助成金・補助金等、経営力UPの経営情報が満載!
はじめての方 無料経営診断 会員登録ログイン

専門家コラム

専門家コラム
会員登録すると、
新規会員登録はこちら
お気に入りに追加 シェアツイートLINEはてぶ

“健康経営”を取り入れて、社員も会社も“健康”に!

2019年(平成31年)4月から働き方改革関連法が順次施行され、最低賃金も一部地域では1,000円/時を超える等、企業はますます生産性の向上が求められるようになっています。従業員の健康に目を向けた、最近話題の「健康経営」について、事例を交えて詳しくお伝えします。

「わが社もやってみよう。健康経営! ~社員の健康は生産性向上の第一歩~」

1.健康経営の取組み効果


 東京都葛飾区に本社を置く「株式会社みやこ包装」は、従業員12名の中小企業です。弁当等の容器包装資材を、東京近郊の取引先に卸売りしています。横山久社長は2017年の営業担当社員の長期休職をきっかけに、それまで以上に社員の健康が気になるようになりました。同社のような小規模企業では、一人の欠員が経営への大きな影響をもたらすからです。実際その場面に直面し、数か月の間、自らはもちろん社員全員で残業もいとわず配送のフォローにあたったといいます。

 その出来事を契機として、健康診断および再診の100%受診、企業による団体生命保険の加入、バランスの取れた栄養摂取のための社費での昼食提供、熱中症予防のための飲料提供等、健康を気遣った対応を進めています。
 2019年になり、後述する「健康企業宣言*」の取組みを知り、横山鈴代専務、健康づくり担当者の照屋氏とともに現在「健康企業宣言 銀の認定」を目指しています。この取組みを開始後、血圧計・万歩計を購入し、毎日の計測結果の記録を始めました。照屋氏が中心となり、社員への積極的な働きかけを行った結果、それまで消極的だった社員も計測を行い、記録をするようになりました。いままで営業活動以外に会社全体で何かに取組む機会があまりなかったとのことでしたが、簡単な計測結果の記録を通じて、「社員が健康に対する意識が出てきた」「実際、お酒の量をセーブしている」「健康の話題で、コミュニケーションも活発になった」と早速の効果を実感されているようです。

「これからも健康経営を理解し、これらの取組みを継続し、社員の健康を後押しできるようにしたい。」と、横山専務は笑顔で応えてくださいました。


*健康企業宣言:全国健康保険協会(協会けんぽ)東京支部などが取組んでいる事業で、健康優良企業を目指して、企業全体で健康づくりに取組むことを宣言し、一定の成果を上げた場合は「健康優良企業」として認定される制度です。認定には金・銀の2種類があります。

(写真:健康経営に取組む株式会社みやこ包装のみなさん)


2.健康経営には多くのメリット


 さて、ここで健康経営についての概要を説明します。

 健康経営の考え方は、1980年代米国の経営学・心理学者であるロバート・ローゼン氏によるヘルシーカンパニー思想「健康な従業員こそが収益性の高い会社をつくる」という概念からきています。

 これまで企業の健康への関与は、健康診断の実施等で表出した健康問題に事後的に対応するという姿勢が強くありました。また、健康管理は個人の領域であると捉えられていました。健康経営では、社員の健康への“投資”に舵をきり、病気はもとより、ストレスによるリスクをいかに防ぐかという視点に立っています。

 健康経営を考えるにあたって重要な視点の一つに“プレゼンティーズム(疾病就業)”というものがあります。プレゼンティーズムとは、体調不良やメンタル不調により、会社には出社しているが集中力・判断力・作業効率が低い、ケアレスミスを頻発する等、パフォーマンスの上がらない状態のことです。そのプレゼンティーズムが健康関連コストの大半を占め、医療費のそれを大幅に上回るというレポートがあります。頭痛、肩こり、睡眠不足、花粉症、二日酔いも、“プレゼンティーズム”の原因に含まれます。

出典:データヘルス・健康経営を推進するためのコラボヘルスガイドライン 厚生労働省保健局

 少子高齢化を迎え、介護・医療といった社会保障費が増大する中、健康経営に取組むことは、これらを低減させる社会的な要素も含まれています。このため、国もさまざまな施策をもって国家戦略の一つとして健康経営を進めています。

 企業における健康経営取組みのメリットとしては、3つあげられます。

 社員の心身の健康度が高まることにより、個々のパフォーマンスが十分に発揮され、また健康への意識向上は、周りの社員への配慮が自然と進み、コミュニケーションが図られ、チームの推進力が高まります。それらは、(1)生産性の向上へとつながります。健康経営に取組んでいることを広く対外的にも示すことで、(2)企業のイメージアップとなり、採用活動にも効果的に作用することでしょう。同時に、感染症等の予防にも取組むことにより、(3)リスクマネジメントが図られるなどがあげられます。
 反対に、「投資効果が見えにくい」、「社員の健康情報といった個人情報管理に負担が増える」という側面もあります。

 では、これらを理解し、健康経営をどのように推進したらいいのでしょうか?


