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中小企業にオススメの「自社ECサイト集客術」

「EC事業に参入して売上拡大を図りたい」「ECサイトを活用して商圏を日本全国に広げたい」。EC市場が拡大する昨今、そのような経営戦略を立てる中小企業は少なくないでしょう。そこで、経営資源に限りのある中小企業が、お金をかけずにECサイトの集客力を高める方法を紹介します。

(掲載日 2023/01/25)

大手ショッピングモール型ECや広告費に依存せずに、自社ECサイトへ集客する方法

1.EC業界の概況


経済産業省によると、BtoC(消費者向け)EC(電子商取引)市場規模は順調に拡大しており、2021年には過去最高の20兆6,950億円に達しています。このように勢いのある業界ですので、中小企業の経営者の皆様の中にもEC事業への参入を検討している方も多いと思われます。

出典:経済産業省 令和3年度デジタル取引環境整備事業(電子商取引に関する市場調査)


ECサイトの最大の特徴は、「商圏が日本中に広がる」という点です。従来の実店舗であれば、商圏は店舗近隣に限られていました。一方でECサイトは全国のお客様を対象として商品を販売することが可能です。越境ECといって世界中のお客様に販売することすら可能です。対象となるお客様が広がるということは、売上も大幅に拡大できることを意味します。

筆者作成


しかし、一方で商圏が日本中に広がるということは、競合相手も日本全国に広がることを意味します。今までは実店舗の近隣にある中小企業とだけ競争していれば良かったのが、EC事業では全国展開している大手チェーンとも同じ土俵で競争する必要が出てきます。EC事業は機会も大きいのですが、それと同等に競争も激しいというのが現実です。


2.ECサイトの2つのビジネスモデル


ECサイトには2つのモデルがあります。

 1)自社ECサイト
 2)ショッピングモール型ECサイト

筆者作成


1)自社ECサイトは文字通り、企業が自らのECサイトを作成・運営し、自らの手で集客して、顧客に商品を販売するモデルです。

2)ショッピングモール型ECサイトはAmazon(アマゾン)や楽天市場のような大手ショッピングモール事業者の中に自社ショップを出店し、大手ショッピングモール事業者が集客した顧客に対して販売するモデルです。Amazon(アマゾン)のように自社ショップを出店せずに、商品のみ出品することも可能です。

それぞれ、メリットとデメリットがあります。


3.中小企業が目指すべきは自社ECサイト型


経営資源に限りがある中小企業が大手ショッピングモール型ECに参加したとしても、大手・中堅企業に競争で勝ち抜くことは至難の技です。そのため、中小企業の皆様にオススメしたいのが、大手ショッピングモール型ECや広告費に頼らずに自社ECサイトに集客する方法です。集客の仕方には2つの方法があります。一つは「検索エンジン最適化(SEO)」を行い、検索エンジンでキーワードを検索した顧客を直接自社のECサイトに呼び込む方法です。もう一つはSNSを活用して、集客する方法です。

筆者作成


自社ECサイトでは、「販売手数料が低い」「顧客と直接やり取りできる」というメリットがあります。一方で、自社単独の力によって集客しなければいけないため、「集客が弱い」というデメリットがあります。

ショッピングモール型ECでは、「集客力が強い」というメリットがあります。大手事業者が運営するショッピングモール型ECは知名度が確立されており、強力な集客力を誇ります。お客様の中には特定のショッピングモール型ECでしか購入しない方も少なくありません。一方で、「販売手数料が高い」「売上・広告費の規模によって、モール内の掲載順位が決まる」というデメリットがあります。特に後者のデメリットは事業規模や資金力で劣る中小企業にとって、大きな痛手となります。

筆者作成



4.検索エンジン最適化(SEO)


検索エンジン最適化(SEO)とは、Googleに代表される検索エンジンにおいて、特定のキーワードで検索された場合に、自社サイトを上位に表示させる施策のことです。

以前はSEO対策として以下の手法が取られていました。

  • ・対策キーワードをページに詰め込む
  • ・とにかく文章ボリュームを増やす
  • ・SEO業者に依頼して被リンク(他のホームページから自社にリンクを貼ってもらう)を増やす


ただし、最近では検索エンジンのアルゴリズム(計算方法)が進化しており、上記のような誰でもできる対策は意味がなくなっています。

現在のSEO対策として有効な手法は次の通りです。

  • ・顧客の悩みや不安、疑問を解決する視点で記事を書く
  • ・具体例や体験談を交えた、独自コンテンツを作る


つまり、顧客視点で独自のコンテンツを作ることがSEO対策では大切になっています。


4-1.顧客が求めるキーワードを見つける


顧客視点でコンテンツを作るためには、顧客が求めるニーズを把握することが大切です。検索エンジンでどのようなキーワードが多く検索されているかを調べることで、顧客のニーズを把握することが可能です。

