助成金・補助金等、経営力UPの経営情報が満載!

専門家コラム

専門家コラム
会員登録すると、
新規会員登録はこちら
お気に入りに追加 シェアツイートLINEはてぶ

成功する「協働・コラボレーション」

異なる属性の人々や組織が、目的に向かい協力し合いながら働く「協働・コラボレーション」。販路拡大の突破口となるなど大きな効果を得られる一方、ポイントを押さえて進めないと手間や時間ばかりかかり十分な成果を得られないこともあります。その成功のポイントをお伝えします。

(掲載日 2022/02/01)

販路拡大の突破口に! 「協働・コラボレーション」のポイント

 皆さんは協働・コラボレーションと聞いて、どんなことをイメージされますか?

 ミュージシャンやアーティストの合作、キャラクター商品、また企業やブランド同士の共同企画など、現在では様々な分野でコラボレーションという言葉が使われていますが、「中小企業にはあまり関係がない」と感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

 協働・コラボレーションは、一言で言えば「専門性を持ち寄り、相乗効果を狙う活動」であり、核となる能力・強みを生かして販路拡大を狙う中小企業にとって、取組む価値のあるものです。

 中小消費財(BtoC) メーカーの企画部門勤務時に多くの社外協働案件に関わった筆者が、取組を考える・進めるうえで重要と考えるポイントを、具体事例も交えご説明します。


1. 協働の3要素


 協働をスムーズに進めるための要素は3つあります。

①(協働を行う2者の)共通の目標
②(協働を行う2者の)異なる強み・専門性
③(協働を行う2者の)双方の主体性・意欲


 目指す目標がずれていると協働がスムーズにいかないのは言うまでもないかと思いますが、異なる強み・専門性の組み合わせについては当然のことのようでいて、現実には近い強みを持つ者同士で組んでしまう事例も見受けられます。
 例えば、ハンバーガーショップとカフェが協働でサンドイッチを開発し、同時に販売した事例が以前にありました。話題性で売上が若干あがることはあったようですが、「カジュアルな洋風の飲食、リラックスできる時間・空間の提供」という面でそもそも近い強みを持つもの同士の組み合わせであり、協働・コラボレーションによる効果を十分に発揮できたとは言うには難しい結果のようでした。

 また、協働への強い意欲が片方にしかなかったり、双方の力関係を反映した細かな指示・条件が多くて主体性を発揮しにくい状況であったりした場合も、質の高いアウトプットを出すプロセスが働きにくいことは想像しやすいかと思います。


 「コラボレーション・協働=Collaboration」とは、単に「一緒にやること=共同」ではなく、「Co=協力」して、「Labor=働く」ことであり、前述した①~③の3要素をふまえた取組の枠組みをいかにつくっていくかが非常に重要となります。


2. 協働・コラボレーションが中小企業で有効となる背景


 中小企業で協働・コラボレーションが有効な取組となり得るのはなぜでしょう。それは言うまでもないかもしれませんが、「社内資源が限られている」からです。

 私が以前勤務した会社は、非常に高い技術で製品を作る人材と能力を持つ一方、新たな顧客層獲得のための製品開発や魅力の伝達に苦心していました。その状況を受け、消費者の声をつかむ力および伝達力・販売力を持つ通販企業との協働を行ったところ、新たな顧客層にも訴え得る製品の開発および売上の拡大に成功しました。不足する専門能力を全て自らで対応するのではなく、外部との協働で補完し、自らの強みである製造・生産に特化することで新たな成果を生み出したのです。

【事業プロセスの一部を外部で補完】

 また、「社内だけで考える発想は硬直化しがちなこと」も協働が有効となりうる背景の一つです。

 社長・部長が長期にわたってリーダーを務めることも多い中小企業では、会議メンバーが固定化し、経験の蓄積や安定感の裏返しに、新しい考え方が出づらくなる傾向があると言えます。社内を動かすために顧客の意見を使うという営業の方は多くいらっしゃると思いますが、同じように、外部の考えや意見を入れることで社内を活性化し、「新たな発想が生まれやすくなる状況をつくる」ことは、意識して進める価値のあることです。

