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中小企業のDX最重要課題~従業員のITリテラシーを高めるには~

企業のデジタル化(DX)は大企業に限った話ではありません。中小企業も積極的に取り組むべき課題です。しかし、いくら立派なITツールを導入しても、扱うヒトにITリテラシーが備わっていなければ最大限の効果は望めません。そこで従業員のITリテラシーの高め方を紹介します。

(掲載日 2022/11/30)

中小企業のDX最重要課題~従業員のITリテラシーを高めるには~

1.なぜIT化が進まないのか



総務省「令和4年版情報通信白書」によると、デジタル化を進める上での課題や障壁として、「人材不足」を挙げる経営者が多いことが分かります。(表1<デジタル化を進める上での課題や障壁>参照)

出典:総務省(2022)『国内外における最新の情報通信技術の研究開発及びデジタル活用の動向に関する調査結果』をもとに筆者作成



人材不足への対策としては、即効性があるのは外部からの調達となりますが、中小企業にとっては、求人を出しても採用は難しいし、資金的にも容易ではありません。また、運良く人材確保できたとしても、社内に不協和音を生み出し、必ずしも自社の最適な成長に貢献できないリスクもあります。

そこで今回私が着目したいのは、2番目に挙げられた「ITリテラシー不足」への対策です。人材採用が難しい以上、社員の知的好奇心を高め、内部育成し、デジタル化に取り組んでいくことは、中小企業の強みを活かした施策と言えます。


2.ITリテラシーとは何か


ITリテラシーとは、IT活用力とも言われ、単なるプログラミング能力やWord/Excelの使い方や各種情報処理資格(≒ITスキル)のことではありません。(図2<ITリテラシーの位置づけ>参照。)

筆者作成


IPA(独立行政法人情報処理推進機構)の定義では、「社会におけるIT分野での事象や情報等を正しく理解し、関係者とコミュニケートして、業務等を効率的・効果的に利用・推進できるための知識、技能、活用力」となっており、ITを具体的にビジネスにどう活かすかの技術のことです。

従って、ITリテラシーは、習得が難しいというイメージが先行する印象がありますが、実際にはIT知識やITスキルの有無に関わらず、日々の業務、経験等から身につけるものであり、社会人ひとりひとりが意識的に向上させることができると認識する必要があります。


3.ITリテラシーが高まらない要因とその対策


ITリテラシーが高まらない要因として、①技術の進歩が早くついていけない、②難しく挫折しやすい、③そもそもIT教育を受けたことがない、④自社にどんなITが必要なのか分からない、などが挙げられます。これらへの対策としては、常に最新動向が捉えられるよう継続性がある取り組み、みんなで少しずつ楽しく学んでいける取り組み、社員ひとりひとりの興味から会社に必要なITを抽出できる取り組み、が重要なことが分かります。

上記のことからITリテラシー向上のために重要な5大ポイントは、「みんなで」「緩く」「楽しく」「少しずつ」「継続できる」ことであり、そのような取り組みの実施が必要です。


4.研修形態とそのメリット


一般的な能力開発手法としては、大きく、個人学習、社内勉強会、集合研修が挙げられます。この中で、ITリテラシーを高める研修形態として、各組織の自発的な取り組みで、講師は同僚で持ち回り、計画的・継続的に開催でき、テーマを体系立てず自由な発想で双方向にやりとりができる特徴を持つ、社内勉強会をお勧めします。(表3<研修形態ごとの特徴>参照。)

筆者作成


社内勉強会のメリットはたくさんあります。特にコスト面での恩恵が大きいのに加え、コミュニケーションも取りやすく、大企業よりも少数精鋭の中小企業向けの施策と言えます。以下のようなメリットが享受できます。

まず、最も関心が高いと思われるコスト面については、社内勉強会であれば、全く費用がかからないし、議事録を取らない等工夫次第で、企画・運営の手間がかからないことは注目に値します。