3.健康経営推進のポイント


 健康経営は残念ながらすぐにできることではありません。まずは、経営者自らが健康の大切さに気づき、社員を健康にするという強い意志が必要です。うまくいかない企業の多くは、経営者のコミットメントが弱く担当者任せきりになっていたり、あるいは社員に経営者の想いが伝わっていなかったり、また健康リスクに対する認識不足により経営者が健診受診や受診結果をさほど重要なこととしてとらえていなかったりすることが原因です。

 このため、まず経営者が健康診断をきちんと受診することが重要です。そのうえで、社員の健康診断100%受診を目指し取組みましょう。健康づくり担当者(チーム)を設けて、経営者の想いを伝える代弁者かつ旗振り役となり、健康経営を推進する体制を整えます。

 健康経営の取組みを後押しするものとして、“健康宣言”(東京都の場合、健康企業宣言)等のプログラムがあります。これに参加することで企業が実施すべき事項が整理、網羅されるとともに、加入している健康保険組合のホームページ等を通じて、企業は対外的にも広く知られることとなります。対外的発信の機会の少ない中小企業にとってもこの取組みはよいPR材料となるはずです。加入している健康保険組合等にこれらプログラムの問合せを行い、健康経営の第一歩を始めてください。「健康企業宣言」では、取組みの結果80点をクリアすること等により「銀」の認定が受けられる(2019年執筆時現在)ことも、健康づくり担当者をはじめ社員のモチベーションアップ、対外的な信用力向上に一役買うことができます。なお、インセンティブとして、信用保証料率の低減や融資金利の優遇を設けている金融機関もあります。

 さらには、経済産業省が制度設計し、日本健康会議が認定する「健康経営優良法人」があります。2016年にスタートしたこの制度では、「大規模法人部門」に821法人、「中小規模法人部門」に2503法人が認定を受けました(2019年2月21日現在)。中小企業等の法人数の目標も1万法人から3万法人に拡大され、社会の関心の高さも窺えます。(東京都の場合、健康企業宣言「銀」の認定が申請要件になっています。)

図 健康経営優良法人顕彰制度全体像

出典:経済産業省 健康経営優良法人認定制度ホームページより


 もう一つ重要なことは、取組みを継続するということです。これら認証制度も取得して終わりではなく、毎年取組みと改善を行い、毎年取得していくことになります。健康経営は、一朝一夕には成し得ることはできません。繰り返しトップからの健康に対する意識づけの発信と、それを推進する健康づくり担当者(チーム)のフォローが必要です。

 自社で実施するプログラム作成・実施の過程の中で、健康づくり担当者が中心となって、社員の意見を聞く等のコミュニケーションを図るようにしましょう。自身の意見が反映された企画を推進することで、経営者、担当者だけでなく、社員全体の取組みに昇華できるかがポイントになります。
 例として、会社に社員の家族を招待する「ファミリーディ」を開催し、そのイベント内で健康をテーマにしたクイズを実施する。健康診断の日程を奥様にもお伝えし、夫婦で受診することができるようにする等、社員の家族を巻き込める企画を取り入れると、より関心が高まり、自然と健康への意識が高まっていくことでしょう。


4.おわりに


 最後に、これまでの健康経営コンサルティング等で見聞きした実際の事例を示します。これらをヒントに自社の実情にあわせて、できることから取組んでみましょう。

(1)健康診断受診予約を本人任せにせず、管理部門から医療機関に予約
(2)社員旅行に心身の健康増進を目的とした旅行(ヘルスツーリズム)を採用
(3)食生活の改善や運動機会の増進に関するセミナー開催
(4)健康に配慮した仕出し弁当の提供や費用負担
(5)週1回朝、バナナを提供
(6)異部署の社員グループによる歩数競争イベント
(7)ヨガが趣味の社員による社内ヨガ教室
(8)感染症予防等健康課題の回覧
(9)有給休暇取得推進月間のポスター掲示
(10)喫煙の害の社内研修と喫煙者禁煙宣言へのインセンティブ

 これらの実践事例は、決して大企業のものではありません。むしろ中小企業・小規模事業者がその小回りを活かし、まずはやってみるという会社が多いです。上手くいかなければ、次の新しい企画を考え実践する。そのプロセスこそが、コミュニケーションを生み出し、社内を活性化させるのです。会社が社員の健康増進に投資をし、イキイキと社員が働く。経営者、社員その家族のみなが健康を意識し、上手に取組み推進する。

「社員が健康であれば、会社は良くなる、そしていつまでもつづく。」とおっしゃった株式会社みやこ包装横山専務の言葉は、健康経営を端的に表していると言えるでしょう。

*「健康経営」はNPO法人健康経営研究会、「健康企業宣言」は全国健康保険協会の登録商標です。
*東京都職域健康促進サポート事業では、健康経営専門家派遣を行っています。
https://www.tokyo-cci.or.jp/kenkokeiei-club/06/

著者プロフィール

屋代 勝幸(会社の健康研究所 代表)

健康経営エキスパートアドバイザー、中小企業診断士として、企業の健康経営導入、推進の支援を行う傍ら、健康経営をテーマにしたセミナー、講演、執筆をおこなう。
国内乳業メーカー・外資系消費財メーカーにて27年間、営業、営業企画、宣伝、商品企画、調達、人事総務での幅広い経験や知識を活かし、中小企業の伴走支援を実践している。

< 専門家コラムTOP

pagetop