【硬直化しがちな発想に、新たな風を】

3. 協働・コラボレーションの効果


 協働で得られる効果は何か? それはまず「相互の顧客を誘導しあう」ことがあげられます。

 漢方関連の製品を扱う会社が、エステの事業者と協働した事例がありました。サンプル提供や講座・セミナーなどのイベントを協働で実施したもので、「小売業とサービス業」「漢方とアロマ」という異なる強み・専門性を持ちよったことにより、お互いに通常の活動ではアプローチできない新規顧客に接触する機会となりました。冒頭にお話しした飲食業同士の事例と比べて、もともとの強みや顧客層の重なりが少ないことがおわかりいただけるのではないかと思います。

【顧客の誘引は、協働で狙う大きな効果】

 また、前項であげた背景とも関連し、「新たな発想を生みやすくする」ことも重要な点です。私が在籍した会社 では、その世界に精通した人間がコアの顧客・ファンの心をしっかりとつかみ事業基盤を形作る一方、顧客層を広げる発想がなかなか出にくい面がありました。共通の目標を目指す協働相手との率直なやりとりが、組織内の様々な気づきや新たな発想につながっていくことは、大きな効果の一つと言えます。


 さらに加えると、先にお話しした事例のような製造業と小売業の協働の場合、「成果 (売上)の確度向上」というポイントもあげられるでしょう。双方の主体的取組と十分な情報交換を通じ、小売側は自身の意図がある程度入った製品とその安定的な供給を得ることができ、一方製造側は新製品の確実な販売先を確保するとともに、生産準備をスムーズにする需要情報を得ることができていると言えるでしょう。


4. 取組を進める際のポイント


 最後に協働・コラボレーションを進める際のポイントをまとめます。

① 協働相手の探索
 不足している専門性を明確にした上で、それを補う企業や機関を探します。私が会社に勤務していた際は、インターネットでキーワード検索して直接問い合せたり、幹部や同僚のネットワークを活用したりしていました。独自に見つけることが難しい場合は、中小企業支援機関など公的機関のマッチングサービスを利用したり、異業種交流会などに参加したりする方法もあります。

② 双方の意欲・主体性の確認
 担当者間だけでなく、幹部や管理者間でも要所要所で面談の場を持ち、双方の意欲や取組への温度感(またその表れとしてのスケジュール)を、確認しながら進めることが非常に重要です。事業や組織が違えば、双方の社内優先度やスピード感に差が出る可能性は常にあります。片方だけがやる気で「労多くして功少なし」ということにならないよう十分な留意が必要です。

③ 労力・成果のバランスを考えた投下資源調整
 協働を行う際には、双方の目標がずれていかないよう確認したり、それぞれの強みを生かした役割・費用の分担を固めたり、組織間のすりあわせや両社内の調整に労力を要することが多くなります。そのため状況に対応できる人材を配置し社内の協力体制を整備することが必要になってきますが、あわせてそれに見合う成果が得られるかを常に意識することも必要です。もちろん全てがスムーズに進むわけではなく我慢が必要な場面も出てくるとは思いますが、プロジェクト進行の確度を見極めながら投下する人手や費用を調整していくことが必要です。

【双方の協議と社内調整を経て、協働プロセスを進行】

 協働・コラボレーションは、組織に新しい風を吹き込み、販路拡大の突破口になる可能性を持った取組です。事業に停滞を感じることがあれば、対応策の一つとして検討されてみてはいかがでしょうか。

著者プロフィール

池田 明広(池田中小企業診断士事務所 代表)

大手飲料、地域伝統工芸品、中小酒類など消費財(BtoC)メーカー企画部門での経験を経て、中小企業診断士として独立。会社の強み・規模や事業特性をふまえた製品戦略、販路拡大、プロモーション、新商品・ツール開発などのマーケティング・営業支援を軸に活動している。事業計画策定、PDCA・目標管理体制構築などの伴走支援にも取組む。

< 専門家コラムTOP

pagetop