人材が定着・活躍するための「対話」 5つのポイントとは?
新たな人材の採用が難しい昨今、人材の流出は大きな経営リスクです。実際に人手不足が原因で倒産するケースも少なくありません。在籍している人材の流出を防ぎ、長く、生き生きと働いてもらうためには「対話」が有効です。今回はすぐに実践できる対話のポイントをご紹介します。
(掲載日 2026/02/26)

人材の定着は「対話」がカギを握る
「スタッフがすぐ辞めてしまう。」
多くの社長が抱える悩みです。
スタッフが辞めずに定着するために、経営者は何を意識すればよいのでしょうか?
「人材の定着」となると、福利厚生や評価制度を考えがちになります。どちらも大事な要素ではあるのですが、まず先にスタッフとのコミュニケーションについて考えておきたいです。対話不足では福利厚生の良さも伝わりづらく、評価制度も形だけの制度となりかねません。
私自身、経営者としてスタッフと向き合っていた時期があります。相手を励ますつもりの一言が、実は相手を追い込むことになっていた。社員が辞めるときにそう気づいた経験があります。
コミュニケーションは難しい。でも、とても大事なことです。
ここでは「対話」という視点で、今からすぐにでも実践できる内容をご紹介します。
実践①:採用時に必ず会社の求めることを伝える
採用する際には、会社がスタッフに求めることを事前に伝えておくことが大事です。応募者自身にも会社に対して求めていることや、理想、イメージがあります。会社が求めていることを事前に伝えておかないと、入社してから「こんなはずではなかった」「聞いてないよ」となります。
これは離職の大きな要因のひとつです。

実践②:「1 on 1」ミーティングを始めよう!(「形」を整える)
スタッフの入社後にいかに定着してもらえるか。まずは、「1 on 1」ミーティングという「形」を整えていきます。「1 on 1」ミーティングとは
「1 on 1」ミーティングは、1対1の対話でスタッフの考えていることや悩んでいることを確認する場です。キャリアやスキルアップについて話し合うことで、成長意欲を引き出し、成長している実感を持たせることができます。これが仕事へのモチベーションを高め、結果として定着率向上にも寄与します。
1対1という空間で話をするため、スタッフが自分の意見を率直に話せる場を確保できます。不安や不満を早期に把握し解消することで、会社への信頼感が高まり、離職の防止にもつながります。
進め方
「1 on 1」では、『過去 → 現在 → 未来』の流れを意識して、スタッフの価値観やキャリアの方向性を把握していくことがおすすめです。たとえば、このような質問をします:
・過去:「今までの仕事で楽しかったことは何かな?」
・現在:「どんなスキルを伸ばしたいの?」
・未来:「3年後はどんな仕事をしていたい?」
初回は『過去』に焦点を当てます。過去を振り返ることで、現在の自分に納得感を持つことができます。「自分はこれまでにこういった経験を積んだからこそ、今ここにいるんだ」と理解できると、未来への自信にもつながります。
2回目以降は『現在 → 未来』に焦点を当てながら、スタッフがどう成長できるかを一緒に考えていくといいでしょう。
頻度
無理なくできることが一番。毎月1回、10分程度で構いません。定期的に継続させていくことが大切です。あらかじめスケジュールに入れておくことをおすすめします。実践③:「1 on 1」の「あり方」を整える
「形」を整えていく中で、「あり方」(どうスタッフと向き合うか)も意識していきます。「聴いてもらえている」という感覚
「1 on 1」の目的は、スタッフが普段から考えていることや悩んでいることを確認し、どう成長をサポートできるかを一緒に探っていくことです。こちらが話したいことより、スタッフの目標を確認することや不安を聞き取ることを優先します。心がけたいことは「傾聴」です。傾聴とは、相手の話にじっくり耳を傾けることであり、相手にとっては「話を聴いてもらえている」という感覚を持ってもらうということです。
傾聴で意識したい3つのポイント
(1)聴く体勢を意識する体ごと相手に向けて話を聴く体勢を作ることで、スタッフの心の開き方も変わってきます。
(2)適度に質問を挟む
相手の話を促すためには、適度に質問を挟むと効果的です。
(3)相手の発した言葉を返す
相手の発した言葉を返すことも有効です。毎回返す必要はありません。たまに返すだけで十分です。

実践④:価値観を共有する
スタッフの言葉にじっくり耳を傾け、必要に応じてアドバイスをしていくことで、次第に相手の心は開き、信頼関係も強くなっていきます。ただし、これだけでスタッフが定着するわけではありません。ここで大事になることは、スタッフの価値観と会社の価値観との間にズレがないかどうかです。価値観にズレがある場合、それを放置しておくとスタッフの不満へと繋がっていく恐れがあります。
たとえば、成長意欲が強いスタッフがいます。会社が成長機会の場を提供できていればスタッフのモチベーションは維持できます。しかし、そういった成長機会を提供できていないと、スタッフは次第にモチベーションが下がり成長できる職場を探すようになります。逆に、スタッフが安定を求めているのに会社がどんどん新しいことに挑戦させようとすると、スタッフにとっては負担になり不安やストレスの原因になります。
こういったズレを解消するために、「1 on 1」の場を活かしたい。価値観のズレを解消し、会社とスタッフの方向性をすり合わせることは、有効な「定着」策になるのです。
実践⑤:「心理的安全性」のある組織文化をつくる
「1 on 1」で対話ができるようになったら、心理的安全性のある組織づくりに取り組んでいきたいです。「心理的安全性」とは
心理的安全性とは、「率直に発言したり懸念や疑問やアイデアを話したりすることによる対人関係のリスクを、人々が安心して取れる環境のこと」*1です。現在のように経営環境が厳しい中では、多様な意見をぶつけ合いながら新しいことに果敢に挑戦していくことが欠かせません。組織に心理的安全性があると、新しい視点からの意見も出てきますし、少しの失敗は挑戦の証として許容できるようになります。
*1 …参考文献:『恐れのない組織』エイミー・C・エドモンドソン著. 野津智子訳.英治出版, 2021年, p.49.
心理的安全性を意識したミーティング
人は誰でも他者との軋轢を回避しようとする傾向があります。たとえ組織、顧客、自分にとって重要なことであったとしても、意見を言わずに黙っていることも多い。組織の中では、私自身もそうでした。まずは「1 on 1」ミーティングの中で、「聴いてもらえている」という感覚を相手に持ってもらう接し方をすることです。そして、複数人のミーティングでは、リーダーが率先して心理的安全性のある場を作っていきましょう。スタッフの意見に耳を傾ける、失敗を叱るのではなく前向きに捉え次の策を練る、意見が出なければ「どう感じたかな?」と問いを投げる。
心理的安全性のある組織文化になれば、スタッフは自分の居場所ができます。私の支援している事業者では、心理的安全性の高まりとともにスタッフの離職率が劇的に下がり、スタッフが生き生きと働ける環境になりました。
ぜひ、心理的安全性のある組織づくりを目指していきましょう!

まとめ
人材の定着には「対話」が鍵となります。会社の規模に関わらず今すぐ実践できる内容として、「1 on 1」ミーティングを中心に5つをご紹介しました。「1 on 1」はあくまでも手段のひとつです。何よりも大事なことは、日々の職場環境の中でどうスタッフと対話を重ねていけるかです。
対話を重視した組織づくりをしてみませんか。
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