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社長の次世代リーダー育成術

社長に求められる重要な経営課題の一つに「経営幹部の育成」があります。しかし、ただ研修を受ければよいかというとそう簡単なものではありません。優秀な経営幹部を次世代リーダーとして育てるためには・・・

(掲載日 2018/10/16)

社長の次世代リーダー育成術

 私は仕事柄、中小企業の社長や経営幹部の方々とお会いする機会が多数あります。ここ数年、中小企業をとりまく環境はさらに厳しさを増し、特に人材不足や事業承継問題など深刻な経営課題が散見されます。

 そのような環境変化の中、社長に求められるひとつに経営幹部の育成があります。スピード感を持った経営判断が求められる中で、社長への負担は年々増加します。新商品開発、新規顧客開拓、金融機関への調整、人材採用等、検討しなければならない経営課題は山積みです。優秀な経営幹部の存在は、社長を支援し、経営を助けます。

 今回はいかに次世代リーダーを育てるかを言及したいと思います。

経営幹部に必要な能力とは

 私がお会いする経営幹部の方々は優秀な方々ばかりですが、残念ながら以下の傾向を持つ人が多く存在します。

現場目線でものを考えるため、物事の全体像を捉えていない
論理的思考が弱く、物事を多面的に見れない
固定概念が強く、新しい考えや意見を受け入れない

上記は人の能力でいうと
①物事を俯瞰的にみる力
②論理的に考える力
③物事を創造的に考える力
といえます。

 経営幹部には上記の能力が必要です。この厳しい経営環境の中で社長と共に舵をとり、会社を方向づけていくには必須であると言えます。ではこの能力は具体的にどういうものなのか?詳しくみていきましょう。

①物事を俯瞰的に見る力
 「木を見て森を見ず」という言葉があります。経営的判断は常に全体最適が重要です。会社の価値観と外部環境を吟味しながら、自社の方針を決定させる必要があります。そんな重要度の高い経営判断を狭い視点で行なうことは非常に危険です。経営幹部には部分的な視点ではなく、常に物事の全体観を把握していることが大切な能力になります。

②論理的に考える力
 この能力は企業研修でも非常に人気の高いテーマです。「問題解決の思考法」や「ロジカルシンキング」とも呼ばれています。これから会社を引っ張っていく立場になるためには、スピード感を持って周囲を説得する力が必要です。部下への指示が的確でなければならず、もし経営幹部の指示に論理性がなければ、誰もその人についていきません。いかに相手の納得感を高められるか、最適なアクションを指示できるかが重要な能力になります。

③物事を創造的に見る力
 「ゼロベース思考」という言葉を耳にします。新しい価値観がどんどん出てくる中で、自分の固定概念を捨て新しい発想をいかに受け入れられるかが大切です。過去の成功体験が通用しない世の中です。経営幹部になる人材こそ、過去の体験を疑い、新たな価値観を受け入れる能力が重要になります。

 以上が、経営幹部が身につけるべき能力の概要になります。これら能力の厄介なところは、WEB、財務や法律等のように、本を読んだからといってすぐに実践で使えるものではないことです。これらの能力を身につけるためにはそれなりの実践経験が必要です。

経営幹部に必要な能力を身につける「4つのイベント」

 ではこのような能力をどうやって身につければいいのでしょうか?商工会議所・商工会が実施している研修に参加させればいいでしょうか?それは必要条件ではありますが、十分条件ではありません。
 研修は所詮外部機関が行なうもので、最後は本人の意識次第です。ここで私がお勧めするのは、会社にとって必要なイベントに経営幹部を参加させることです。以下のイベントが有効です。

 ①事業計画を作成する
 ②次年度予算を起案させる
 ③交流会に参加させる
 ④最新の技術展等、斬新なテクノロジーに触れさせる


①事業計画書を作成する
 最近中小企業が利用できる補助金が多数あります。補助金には必ず事業計画書を作成する必要があります。事業計画の多くは、現状→技術課題→解決策を記載せねばならず、会社の全体把握と問題解決の思考法が必要になります。補助金等の事業計画作成をぜひ経営幹部に担当させ、作成プロセスを理解させることで、会社を俯瞰視させ、文章を論理的に作成する経験をさせることが有効といえます。
 ある会社の経営幹部は、ものづくり補助金の事業計画を作成することで、ものづくり現場だけでなく営業面の意識も芽生え、会社の製販プロセス全体の把握に繋がった例がありました。

②次年度予算を起案させる
 年度の目標予算を作成させることも効果的です。年度予算を作成するには、市場の分析も必要ですし、競合の情報、自社内の環境、人材採用状況など全体観を把握することが必要になります。また数字の根拠という意味では論理的な思考も必要になるため、経営幹部の育成には有効な施策であるといえます。

③交流会に参加させる
 商工会議所・商工会でも頻繁に開催している交流会ですが、こちらも販路開拓の施策として注目されています。ここに経営幹部を参加させることも効果的です。様々な経営者と交流を持つことも重要ですが、自社以外の商品サービスを学べるために、自分の価値観を拡げる効果があります。自社現場の発想から抜けだし、自らの固定概念を見直すいい機会になります。

④最新の技術展等、斬新なテクノロジーに触れさせる
 最近は展示会が頻繁に開催されています。東京都の助成事業も充実しており、多数の企業が販路開拓の手段として活用しています。当社が展示会に出展することも重要ですが、頻繁に展示会場に足を運ぶことが大切です。商品サービスの技術革新は目まぐるしく、特にIT分野は自らの業務を劇的に変化させます。最新の検査機械導入により、今まで目で実施していた検品作業を自動化することや、現地でしか実施できなかった修理業務をWEBカメラによる業務指示で行なうようにすることなど、現場目線だけでは想像できないような新たな業務のやり方が生まれています。社内にいるだけではこのような情報を得ることが難しいですが、いまや展示会の現場はテクノロジー発展の集積場になっています。そのような場所に頻繁に行くことで、自分のアンテナを高める効果があるのです。

最後に

 上記のように何かを学ぶには、実践で活かすのが最も近道です。これからの経営に携わる次世代リーダーを育てるために、その人の自主性に任せるだけでなく、日々のルーティン業務の中で能力を開花させる仕掛けが必要です。いま述べてきたように、事業計画の作成、予算の起案、交流会の参加、最新の技術に触れるなど会社で実施すべきイベントに経営幹部を参画させることが大切です。
 
 全ての経営幹部は社長の期待通りには成長しません。様々なイベント経験を経て、長い年月をかけ少しずつ視野が広がり能力を開花させます。重要なのは、身に着けるべき能力を明確にし、戦略的に経営幹部を育成することです。このような試みが結局は社長を助け、会社の成長に寄与するのです。

著者プロフィール

津山 淳二(株式会社中小企業営業支援 代表取締役)

1)販路開拓・営業強化支援
(営業戦略立案・営業日報指導・営業会議指導・営業マン教育・新規開拓、既存顧客深耕⽀援等)
2)補助金申請支援(ものづくり補助金等)
3)事業計画作成支援(経営革新計画、経営力向上計画、先端設備導入計画等)

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