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店舗従業員の働き方改革

いま企業にとって働き方改革は避けては通れない課題ですが、店舗においてはどのように取り組んでいけばよいのでしょうか。店舗従業員に焦点をあてた働き方改革を説明します。その方法とは・・・

(掲載日 2018/10/09)

店舗従業員の働き方改革

今回のテーマは店舗従業員の働き方改革についてです。店舗従業員といっても小売業、飲食業、サービス業があり、それぞれ違いはありますが、共通する部分も多くあります。その共通部分を取り上げておりますので、業種に関わらず、参考にしてください。

働き方改革とは

先の国会において、「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」(働き方関連法)が成立し、2019年4月から順次導入される予定です。働き方改革関連法の柱は以下になります。

1.罰則付きの残業時間の上限規制導入

2.高収入の専門職を労働時間規制から外す「高度プロフェッショナル制度」創設

3.正社員と非正規労働者の格差改善を図る「同一労働同一賃金」の適用


特に残業時間の上限規制が導入されると、影響の出る店舗は多いのではないでしょうか。店舗間競争が激しくなった結果、営業時間を延長した店舗は多いと思われます。その結果、長時間労働が常態化しているのではないでしょうか。

今回は、「長時間労働」の改善に視点を当てて、お話しを進めて参ります。長時間労働の改善は、従業員にとっても、店舗側にとっても、大変重要なことです。今回は、それを実現するためのヒントをお伝えします。

長時間労働の改善に向けて

長時間労働により、店舗側としては時間外労働の割増賃金が発生し、従業員にとっては、店舗での勤務時間が過剰になっています。長時間労働は、店舗側にとっても従業員側にとっても解決しなければならない問題です。

まずは、長時間労働の改善の方向性について考えてみます。

長時間労働を改善する一番簡単な方法は、従業員の勤務時間を一律に減らすことです。確かに、この方法でも売上に影響の出ない店舗はあると思います。しかしながら、このようなやり方は、様々な問題が起きる可能性があります。

従業員は、作業量が変わらないのに短時間でこなさなければならず、作業負担が重くなります。また、店舗は、必要な時間に従業員がいないことでサービスの低下、ひいては客離れにつながることになります。

勤務時間が減っても、従業員の業務負担は増えず、店舗の売上は維持されるのが理想であるといえます。

それではどうやって長時間労働を改善していけば良いでしょうか。以下の流れで考えていきたいと思います。

具体的な取り組み内容

1.作業の見直し
まずは作業の見直しを考えていきましょう。作業の見直しは、作業量を削減する方法作業効率を高める方法があります。ECRSというフレームワークを使い作業を見直していきます。ECRSとは、排除(Eliminate)・結合(Combine)・交換(Rearrange)・簡素化(Simplify)の頭文字をとったものです。

1) 排除(Eliminate)作業そのものをなくすことはできないか。
2) 結合(Combine)複数の作業をいくつかにまとめることはできないか。
3) 交換(Rearrange)作業の順番を換えることはできないか。
4) 簡素化(Simplify)作業そのものをもっと簡単にできないか。

1)・2)が作業量の削減、3)・4)が作業効率のアップと言えます。この順番通りに手を付けると効果は高くなります。現在店舗で行っている作業を洗い出し、このフレームワークを使って作業を見直してください。

また、ITの導入で作業効率を上げることも考えてみましょう。費用負担はありますが、ITは日々進化しており、自店舗に適するものがあれば、十分な効果を得られると思われます。費用に関しては、すべてを自分達で賄わなくても、IT導入補助金などを利用することもできます。


2.労働環境の改善
次に労働環境の見直しについて考えていきます。

労働環境の改善は、後回しになりがちではないでしょうか。人間は環境に慣れてしまうため、今の環境に問題があるとは思わなくなります。店舗従業員だけで労働環境を見るだけではなく、第三者に見てもらうことも考えてはいかがでしょうか。

労働環境の改善は、まずは5Sの実施が基本となります。5Sとは、整理・整頓・清掃・清潔・躾の5つのSをとったものです。この流れでご自身の店舗環境を改善してください。
 整理・・必要なものと不要なものを分けて、不要なものを捨てる。

 整頓・・必要なものを誰もがわかるように置場を決め表示する。

 清掃・・きれいにして使いやすくする。

 清潔・・きれいな状態を維持する。

 躾 ・・きれいに使うように習慣づける。


この5Sが改善された後、設備改善などハード面の改善を検討していくのが良いでしょう。

労働環境の改善が、どの程度の業務時間削減を実現できるのかを数字で示すのは難しいため、後回しになりがちです。
ただ、どこに何があるのかすぐにわかるようになった、時間が掛かる作業が短時間で終わるようになった等の効果はすぐに出てきます。
また従業員が気持ち良く働くことができれば、作業スピードが速くなることは間違いありません 。


3.勤務シフトの見直し
大方の店舗は、従業員勤務はシフト制であると思いますが、必要な時間帯に必要な人員が勤務するシフトになっているでしょうか。不十分であると感じているなら、シフトそのものの見直しも検討しましょう。

効率の良いシフトを実現するレイバー・スケジューリング・プログラム(以下LSP)を紹介いたします。LSPとは、曜日・時間帯の売上や作業量に応じて必要な人員を決め、適正に配置するものです。「必要な作業に人を付ける」ことが、基本的な考え方となります。

以下にLSP例を提示します。時間帯別に予想売上と必要作業を決め、それに合わせて
人員数を決めていきます。必要人員数に応じて、勤務シフトを作成します。

正社員 はスライドで出勤し、開店から閉店までの勤務はなくすようにします。そのためには、パートタイマーやアルバイトの方を育て、権限を与える必要があります。

以上の1~3をまとめると、作業自体が削減され、作業効率が改善され、必要な時間に必要な人員が配置されるようになります。その結果、少ない人員で店舗運営ができるようになります。


4.意識改革
最後に従業員の意識改革について考えていきましょう。上記1~3が改善されても、従業員の意識が変わらなければ、長時間労働は改善されません。

作業が終わった、お客様が少ないのに何となく店舗に残っていることはないでしょうか。また、他が帰らないから帰りにくい状況はないでしょうか。これは店舗勤務だけに限ったことではありませんが、店舗の作業はお客様の動向に左右されるため、作業見通しが立てにくく、残ってしまうことが多いのは確かです。

まずは、店舗の長(店長)が率先して、自分のやるべき作業が終わったら帰るようにしましょう。次にベテラン従業員に広げていき、そうなっていけば新人従業員でも帰りやすい状況になるはずです。

まとめ

働き方改革の波は今後ますます大きくなり、また人手不足はさらに深刻化していくことが考えられます。そのため、少ない人員で、かつ最少の勤務時間で、店舗運営をしなければならなくなるのは間違いありません。ただし、単に人を減らし、勤務時間を削減しただけでは、店舗にとっても従業員にとっても好ましい状況にはなりません。今回お話した内容を基に、「長時間労働」を改善することで、店舗側は人手不足の解消を実現し、従業員側は適正な労働時間で業務を終わらせることができるようになります。長時間労働の改善を1日も早くスタートし、店舗従業員の働き方改革を進めてください。

著者プロフィール

中島 誠(中小企業診断士)

小売業・卸売業を中心に経営戦略立案、販路開拓、商品仕入れ、商品のブランド化などの支援を得意とする。
さらに、小売業においては、店舗での勤務経験を活かし、売場改善、在庫管理、従業員教育など、現場に即した支援を行っている。

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