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社員を育てるコミュニケーション

社員が生き生きと働き、業績も右肩上がり。そんな「活力に満ちた会社」をつくるために、経営者が意識すべきことは何でしょうか。社員に対するコミュニケーション次第で、会社経営に好循環をもたらす可能性があります。今回は組織の活性化を後押しする2つのポイントを紹介します。

(掲載日 2022/09/30)

活力ある会社(組織)作り

社員がやる気になるコミュニケーション


皆さん、本プロジェクトのテーマでもある「活力」がある会社(組織)というと、どのようなイメージを持つでしょうか。私自身は、「社員が生き生きと自律的に働き、業績も上がっている会社」をイメージします。

最近、「健康経営」というテーマのセミナーに参加しましたが、話の内容は、会社でも社員等の健康を大切にすることで、一人ひとりの活力が向上し、組織の活性化や業績の改善につながるというものでした。

本稿では、会社の業績改善や目標達成に向け、どうしたら社員が活力を持ち、やる気を発揮しやすくなるか、経営者と社員のコミュニケーションを中心に考えてみました。ポイントは2点あると思います。

①目標達成に向けた経営者から社員への働きかけ 
②社員の自律的意識の醸成


上記ポイントにも関連しますが、昨年、ある住宅リフォーム会社の社長から、こんな相談を受けました。

一つは、「社員にとって、会社は自己実現の場であってほしい」、もう一つは、「社員に、もっと自律的に仕事をしてほしい」という内容でした。

言い換えると、前者の言葉は、「社員が、仕事を通じて能力を発揮し、自分の夢を実現してほしい」、後者は、「上司から言われなくても、自分から率先して他の仕事にも取組んでほしい」というやや辛口の内容でした。私は、助言に当たり、社員側の意識や考えも知りたいと思い、社長の承認を得て、社員ヒアリングを行いました。その結果、以下の意見や要望が社員から出されました。

・(請求書発行担当)顧客からの問合せに答えられるよう、施工管理の知識もつけたい。

・(施工担当)自分が行った工事に関連し、経理のことも知りたい。

・(施工担当)現在、発注主に紙ベースで工事完了報告を行っているが、スマートフォンなどを活用し、デジタル化を提案したい。

・(施工担当)施工技術、製品知識には自信があるが、顧客へ説明が上手くできない。

・(事務職)上司から、人事評価のフィードバックを受けたが、さらに良い評価を得るためにはどうしたらよいか教えてほしい。

ヒアリングの内容は、社員の了承を得て社長にも共有し、その後の業務改善に結びつけて頂きましたが、一見静かに見える職場でも、社員一人ひとりが、明確な課題意識を持っていることに正直驚きました。社員への働きかけ(問いかけ)の重要さを痛感したしだいです。

経営者から、時々社員に働きかけ、普段思っていること、感じていることを引き出してあげることでコミュニケーションがぐっと深まり、組織の活性化にもつながるのではないでしょうか。前述の会社でも、忙しさやお互いへの遠慮があって、社員から、なかなか思ったことを言い出せなかったようです。

今の例を参考に、事業の「目標達成」に向けたコミュニケーションについて考えてみます。

ポイント①-1:目標の設定・共有


●経営者は、目標達成に向け、個々の社員に何を期待しているのか、具体的な役割を伝える

経営者が、明確なビジョンや経営戦略を描いていても、それを個々の社員に伝える時間がない、伝え方が難しいといった声を聞くことがあります。年度当初は、会社全体での事業計画の説明に加え、可能であれば、経営者や上司が、個々の社員と目標、具体的な実施方法などについて刷り合わせの時間をとってみてはいかがでしょうか。社員が自分の目標に納得してこそ、やる気とパフォーマンスを最大限発揮してくれると思います。

ポイント①-2:年度途中のフォローアップ


●社員に声掛けし、担当業務の進捗状況を確かめ、一人で問題や悩みを抱えていれば必要な支援を行う

年度途中のフォローアップは、半期毎、四半期毎など、節目を捉え実施してはいかがでしょうか。社員は、想定外の事態から、一人で問題を抱え、悩んでいるかも知れません。例えば、工事上のトラブルを起こしたが、上司からの叱責、人事評価への影響などを恐れ、つい報告が遅れるといったことも考えられます。

経営者からすれば、「一体何をやっているのだ!」と怒りの感情が先行しがちですが、そのような時こそ、まず、「何があったのか状況を説明して」と冷静に対応することで、相手も話しやすくなるのではないでしょうか。社員のことを受容し、「それは大変だったね」と、ねぎらいの言葉を加えることで、相互の信頼感も深まるかも知れません。相手が自ら改善点に気づくような関わり方こそ、人の育成につながると思います。

ポイント①-3人事評価等のフィードバック


●前期に比べ、社員の良くなった点、改善した点をほめる/次に課題を共有する

キャリアカウンセリングのシステマティック・アプローチ*1という理論を参考に、私の考えをまとめてみました。一般的に、他人から批判されたり、否定されたりするのは、自分に原因があったとしても受け入れにくいものです。社員に評価結果等を伝える際は、極力、前期と比べ良くなった点、改善した点を具体的に挙げ、ほめることで、相手のモチベーションを高めましょう。

例えば、「随分○○について詳しくなったね」、「顧客への説明が、前よりわかりやすくなったね」など、言葉に出すことで、結果だけではなく、努力のプロセスも認めているというメッセージになりませんか。先に「ほめる」「認める」といった肯定的な意思表示を行い、その後に改善点を指摘する方が、相手も受入れやすくなるようです。

※筆者作成



ポイント②:社員の自律的意識の醸成


前述の会社のように、社員が元々持っている問題意識や考えを、経営者が引き出し、安心して語れる場作りを行うことも、自律的な意識の醸成につながるのではないでしょうか。経営者や上司が本気で話を聴く姿勢があれば、社員も、本心を語りやすくなり、より自律的、主体的に取組むきっかけになると感じます。ひいては、職場のコミュニケーションや組織の活性化につながると期待したいです。

これまで、私自身の経験やキャリアカウンセリングの理論も踏まえ、考えを述べさせて頂きました。何か一つでも、経営の参考になれば幸いです。皆さんの会社が、生き生きと活力溢れる会社であることを切に願っております。

*1 システマティック・アプローチ:キャリアカウンセラーが、相談者の話を傾聴し信頼関係を築くことにより、問題を把握・共有し、解決に向けた目標設定や具体的な方策を実行するプロセス

著者プロフィール

岡村 力(岡村経営事務所)

中小企業診断士 2級キャリアコンサルティング技能士
専門分野:中小企業に対する①人材育成の仕組み作り、労務管理・雇用管理に関すること、②起業・創業の支援(外国人経営者向けセミナーにも注力)、③補助金・助成金申請に関する経営戦略の策定支援等。求職者に関しては、主に学生の就活支援、企業管理職の面談力向上支援等。

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