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顧客行動や接点を可視化するカスタマージャーニーマップの作り方

マーケティングにおいて「顧客を知る」ことは重要です。カスタマージャーニーマップは、顧客の行動や心理、顧客接点などを可視化するツールです。適切に作成すれば有効なマーケティング施策を導き出せます。今回はBtoB向けのカスタマージャーニーマップの作成方法を紹介します。

(掲載日 2024/03/20)

カスタマージャーニーマップをBtoB営業に応用しよう

はじめに

カスタマージャーニーマップをご存じですか。Web制作の現場でよく用いられるツールです。そう聞くと営業には関係ないと思われるかもしれませんが、仕組みを知れば活用できることに気づくでしょう。また、BtoBの営業にとっても上手に活用することで顧客とのより良い関係が構築できます。


1.カスタマージャーニーマップとは

カスタマージャーニーマップを直訳すると「顧客の旅の地図」となります。カスタマージャーニーマップとは、顧客がまるで旅をしているかのようにその時その時の心理状態や行動などを段階ごとに分け、そのタイミングごとに企業側がどのような働きかけができるのかを図表に表したものです。

カスタマージャーニーマップを作成することで、顧客視点で自社の不足している点や顧客の心理に寄り添えてない点が見えてきます。


2.カスタマージャーニーマップの作り方


<カスタマージャーニーマップのテンプレート例>※筆者作成

準備するもの

  • ・模造紙またはホワイトボード
  • ・付箋(サイズ、形は自由)
  • ・ペン(細すぎないもの)


(1)目標設定

まずマーケティングの目標を設定します。契約◯◯件、優良顧客◯◯社など数字を目標にすると指標としてわかりやすくなります。

また、マーケティングの目標は全員で合意する必要があるため、カスタマージャーニーマップを作成するチームでまず 合意できる目標にしましょう。

同時に目標達成の期間を設定します。開始から完了まで3ヶ月、半年など目標達成に必要な期間を考えます。


(2)ペルソナの設定

ペルソナとは、仮面という意味の言葉です。ビジネスにおいては顧客像のことを表し、人物像を具体的に詳細に設定します。あたかもそのような人物が存在するかのように設定した顧客像を対象として自社の商品やサービスがどのように求められるか、どのような問題解決が可能となるかを考えるために用いられます。

BtoBの場合、企業ペルソナと企業の担当者の個人ペルソナを設定します。ペルソナは具体的に実際に存在するような情報で設定するとよいでしょう。

例えば企業ペルソナならば、企業名、業種、設立年月日、従業員数等を設定します。ただし、実際にある企業を設定するのは避けたほうがよいです。なぜならば、実際の企業を想像してしまうと制限ができてしまい自由に発想することが妨げられてしまうおそれがあるからです。

担当者の個人ペルソナも同様に、氏名、部署、勤続年数、家族構成等を設定しますが、実際の人物を設定することは避けましょう。また、個人ペルソナには担当者が抱えている課題も設定しておきます。この課題は自社の製品・商品やサービスで解決できるものにして、カスタマージャーニーマップのなかで解決に導いていくことになります。


(3)顧客行動の作成

顧客行動では、時間軸に沿って開始から完了までの行動を想像して作成していきます。

開始時点ではBtoBの場合、新規営業先か既存営業先かで顧客行動が異なってくることでしょう。新規営業先の場合はアポを取るために顧客とコミュニケーションを取るところから開始となります。電話をかけるのかメールを送るのか、封書を送るのかさまざまな方法があると思います。例えば電話を受けたときに顧客がどう考え、どのような行動を取るかなど方法ごとに顧客の行動を考えてみましょう。



(4)顧客接点の作成

顧客行動のなかで顧客との接点が見えてきます。たとえば開始時点の「電話」や情報の比較検討段階の「Webサイト」等です。それらを時間軸に沿って記載していきましょう。顧客とのコンタクトが取れる重要なポイントとなります。


(5)顧客心理の作成(顧客が抱える課題)

顧客心理では開始時点で課題を抱えている状態となります。その状態から顧客接点ごとにどのように心理が変わっていくか、課題が解決できるかを時間軸に沿って記載していきます。言葉で記載しても絵文字やイラストで記載しても構いません。絵を使う場合は一言コメントをつけるとなおわかりやすくなります。完了時点で顧客の課題が解決され、満足した状態になることを目指します。


(6)対応策の作成

自社が各顧客の状態に対してどのような対応がとれるかを考えましょう。現在対応できていないことも書き出してください。その際、対応できていることと対応できていないことで色を変えておくと今後の取組を検討する際にわかりやすくなります。


以上でマップは完成です。完成に至るまでの議論が有益なものとなるため、気づいたポイントはマップに書き込むようにしておきましょう。

顧客の段階(関わり方の度合)に応じた効果的な対応策を検討できるのがカスタマージャーニーマップを作成する利点のひとつです


3.カスタマージャーニーマップの使い方

マップが完成したらチーム全員で全体を振り返ってみましょう。顧客視点での自社と顧客の関わり方が見えてきます。たとえばこれまで重視していなかった顧客接点が顧客の心理状態を変えるのに非常に重要だった、最後の顧客接点で顧客を満足させられなかった原因がわかった、など多くの気付きがあると思います。それらを議論し、営業戦術として取り入れ、今後の営業活動に活用していきます。

また、チーム内だけではなく部署全体や他部署の人にも見えるような場所にできあがったマップを掲示しておきましょう。チーム内では出てこなかった新たな知恵がもらえるかもしれません。

カスタマージャーニーマップは一度作ったら終わりではなく、さまざまな意見を反映させながらより良いものに改善していくものです。対応策などチームだけではできないと思っていたことでも部署全体や他部署も含めると可能になることもあります。ですから、できるだけ模造紙やホワイトボードのまま掲示しておくのがよいでしょう。データで共有しても良いのですが、わざわざ見に行く手間があるとなかなか多くの人の目に触れることは難しくなります。多くの人が通る場所に模造紙を貼っておく、ホワイトボードをおいておく、などがよいと思います。

カスタマージャーニーマップは継続的にブラッシュアップすることで精度の向上が期待できます



おわりに

カスタマージャーニーマップについて理解が進んだでしょうか。はじめは難しく考えずに取り組んでみてください。上述したとおり、一度作ったものが完成形ではありません。議論しながら手を加えたり作り直したりする過程も重要です。

みなさまの営業活動に少しでもお役に立てれば大変幸甚です。

著者プロフィール

村尾奈津(中小企業診断士)

所属:東京都中小企業診断士協会・中央支部執行委員、杉並区中小企業診断士会、香川県中小企業診断士協会。専門分野:マーケティング、IT。

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