次に、コンテンツ面では、現場起点のテーマで能動的に学べることや、体系的ではなく実体験に根ざした有意義な研修とすることができます。

また、コミュニケーション面では、同僚相手なので発言しやすい上に、若手・新参者の早い成長に寄与することができ、職場の活性化、コミュニケーション強化に一役買います。


5.社内勉強会をどのように進めれば良いか


社内勉強会は以下のように進めます。(図4<社内勉強会の進め方>参照。)

筆者作成


①方針、意義を示す


「みんなで楽しくITに強くなろう!これからのデジタル時代を勝ち抜くために!」のようなスローガンを掲げるのもお勧めですが、危機感をあおるのではなく、デジタル化で「みんなで」明るい未来に挑戦したいという一体感を醸成することが重要です。社長は始めにほんの少しだけ背中を押すのが好ましく、始まってしまえば、自身も一人の同僚として参加すれば良いでしょう。


②基本的なルールを策定する


社長も含めて全員(「みんなで」)参加、講師は全員持ち回り、どんな発言もOK(説明の邪魔にならないチャットでの書き込みもお勧め)、会議の進行役や議事録は不要、など面倒な要素はできるだけ排除するのが「緩く」「継続できる」秘訣です。社長や上司の参加によりプレッシャーになってしまうような場合には、肩書・立場を外す、批判はしない、というルールの設定も良いでしょう。


③時間と場所を決める


例えば、水曜日の11時半~12時(終了後そのままみんなで昼食に行ける)とし、テレワークも考慮し、各自自席にてリモート会議形式で行います。(現場とリモートでのハイブリッド開催では、環境制約が発生したり意思疎通が難しかったりする場合があるためお勧めしない。)開催時間は30分程度で説明自体は15分~20分で質疑応答の時間を設けるのが良いです。スモールスタートで「少しずつ」実施することが重要です。

また、開催の頻度については、従業員規模に応じて無理なく設定しまう。毎週実施すると仮定すると期首、期末、年末年始、繁忙期やお盆等連休期間を除くと年間約35回前後開催できます。従業員10名であれば、約3~4回講師が回ってくる計算となります。従業員数が多ければその分持ち回り講師の回数は減るし、従業員数が10名よりも少なければ隔週実施にするなど工夫すると良いでしょう。

そして、簡単な輪番表があると、自身がいつ講師になるか分かるため確実な実施につながります。突発的なトラブルなどの中止は全く問題ありませんが、事前に対応できないと分かっている場合には誰かと輪番を交代します。できる限り「継続できる」ことが重要です。


④講師が自由にテーマを決める


ITに関するものなら何でもOK(ITに関する本を読んだ感想、セミナーや展示会参加の感想や実施記録、最新デジタル技術の学習、便利なITツールの紹介、他社の先進事例の紹介など)です。講師自身の経験にもとづくかみ砕いた解説で理解度が増したり、上司や先輩の考え方に学びを得たりすることは多いです。同僚と自身の趣味が近いことも多いので、最悪デジタルに関係のない話でもOKにしても良いでしょう。とにかく「楽しく」進めることが肝要です。


6.まとめ


今回は、従業員の知的好奇心を刺激し、中小企業がITリテラシーを高めるための施策としての「みんなで」「緩く」「楽しく」「少しずつ」「継続できる」社内勉強会の進め方について提言しました。週30分の取り組みを1年も続けることができれば、少しずつITリテラシーの底上げを実感できるのではないでしょうか。

「継続は力なり」。社長が言わなくても、従業員が自発的に成長できる仕組みづくりを応援しています。

著者プロフィール

岡田 一郎(ブルーウィズコンサルティング 代表)

2022年に起業。長年携わっている金融機関向けのITシステム開発の経験と、最新のDX対応に関するノウハウをベースに、中小企業のDX、IT化支援を行う。全国津々浦々を訪問し、戦略的なビジネスモデル再構築、失敗しないシステム導入や業務効率化に関して、お客様の立場に立ち、分かりやすく説明する。

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