかを知り、みなさんに有利な決定をしてもらうために、どのように提案するのかを決めて行動しなければなりません。

ここでも、ふたり営業やチーム営業が力を発揮します。お客さまの動きをより素早く、より正確につかめるだけでなく、社員のみなさんの知恵をあつめて、より良い提案をだせるようになります。より良い提案は、より良く課題を解決できるので、お客さまから選ばれやすくなり、結果として売上がアップします。

「ひとり営業」からの卒業が次世代の育成につながる


また、チーム営業により人を育てることができます。

人を育てるには、時間と忍耐が要りますので、社長が「まだまだやれる」と思われているうちに、次世代の育成をはじめましょう。特に、営業パーソンを育てるには、人の紹介だけではなく、見積りのつくり方、お客さまとの駆け引きなど、実戦でなければ伝え切れない「あうん」のノウハウを伝授しなければなりません。

したがい、「自分でやったほうが楽だ」、「まだまだやれる」と思える今から、社員のみなさんを営業チームに加え、お客さまと対峙する緊張感のなかで、小さな成功体験を積ませてあげてください。

いまある人材と時間は、とても大切なものです。

これを有効に活用するため、お客さまをグループに分けて営業効率を上げ、チーム営業により、お客さまの声をより深く理解し、より良く応えて売上を伸ばしましょう。そして、将来を託す人材を育ててください。

著者プロフィール

進藤裕生(進藤裕生 経営コンサルタントオフィス代表)

支援テーマは、マーケティング、営業支援、経営戦略・経営計画、経営基盤強化です。さまざまなインフラプロジェクトや機械設備のBtoB営業に携わり、チーム営業を実践して受注につなげました。その経験を活かし、丁寧な営業支援や経営者のかたの思いを戦略・計画として具体化することを心がけています。中小企業診断士、内部監査士

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