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生成AIを活用してPRツールを簡単に作る方法

生成AIがビジネスシーンにインパクトを与えています。生成AIの活用により生産性向上を実現した中小企業や小規模事業者も少なくないでしょう。生成AIは適切な使い方を習得すれば、経営課題の解決に貢献します。今回は生成AIを使ったPRツールの作成方法をご紹介します。

(掲載日 2024/01/10)

かんたん!生成AIやデジタルツールを使った販売力アップの秘訣

1.はじめに

多くの中小企業では、限られた予算や人材不足などの制約を抱えています。こうした状況において、生成AIや生成AIを搭載したデジタルツールの活用が大きな助けとなります。生成AIは、人工知能が文章を書いたり、図版を作ったりすることができる技術です。生成AIや生成AIを搭載したデジタルツールを活用することで、中小企業も低コストで効果的な広告文を作成したり、ソーシャルメディアの投稿用画像やPOP、チラシの図版、簡易的なWEBサイトなどを作成したりすることもできます。

また、生成AIを活用することで、時間を大幅に節約できます。例えば、ソーシャルメディアの投稿を自動で生成することや、販売促進のアイデア出しに行き詰まってしまったときに、一緒に考えてもらうこともできます。上手に利用することで、少ない予算や人員余力を活かしながら、販売力をアップさせることができます。


2.生成AI技術の紹介

生成AIとは、人工知能の一分野で、新しいコンテンツを自動的に生成する技術です。この技術は、文章、画像、音楽、動画など様々な形式のコンテンツを作り出すことができます。生成AIの中でも特に知られているのが、文章を生成するChatAIに代表される、大規模言語モデル(LLM:Large Language Model)と呼ばれるものです。

大規模言語モデルは、大量のテキストデータを分析することにより、言語のパターンを学習します。2022年11月に発表されたChatGPTでは、様々な言語に含まれる4兆単語以上で学習されたとされています。この学習過程には深層学習と呼ばれる技術が使用されています。学習の結果として大規模言語モデルは、質問に答えたり、文章を作成したり、翻訳を行う能力を持つにいたります。

生成AIは、様々な分野での応用が可能です。たとえば、記事の作成や、ソフトウェアのプログラムコード生成、アート作品の制作、音楽の作曲など、多岐にわたります。しかしながら、生成AIには限界もあります。生成された文章に、もっともらしいウソが混ざる、「幻覚(ハルシネーション)」と呼ばれる現象や、著作権の侵害などの問題が発生する可能性もあります。このため、生成AIを使用する人間側にも一定の理解力と活用する能力が求められます。ただ、これは自動車の運転や刃物の取り扱いと似ています。無茶な使い方をすれば危険ですが、注意して利用することで、便利に活用できる道具となるでしょう。

2023年12月時点で、代表的な生成AIには以下のようなものがあります。

※筆者作成



3.生成AIへの指示のコツ

生成AIの具体的な使い方の説明に入っていきましょう。この記事でご紹介する以下のツールは2023年12月時点において全て無償で使い始めることができますので、活用してみてください。(高機能版を利用する場合に有償となるもの、アカウントの開設が必要なツールを含みます。)

◯無償で利用できる生成AIを搭載したAIチャットサービスの例
・ChatGPT
・Microsoft Bing Chat(Copilot)
・Google Bard など

◯無償で利用できる生成AIを搭載したデジタルツールの例
・Canva(ちらし、カタログ、SNS素材、動画など様々なデザインが可能)
・Microsoft Designer(バナーやSNSリール画像などのデザインが可能)
・Figma(WEBサイト、LPなどのデザインが可能) など

生成AIへの指示は言葉で行います。この生成AIへの指示のことを「プロンプト(Prompt)」と呼びます。適切なプロンプトを用いることで、生成AIの能力を最大限に引き出していくことができます。生成AIの回答精度を高めるためのプロンプトの例をご紹介します。


①生成AIの役割を限定する

AIの役割を限定することで、回答の精度を向上させることができます。
例:「AIであるあなたは、マーケティングの専門家です。」


②AIへの指示は具体的に出す

「うまい方法を教えて」のような抽象的な指示では、回答精度が悪くなります。指示は具体的に出すようにします。
例:「生成AIとは何か」というブログ記事の見出しを3つ提示してください。


③必要に応じて生成AIに追加情報を与える

生成AIが保持していない情報を与えると、精度を向上させることができます。


④複雑な命令は、単純ないくつかの命令に分割する

命令が複雑な場合、いくつかの単純な命令に分割して指示を与えると精度が向上します。


⑤生成AIには英語で考えさせる

多くの生成AIにおける言語学習量は英語が圧倒的に多いため、英語で考えさせると精度が向上します。

このような生成AIへの指示のことをプロンプトエンジニアリングと呼びます。この他にも、AIの回答精度を高めるより高度な手法がありますので、ご興味ある方は調べてみてはいかがでしょうか。


