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経営計画を経営の武器にするために

中小企業が持続的成長を図るためには、既存事業の見直しや新事業への進出が不可欠です。そして、その拠り所となるものが経営計画であり、市場環境に照らした定期的な点検が必要となります。経営計画の作成方法から、作成した後の活用方法までお伝えします。

(掲載日 2021/01/08)

経営計画を経営の武器にするために

1.経営計画の必要性


 少子高齢化やIT技術の進展、働き方改革の取組などにより、消費志向やライフスタイルは日々変化しています。自社が提供する商品・サービスは、顧客の要望に応えているでしょうか? 同じ商品・サービスであっても市場や提供方法を変えることで、新たな顧客を開拓することはできないでしょうか? 
 市場を揺るがすような大きな変化にあっても、周囲に先んじた対策を打って業績を伸ばしている企業もあります。中小企業が持続的成長を図っていくためには、既存の事業に安住することなく、市場環境の変化に対応し、戦略や施策を見直しながら、進んで機会を捉え新しい事業へ取り組んでいく必要があります。その拠りどころとなるものが経営計画です
 自社の方向性を検討する際には、置かれた現状を認識し、めざすあるべき姿を想定します。その現状とあるべき姿とのギャップを埋めることが課題で、経営計画はあるべき姿をめざすための道筋です。

経営計画(項目の一例)
①経営理念
②環境分析
③戦略の策定
④施策の策定

 計画の細かさは企業によりけりですが、上記のような項目立てで3~5年の中長期の計画として作成されることが多いようです。
 小規模企業白書によると、経営計画を作成したことで、取組の方向性がより明確になり、社員のやる気にもつながった、顧客や得意先、金融機関等からの評価が高まる方向に働いたなど、概ねプラスの結果となったことがみてとれます。

図 経営計画を作成した効果(複数回答)
出典:小規模企業白書(2016年版)(中小企業庁)



2.経営計画の作成


 では、経営計画はどのように作成したらよいのでしょうか? 以下にその進め方やヒントを掲げました。 

(1)経営理念
 計画の前提として自社の経営理念を掲げましょう。
 使命や価値観など、社内外に発信している自社の基本姿勢として、経営理念が経営計画の冒頭に置かれます。創業から受け継いでいるメッセージを明文化したものが既にあるケースもあるでしょう。しかし、めざすべき姿や数字による大きな目標が現状に合わなくなっていることも考えられますので、経営計画の作成をきっかけに再定義することも有意義です。

(2)環境分析
 自社を取り巻く環境を把握しましょう。
 まず、社内の業況や、顧客や業界・競合他社の動向などの社外の情報を収集します。財務データ等の定量面の情報だけでなく、企画・開発面、生産・技術面、販売面などの定性面の情報も含めて、偏らないように多面的に収集することがコツです。
 次に、収集した情報が自社にとってプラスなのかマイナスなのか整理し、課題を導きます。SWOT(強み・弱み・機会・脅威)分析等を使い、基本的には機会に強みを活かして事業拡大を図る課題を導きます。

(3)戦略の策定
 (2)を踏まえ、あるべき姿をめざすストーリーを立てましょう。
 「誰に・何を・どのように提供する」という形(ドメイン)に置き換えると、事業展開や課題が引き立ち、表現もしやすいです。「誰」は市場や顧客、「何」は自社の得意とする商品・サービス、「どのように」は活かせる独自技術や経営資源です。
 戦略策定に伴い、会社全体の事業の大きな方向性については経営方針として、めざす売上高や営業拠点数などの大きな数字については経営目標として設定します。

(4)施策の策定
 定量面・定性面のセットで戦略を実現する計画を立てましょう。
 (3)を踏まえ、定量面では、売上高や利益、設備投資など数字に関する計画を作成します。損益分岐点売上高*の計算式を活用し、「給料を〇%アップさせるなら、売上高が〇円必要」というように行動に直結する目標を立てるなど、机上の数字にならない工夫が必要です。
 定性面では、商品・サービスの開発、営業・販売促進などの行動、実施体制に関する計画を作成します。(2)で挙げた課題は、例えば部門別や事業別に、生産面や販売面などの観点から解決していく計画にします。行動計画は、ガントチャート(線表)を使い、いつ着手・達成するのか、主担当者も合わせて落とし込むとより具体的になります。

* 損益分岐点売上高:
売上高=変動費+固定費、つまり、売上高-変動費-固定費=利益ゼロ(収支トントン)になるときの売上高が損益分岐点売上高です。給料アップを想定する場合の損益分岐点売上高は、固定費に給料アップ分の金額を加算して計算します。


図 ガントチャートイメージ



3.経営計画の実行、実行管理


 施策まで作成したら、いよいよ計画を実行に移します。
 施策を進めた結果、ズレが生じる計画もあるかもしれませんので、月単位で推進状況を追跡するようにしましょう。達成に向けて順調な推移であれば問題ありませんが、マイナスが大きくなることが見込まれれば、実行中の施策の軌道修正を行い、大きな損失を未然に防ぎ対策を打ちます。
 施策を推進する主担当者には、2.(4)で立てた数字と行動に関する状況の報告やより望ましい代替案などの提案をさせましょう。それを通じて主担当者には、経営計画の実行・実行管理への関与を促し、責任感や主体性を醸成させます。


