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顧客の潜在ニーズを探るには?

この商品に何か不満がありますか? 顧客ニーズを把握するためにこのような質問をしてはいないでしょうか。顧客の真のニーズを探るには、もっと違った質問をすることが必要です。顧客の潜在ニーズを探るその方法とは・・・

顧客のニーズを見つける方法

1.ニーズは「訊く」のではなく「見つける」

 売上がピークを過ぎた商品・サービスを一新するためには、新たな使い方(価値)を提案することが有効です。その際に、よく用いられるのが「顧客にニーズを尋ねる」ことです。たとえば、「この商品に何か不満がありますか?」「この商品をなぜ買い続けているのですか?」「この商品がこうなったらいいなと思うポイントはありますか?」といったことをインタビューの被験者に尋ねます。

 しかしながらそこから得られた情報は、新たな用途や価値の提案に結びつくことはあまりありません。なぜなら、被験者である一般ユーザーは素人であり、「値段を安くして欲しい」「使い勝手を良くして欲しい」といったありきたりな答えしか出てこないからです。

 人の意識には顕在意識と潜在意識があります。このうち潜在意識が占める割合は95%とも言われています。質問で答えられる情報は、被験者の顕在意識にもとづくものです。すでに気がついているから答えられるのです。

 これまでにないような新たな用途や価値につながる情報を得るためには、顧客もはっきりと分かっていない潜在意識を探る必要があります。そこで、本コラムでは、顧客の潜在意識を探るための方法であるデプス・インタビューとエスノグラフィー調査をご紹介します。

2.深層心理を探る(デプス・インタビュー)

デプス・インタビューとは、1人の対象者に対して価値観や利用・購買動機について深くインタビューするというものです。

 一般的なグループインタビューだと「対象者1人1人から深い情報が得られない」「他の人の意見や視線が気になって本音が引き出しにくい」といったデメリットがあります。深い本音の情報を引き出すためには、1人1人と時間をかけて信頼関係を築く必要があります。
 もっともそれだけ時間がかかるのも事実で、標準的には1人あたり1時間半程度、サンプル数10件程度を1ヶ月程度かけて収集します。一般的なインタビューガイドは次のとおりです。

(1)趣旨説明と自己紹介(5分程度)
・インタビュアーの自己紹介
・インタビューの趣旨説明
・インタビュー時間や大まかな内容についての確認

(2)対象者自身について(15分程度)
・自己紹介(家族構成、お仕事、趣味、休日の過ごし方など)
・(事前にヒアリングシートでのアンケート調査を行った場合)調査内容を確認しながら対象者自身についてのインタビューを進める

(3)テーマについて(50分程度)
・テーマに関する質問をする
・事実に関する質問から始めて、動機や価値観について訊いていく(たとえば当該商品の購入場所から始めて、思い入れや愛着などを訊く)

(4)今後の展望について(15分程度)
・テーマに関連した今後やってみたいこと、計画していること、興味があることなどを訊く

(5)クロージング(5分程度)


 紙のアンケート調査での回答と、実際に話をして得た回答では内容が大きく異なることはよくあることです。相手の話を直接聞くことは本当の情報を得るためには欠かせません。

<デプス・インタビューの例(シャンプー 50代勤労主婦)>
Q: シャンプーをしているときの気持ちは?
A: 洗っているときは気持ちよくないけど、髪をタオルドライした後とか、ドライヤーで乾かした後はすごく気持ちいい。全身気持ちいいのは髪を洗った日。ふあ~っとした感じ。睡眠まで違う気がする。

Q: ふあ~っとした感じとは、具体的にどんな感じですか?
A: ドライヤーで乾かしたときのすごく爽やかな感じ。すごく好き。

Q: シャンプーすること自体はどうですか?
A: まあまあかな。シャンプーした後が好き。

Q: それはどんな気持ちですか?
A: 1日の疲れがとれた感じ。いい気分。すごくいい気分。


 このインタビューの内容からは、「ユーザーにとって、シャンプーをするという行為は1日の締めくくりの儀式化ではないか?」という仮説が得られます。
 そして、販促として、「安眠をテーマとするプロモーションは従来なかった!香りなどで安眠訴求が可能か?」という案が得られます。