4.生成AIを活用したPRツールの作成方法

ここからは、具体的なPRツールの作成を見ていきましょう。


①SNS素材やWEBサイトのバナー、POPなどの画像素材

画像素材を作る際には、画像に何を含めたいか具体的に考えるようにします。色使い、使用するイメージ(例:自然、テクノロジー、アートなど)、サイズなどを決めます。その上で、具体的なプロンプトを書きます。

◯プロンプト例

「居心地の良い部屋でくつろぐネコのイラストを含むバナーを作成してください。部屋には窓から差し込む柔らかい日差しと、ネコが寛いでいるソファを描いてください。リラックスした、穏やかな雰囲気を出してください。アニメ調にしてください。サイズは16:9でお願いします。」


上記プロンプトで生成された画像は以下となりました。

※筆者提供(編注)この画像は「類似性」または「依拠性」を満たさず、著作権侵害にあたらないと判断し掲載しています。


さらに、生成された画像にイヌのイラストを追加してみましょう。

◯プロンプト例

「先程の図版を参考に、イヌのイラストを追加してみてください。」


上記プロンプトで生成された画像は以下となりました。

※筆者提供(編注)この画像は「類似性」または「依拠性」を満たさず、著作権侵害にあたらないと判断し掲載しています。


かわいいイヌのイラストが追加されましたが、構図やネコの画像は別のデザインとなっています。イラストや構図を固定したい場合には、その旨をプロンプトに加えるなどの工夫が必要になります。完成した画像素材をそのまま利用しても良いですし、上記で紹介したデザインができるデジタルツールに取り込み、より高度なコンテンツに転換することも可能です。


②メールマガジンやダイレクトメール原稿などの文章素材

文章素材を作る際には、先程ご紹介したプロンプトの例にならって、AIに指示を出すようにします。ここでは、仮の企業として、リチウムイオン電池を制作している部品製造業が、自動車部品製造業の経営層向けに、訪問アポイントを取るために作成するメルマガという条件で作成してみます。

◯プロンプト例

###AIの役割
あなたは、最新のマーケティングに精通した専門家です。

###与件①:顧客
年商50億円~100億円の自動車部品製造業の経営層です。
自動車部品業界は、自動車業界の影響を強く受けています。
自動車業界は雇用環境や経済状況の変化、新型コロナウィルスの影響、環境への配慮による
脱ガソリンやEVへのシフトなど、多くの課題に直面しました。
これらの影響で、自動車部品業界は厳しい経営環境に置かれています。

###与件②:自社サービス
自社では、EV商用車向け電池を販売しています。耐久性能の高いリチウムイオン電池です。
構想段階からの開発設計の対応、試作品開発への1個の蓄電池の設計・製作にも対応しています。

###指示内容
メールマガジンを作成します。
顧客と自社サービスを加味し、あらゆる側面を網羅的にカバーするように記載します。
徹底的な正確さと読み手の心を打つ魅力的な文章に重点を置く必要があります。

###出力フォーマット
メールマガジンの内容について、タイトル、完全な文章と段落で書き出してください。
興味のある顧客に訪問しご挨拶させていただくことを目的とします。

###考慮条件
英語で考えますが、すべて必ず日本語で回答してください。
ビジネスレターとして適切な表現を用いてください。


AIの役割を規定し、AIが保持していない、自社や顧客の情報を与えているのがお分かりいただけるかと思います。出力結果は以下のようになりました。

※筆者提供


プロンプトは一度作成してしまえば様々な応用、転用が利きます。活用してみてください。


5.おわりに

生成AIを利用する際には、他人の著作権を侵害しないように留意しましょう。既存の著作物に対して、AIによる生成物が、①「類似性」:両者が似ているかどうか、②「依拠性」:既存の著作物と知りながら、それに基づいて創作したか、③ 「故意又は過失」:似てしまう事態を避けることができたのに避けなかった、の3要件を満たすと、AIの創作物であっても、著作権侵害となります。

生成AIの活用場面は広く、中小企業の助けになるツールです。是非、積極的に活用してみてください。

著者プロフィール

鈴木 將路(役職:アーチ経営サポート デジタル拡販アドバイザー / 中小企業診断士)

IT企業で20年以上、ソフトウェアマーケ・事業開発を担当
専門分野はマーケティング、IT・AI活用
中小企業向けにマーケ支援・マーケ研修・AI活用などを提供
米VANDERBILT大 Prompt Engineering for ChatGPT Course終了

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