4.経営計画の評価、改定に向けて


 計画は作成したら完成ということでなく、計画を管理し見直しを継続することで、成り行き管理に陥らないようにすることが大切です。管理や見直しを通して、市場の環境変化に対応しやすい社内体制が維持され、次の目標設定や行動につなげる有効なツールにすることができます。
 以下のような着眼点で既存計画を評価し、次期に向けて改定を考えてみましょう。

(1)財務管理 ~気になる数字の変化はありませんか?~
 全体の進捗だけでなく、事業別や部門別、商品・サービス別、顧客別、エリア別などに分けて、多面的に売上・費用等の推移を確認します。特に、金額の構成比が大きい順に確認して、計画値と異なっているのか気づくことが重要です。
 なぜ差ができたのか、マイナスでもプラスでも数字の変化を追跡して、以降の項目で理由の探索や対策の検討をしましょう。

(2)顧客管理 ~顧客は定期的に利用していますか? 新規の利用は増えていますか?~
 まずは、顧客への販売履歴を確認します。売上面では、客数×客単価の観点から、多くの利用の有無、複数の商品・サービスの同時利用等の有無、単価の高い商品・サービス利用の有無、というように分けて動向を追跡し、(1)で変化した数字の理由を探りましょう。
 次に、営業訪問や広告・SNS等による情報発信などの施策実施による効果の有無を確認し、継続または強化、縮小をするのか、費用も勘案して検討します。
 施策と無関係に販売増減が発生している場合もありますので、業界のトレンドや近隣の競合店の動向、社員の接客等の要因も探り、顧客との接点を増やす検討を行いましょう。

(3)業務管理 ~その業務は売上向上やコスト削減に貢献していますか?~
 顧客には、計画した品質を保ち、迅速な生産・販売により商品・サービスを提供することが望まれます。ECRS(Eliminate:排除、Combine:結合、Rearrange:再配置、Simplify:単純化)は工場などの生産現場で使われる改善の視点です。商業・サービス業においても、なくせないか・一緒にできないか・順番を換えてできないか・簡単にできないか、という観点で、普段の業務内容や手順を見直すことも有効策の一つです。
 無駄な工数を省きコスト削減を行い、その上で代替施策の実施や、社員の再配置、機材・設備等の導入を検討しましょう。

(4)実施体制 ~社員が経営計画の作成と実行に参画していますか?~
 社員一人一人がレベルアップすると共に目標を共有して一丸となることで、経営計画をより着実に実行することができます。そもそも経営計画は、経営者や幹部社員だけでつくるのではなく、社員全員の意見を反映させて作り上げ、各々が役割と責任をもって実行することが望ましいものです。
 「人・モノ・情報・金」の経営資源を強くすることは企業の成長に欠かせません。中小企業では、特に「人」と「情報」を強くすることが重要です。そのためにも、普段から社員が気軽に情報共有やコミュニケーションをとれる環境を整え、能力開発に取り組める職場づくりを進めましょう。

図 経営計画の作成から改定までのフローイメージ(筆者作成)



(5)改定に向けて ~新規事業につながる種はありませんか?~
 戦略や施策を実行した結果の評価に伴い、顧客の感想や現場に立つ社員の声などを確認していく中から、新規事業創出につながる課題もぜひ引き出しましょう。市場環境が変化する中では、新たな収益の柱の確立を常に意識しておきたいところです。
 経営計画の改定では、取り込み可能な新規顧客を想定し、活かせる独自技術や経営資源を考慮して、新商品・サービス提供の検討を行ってみてください。
 事業化に際しては、リスクを考慮し、既存市場や既存商品・サービスに近接する位置で横展開することが大切です。新規の設備や人材にすぐ頼らず、社内の経営資源や外部協力者の有効活用などから検討してみましょう。


 小規模企業白書では、自ら経営計画を作成する知識や余裕がないといった課題が挙げられている一方、作成したことがある事業者は、作成したことがない事業者に比べて売上高が増加傾向にある、大変興味深い結果も示されています。(小規模企業白書2016年版、64頁)
 作成したことがない事業者様は、ぜひ、中小企業診断士や商工会議所などの最寄りの支援機関に一度相談していただくことをお勧めします。

著者プロフィール

木村 孝史(木村中小企業診断士事務所 代表)

文化・集客施設の事業計画策定、開業・運営支援、観光・産業振興に係る公共政策の策定支援等に約20年従事した経験を活かし、地域資源を活かした新商品・新事業開発や事業計画作成、開業・集客支援等を得意分野とする。商工会議所や自治体において専門相談員として経営や創業に関わる支援を中心に活動中。博物館学芸員・宅地建物取引士。

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