人気のキーワードはGoogleキーワードプランナーというツールを使って簡単に調べることが可能です。キーワードプランナーはGoogleに広告を出稿する際に、どのキーワードに人気があるかを調べるためのツールです。

“ユーザーが特定のキーワードを検索した回数や、そのキーワードの競合性など、過去のデータを確認できます。”

出典:Google. “キーワードプランナー” Google広告ヘルプ


キーワードプランナーを使うことによって、キーワードの検索ボリュームを知ることができるため、顧客に人気のキーワードを調べることができるのです。

例えば自社商品として椅子を扱っている場合、キーワードプランナーで「椅子」というキーワードについて検索します。すると、「ダイニングチェア」「オフィスチェア」「アウトドアチェア」といった椅子と関連性が強いキーワードが次々と表示されます。これらの中から自社商品と相性の良いキーワードを選定し、それらのキーワードを使って独自のコンテンツを作成していきます。


4-2.競合が少ないニッチなキーワードを探す


ただし、人気のあるキーワードが見つかったとしても、検索ボリュームが大きすぎるキーワードは避けるほうが無難です。なぜならば、検索ボリュームが大きいビッグワードは、大手事業者が既にSEO対策済みであるため、知名度で劣る中小企業では勝てない可能性が高いからです。そのため、大手が見逃している中小ワードで勝負する方が効果が見込めます。具体的には月間検索ボリュームが300~1000ぐらいのキーワードを探すと良いでしょう。

大手が見逃している中小ワードの探し方には2つのコツがあります。

1.生まれたばかりのキーワードをいち早く取り込む

例えばコロナ禍では、「テレワーク」「在宅勤務」というキーワードが新たに脚光を浴びました。大手事業者に気づかれる前に、これらのキーワードをいち早く採用してコンテンツを作りこむことで、検索上位を狙うことが可能です。


2.複合キーワードを狙う

大手事業者は検索ボリュームが多い単体キーワードを主軸にSEO対策する傾向があります。そのため、大手事業者が使わない2~3語の複合キーワードの組み合わせで検索上位を狙っていきましょう。複合キーワードは単体キーワードに比べると検索ボリュームは小さいですが、中小企業にとって見れば魅力的なボリュームであることも少なくありません。例えば「時計 旅行用」「メモ帳 防水」などの複合キーワードを積極的に採用することで、大手事業者と差別化しましょう。


5.SNSを活用して集客する


TwitterやInstagramといったSNS経由で、自社ECサイトに集客することが可能です。SNSで集客するためには、自社のアカウントを開設し、フォロワーを増やすことから始めます。

SNSでフォロワーを増やすコツは、短期的な売上拡大を狙わずに、長期的な顧客との関係性を構築することを主眼とすることです。企業の宣伝広告ばかりを投稿するアカウントは顧客の支持を集めることができません。SEO対策と同じく、顧客ファーストの視点で投稿することが大切です。顧客ファーストの投稿をするためには以下の3つのポイントのいずれかを押さえます。

  • ・顧客の役に立つ
  • ・客観的な実績を示す
  • ・顧客の共感を得る


特に3つ目の「顧客の共感を得る」ポイントは大切です。顧客は企業の理念や哲学に共感すると、コアなファンになってくれます。コアファンは商品の性能、スペック、価格といった客観的な指標では商品を選ばず、自分が応援したい企業の商品を購入します。企業の側からすると、安易な価格競争を避けることが可能です。特にZ世代と呼ばれる1990年半ばから2010年代生まれの若者はこのような応援消費をする傾向が強くなっています。SNSで顧客の共感を得るような投稿を繰り返すことによって、自社のコアなファンを育成することが可能です。


6.まとめ


SEO対策、SNS活用を進めれば、大手ショッピングモール型ECや広告費に依存せずとも自社ECサイトに集客することが可能です。SEO、SNSともに短期間で効果のでる施策ではありませんが、誰でも無料で実行することができます。自社内にSEO、SNSに知見のある社員を育成して、コツコツとSEO、SNSに取り組めば、将来的に大きな集客源となることでしょう。

著者プロフィール

木下 壮平(中小企業診断士)

大手メーカーにおいて自社ECサイトの企画・運営に約10年間携わり、その間に売上を5倍以上に増加させた実績がある。また個人としてもブログ(最高月間閲覧数10万)、Twitterアカウント(フォロワー2万)を運営しており、この経験を元に中小企業のWebマーケティング/SNS活用コンサルティングを多数実施している。

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