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将来の価値を創造する「経営デザインシート」を活用しましょう!

内閣府が推奨している「経営デザインシート」をご存じでしょうか? 中小企業の新たな活力を生むツールとして期待される「経営デザインシート」とは何なのか? 作成の方法は? 作成することで得られるメリットについてご紹介します。

(掲載日 2020/10/09)

経営デザインシートの活用

1.はじめに


 経営デザインシートは、内閣府・知的財産戦略推進事務局が2018年にリリースしたもので将来を構想するための思考補助ツールです。1枚でビジネスモデルが俯瞰できることから利用が広がってきています。「作れば売れる20世紀型」経済環境から、冷戦崩壊を境に供給力が高まり、「選ばれたら売れる21世紀型」へ変化しています。


 「選ばれる」ためにはどうすればいいでしょうか?ユーザの価値観は多様化しています。ここで重要なことは、自社の生み出す価値が、ユーザの共感を得ることです。企業の有する資源を組み合わせて、企業理念に適合する価値を創造することにおいて、企業の目に見えない“強み”である知的資産の占める役割が増大しています。
 知的資産とは人材、技術、組織力、顧客とのネットワーク、ブランド等の目に見えない資産のことで、企業の競争力の源泉となるものです。これは、特許やノウハウなどの知的財産だけではなく、組織や人材、ネットワークなどの企業の強みとなる資産を総称する幅広い考え方であり、企業のバランスシートには記載がないため、目に見えない資産と呼ばれています。
 この知的資産を自覚し、活用することで、企業の競争力を高め、将来の価値を創造します。この価値創造のメカニズムをデザインすることで、ビジネスの相手方であるユーザの共感を得ることが肝要となってきます。


 近年「デザイン思考」という言葉をよく耳にします。「デザイン思考」とは、デザインしたサービスやプロダクトの先にあるユーザを理解し、仮説を立て、戦略や代替する解決策を再定義する一連の問題解決の考え方のことです。経営をデザインすることで価値を創造するとともに、「選ばれる」ための戦略作りを行っていきます。

出典:内閣府ホームページ 知的財産戦略本部「経営デザインシートの雛型」



2.経営デザインシートのフレームワーク


 将来を構想するための思考補助ツール (フレームワーク)であり、その内容は、環境変化に耐え抜き持続的成長をするために、

(A) 自社の目的・特徴、経営方針を確認し、存在意義を意識した上で、

(B) 「これまで」の価値を生み出すしくみを把握し、

(C) 長期的な視点で「これから」の在りたい姿を構想し、

(D) それに向けて今から何をすべきか戦略を策定します。

出典:内閣府 知的財産戦略本部「経営デザインシート作成テキスト入門編」(2019年3月)


 以下、内容を1つ1つ詳しく見ていきます。



3.経営デザインシート作成の手順


1)「社会、市場に伝えたい自社/事業の想い・イメージ」 の再確認(A)

 自社らしさを振り返り、社会、市場へ伝えたいイメージを再考し、同じ事業をしている他社とも異なる、自社ならではのこだわりや想いを書き出します。その上で、創業時、なぜ今の事業を始めようようと思いたったのか、過去を振り返る等、自社の経営方針を再確認します。

2)自社の歩みを振り返り、「これまでの価値を生み出すしくみ」の認識(B)

 どのような資源(ヒト、モノ、カネ、知的資産)を持っているか確認します。その資源のうち、事業に必要不可欠なもの、他社との差別化になっているものを考えて、自社の強みを把握します。自社の強みを活かし、どのようなネットワークを構築してきたかを振り返ることで、価値を生み出すしくみを認識します。

例えば、刃物メーカーで取り扱う理美容業界用ハサミにおいて、「長時間の使用でも疲労が少ないまま切味を維持でき、研ぎに出す頻度も少なくて済む」という強みを活かして価値を生み出してきたことを認識します。ここでは、自社のハサミの刃の噛み合わせ角度特許、自社独自の刃物研磨技術というノウハウと、地域の鍛造職人との連携があります。

 現状認識のもと、自社をとりまく外部環境を書き出し、外部環境が自社にとって チャンスか、リスクかを選別します。環境分析を行い、これからの持続的成長に障壁となっている事業課題を検討します。


3)将来を構想するステップとして 「これからの価値を生み出すしくみ」を描く(C)