 インタビューをする側が持っているイメージの枠組みを超える情報を得ることが目的ですので、被験者に自由に縛りなく語らせることがポイントです。調査目的を明らかにせず誘導しない、事前に用意した質問票に沿った話にならなくても気にしない(脱線を歓迎する)といったことが求められます。

3.思いがけない質問を投げかけてみる

デプス・インタビューにおいて対象となる製品や会話の流れ次第では、「この製品を人に例えるとどのような人だと思うか?」や「この製品を利用している人はどんな人だと思うか?」など、思いがけない質問を投げかけることで対象者に軽い驚きを与え、深層心理を引き出しやすくすることができます。

 ビーフシチューの例を取り上げてみます。

<質問例①>
Q:ビーフシチューが仮に意思を持っているとすれば、あなたのことをどのように思っていると思いますか?理由を含めて50字以内でご自由にお答えください。

⇒「『忙しいときにしか使ってくれない』と思っている」と答えた人は、シチューを簡単なレシピだと捉えていて手抜きをしていることに後ろめたさを感じているのかもしれない。

⇒「『特別な日には僕の出番だよ』と思っている」と答えた人は、誕生日や記念日のようなときに、よい材料を使って手間暇かけて作るメニューだと感じていることが分かる。


<質問例②>
Q:仮にあなたがビーフシチューになったとします。そんなあなたは大好きな恋人にフラれてしまいました。そのフラれ文句は、
「ビーフシチューさん、あなたの(  ①  )は好きだったんだけど、(  ②  )が好きになれなかったんだ」
①②に当てはまる言葉をそれぞれ20字以上でお答えください。

⇒たとえば①に「ワインが合うようなオシャレな雰囲気」、②に「毎日家で食べる気にはなれないところ」という答えが返ってきたとする。その人は、ビーフシチューには特別感があるけれど、日々のおかずにはならないという不満を感じていることがわかる。

 このような過程を通じて、「日常の小さな特別感をアピールする『今日はちょっとがんばった!そんなご褒美にビーフシチュー」といったプロモーションはどうか?」「ビーフシチューのイメージをカジュアルダウンし、『ビーフシチュー+αで毎日楽しむ』といったプロモーションはどうか?」といった仮説が浮かび上がります。

4.エスノグラフィー調査

 エスノグラフィー調査とは、文化人類学や社会学のフィールド調査で用いられてきたものです。対象となる人の生活の現場に実際に赴き、現場に入り込み、話を訊くだけでなく、行動やしぐさ、周囲の人の観察を通じて対象を理解します。

 デプス・インタビューは、会場でのインタビューであるため、生活環境に関する情報を得ることが困難です。よって、デプス・インタビュー後にエスノグラフィー調査を行うことが有効です。こちらも手間がかかるので、5から10件程度のサンプルを1ヶ月半程度かけて収集するのが標準的です。

 消費財の場合は、多くの場合は自宅に訪問して使用場面を観察することになりますが、普段の買い物に同行したり、インタビューの対象者が普段付き合いのある場所(例:修理屋、コミュニティなど)に同行したりすることも有効です。産業財の場合は、オフィスや工場など生産現場に訪問することになります。

 デプス・インタビューやエスノグラフィー調査は大企業ではよく使われる手法です。経営資源に限界がある中小企業の場合でも、日頃のちょっとした顧客との会話や観察の中から新しい使い方提案のヒントを見つけることができます。本コラムでご紹介した手法を使って、他社が手がけていない新しい顧客価値のアイデアを見つけて頂ければ幸いです。


<参考>
『機会発見』岩嵜博論著 英治出版
『買い物客はそのキーワードで手を伸ばす』学習院マネジメント・スクール監修 ダイヤモンド社

著者プロフィール

三枝 元(サエグサ ゲン)(中小企業診断士)

大手製造業の法人営業、大手資格受験指導校の社員講師を経て独立。ビジネスモデル、モチベーション管理、チーム・プロジェクト管理、ビジネス・コミュニケーション、ビジネス思考法などの企業支援、企業研修(セミナー)、執筆活動を行っている。
著書:「中小企業診断士のための経済学入門」(同友館)など

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