 5年後、10年後を想定して、自社のまわりで、どんな社会変化がありそうか(社会全般の変化、業界の変化)、環境変化により顧客ニーズにどんな変化がありそうかを考えます。「考えられる未来の社会・顧客の変化」に基づき、将来の顧客・社会の「困りごと」「実現したいこと」、価値を明確化します。顧客の変化に対して、自社は、どんな相手に、どんな解決策(価値)を提案したいか、社会や顧客に対し、どんな結果やインパクトをもたらしたいかを検討します。
 その上で、これからの価値を提供するために、自社の商品・サービスはどうあるべきか、誰と組む必要があるか、顧客にどのようにアクセスする必要があるかというビジネスモデルを認識します。

2)の刃物メーカーの事例では、理美容ハサミの刃物技術で培ってきたノウハウを活かし、ネイルサロン業界のニッパに新規進出することで、ネイルカットの仕上がりが良く・速くなり、ネイルサロンユーザの満足度も上がる価値を提供するという新たなビジネスモデルが浮かび上がってきます。


4)将来構想を実現するステップとして 「今から何をすべきか」を考える(D)

 将来を見据えて、これからの外部環境の変化を考えた上で、どのような資源が必要か、どのような課題があるか認識します。「これからの価値を生み出すしくみ」を実現しようとした際に、困難と思われるポイントは何か、その困難は何が原因か、その原因を解決するために、何をしなければならないか検討します。
 その上で、何をどうしたら課題は解決するか、必要な資源は、どこ(社内外)から得られるか、資源を得るために何をする必要があるかという「今から何をすべきか」を考えることが重要です。
 つまり、経営デザインシートでは、将来のあるべき姿を描いた上で、現在の姿と比べて、足りない資源を認識した上で戦略を立てていくという引き算の考え方です。これは、現在の姿からの延長線ではなく、目標となる未来を定めた上で、そこを起点に現在を振り返り、今何をすべきか考える未来起点の発想法(バックキャスト)を取り入れているのが特徴です。

2)の刃物メーカーの事例では、未来のビジネスモデルを起点に、今何をすべきかという発想を行うと、「ネイル業界へのチャネルの開拓およびハサミ製造の技術をネイルニッパに転用するための鍛造職人との連携強化が必要」という戦略が出てきます。


出典:内閣府(仮想事例)理美容業界用はさみを製造する刃物メーカーの事業拡大をもとに筆者作成



4.経営デザインシート作成のメリット


 経営デザインシート作成のポイントから、どのようなメリットがあるか考えてみましょう。

1)経営課題の気づき・整理、新事業の構想
 経営層と社員が共同で対話しながら、経営デザインシートを作成することをお勧めします。そのことにより、このシート1枚で、経営課題の気づき・整理、新事業の構想を行うことができます。

2)他者との連携促進
 将来の価値創造において、自社に足りないものを見える化します。そのことにより、外部環境の変化に先んじた他者との連携促進を図ることができます。中小企業においては資源が限られています。新たなビジネスチャンスをつかむための準備を進めておきましょう。

3)事業承継への活用
 現経営者が「これまで」、「これから」を記載することにより、将来のビジネスモデルに向けた事業承継の必要性に気づくきっかけとなります。
 また、現経営者が「これまで」を記載、後継者候補が「これから」を記載することにより、事業承継における移行戦略の対話ツールとして活用することができます。

4)金融機関「事業性評価融資」への活用
 このシートには、企業の現在の姿と、将来の事業の姿が凝縮されています。顧客のニーズやウォンツに対応する価値創造のビジネスモデルが描かれています。金融機関が、融資を検討する上で、企業の今後の事業内容や成長可能性などを適切に評価することが求められています。経営デザインシートにより、現在の事業と将来の事業を語るツールとして活用していただきたいと思います。

著者プロフィール

川居 宗則 (かわい むねのり)(経営デザインコンサルティングオフィス 代表)

中小企業診断士/1級FP
メガバンクに32年勤務し、融資担当、審査部、支店長経験から、融資案件に携わった中小企業は1,000社以上。事業性評価を得意とし、内閣府勧奨の「経営デザインシート」を活用して企業の強みに着目するビジネスプランを策定。融資、補助金の申請等、資金調達について伴走型でサポート中。

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