助成金・補助金等、経営力UPの経営情報が満載!

オンライン経営力自己診断

経営診断・分析事例
会員登録すると、
新規会員登録はこちら
お気に入りに追加 シェアツイートLINEはてぶ

事業承継後の飛躍に向けた経営者の挑戦

企業名:yts株式会社  取材先ご担当者様:代表取締役:大井宏之氏

インフラ向けサービスを軸に社会に貢献する企業になるために

メンテナンス業は業務内容が多岐にわたる。一口に産業機械といっても、水を送るものや空気を送るもの等、様々な種類があり、それぞれでメンテナンスの方法は異なる。作業員の技術知識にも偏りが…

企業概要

yts株式会社(代表取締役:大井宏之氏)は、東京の下町、荒川区南千住で創立70年を迎える老舗である。『お客様の立場に立って考える』を基本理念に、ポンプをはじめとした設備機械全般のメンテナンス事業を手掛けている。取引先は、空港、病院、学校、ビル等様々なインフラに対応し、リピート率は90%を超え顧客評価も高い。
現在の社長である3代目の大井氏は、2020年に先代から事業承継し、企業価値向上に向けて陣頭指揮をとっている。これまでの職人気質が支配する会社から、サービスを軸に社会に貢献する会社に変わるために挑戦を続けている。

企業の悩み

大井氏は、社長就任前から職人の意識をお客様に向けるように働きかけてきたという。従業員の意識改革だけでなく、新入社員の採用等の環境整備も行ってきたが、お客様のことを考えたサービスが徹底できていなかった。
そんな中、2020年に先代から事業承継することになり、中小企業大学校での研修を受ける等して会社経営を学んだが、今後に向けた具体的な施策のアイデアがなく模索していた。その課題を解決するために、大学校の講師から紹介を受け、本プロジェクトの利用を申し込むこととなった。

導き出された課題

経営診断には経験豊富な専門家が携わった。たわい無い会話でさえも、貴重で有効だったという。自分が持っていない観点・角度から表現力豊かな話を聞いて、心から納得することができた。新たな知見のインプットにとどまらず、コーチングのように内発的にアイディアが引き出され、考えが磨かれていった。
経営診断の過程で、新たな問題も浮かび上がってきた。それは社員の技術力のばらつきを適切に評価できていないことだった。メンテナンス業は業務内容が多岐にわたる。たとえば、一口に産業機械といっても、水を送るものや空気を送るもの等、様々な種類があり、それぞれでメンテナンスの方法は異なる。担当する顧客によっては装置が偏る場合があり、作業員の技術知識に偏りが見られていたが、それを定量的に評価する手段がなかった。販路拡大によりエンドユーザへの対応が増えてくると、水を送るポンプだけではなく設備全般に対応する機会も増え、視野を広く持っていないとお客様の役に立つ仕事はできない。
また、これまでは現場作業員がお客様への営業も行っていたが、作業のついでに行うような営業で、体系的な営業体制が整っていないこともわかってきた。

提案された解決策

続いて行われたアシストコースの支援では、「戦略マップ」という形で課題を可視化し、教育面・作業面・営業面に分けて施策が検討された。
教育面では、社内での認定試験を充実させ、社員のお客様対応レベルを明確にクラス分けできるようにした。また社内研修を効率化するために、月1回の頻度で社内研修日を設けた。従来は社員が現場から戻った後の研修で、必ずしも全員が参加できるわけではなかったため、効率的でなかった。研修に専念する日を設定したことで、疲れもなく効率的に実施できるようになった。当初、「研修のために丸一日通常業務ができないと、売上に響くのではないか」と意見も出たが、「5年後、10年後の会社の将来を考えた時に、研修をしっかりとやらないといけない」と説得した。カリキュラムは、サービス研修のほか、機械基礎、安全教育、接客マナー等、管理職と協力して計画している。
作業面では、作業品質のばらつきを抑えるために、現場での作業時にタブレットで見られる作業補助データベースの構築を図った。技術・知識の見える化を行うことで、経験の浅い作業員の知識を補い、現場で判断しやすくなるような効果を期待している。
営業面では、専門家から多くの事例や成功例を吸収し、営業のイロハや営業マンの社内育成の方法を学んだ。さらに、「顧客理解」を営業における最重要テーマとし、ヒアリングシートを作成して、お客様の困りごとを解決できるような営業体制の構築を図っている。ブランド力の源泉は、実際に現場で作業する社員であるため、そのサービス品質を上げることに尽力している。

提案した中小企業支援施策

その後の状況

現在、業務改善にむけて施策を実行しており、着実に成果が出ている。ある現場では、水を送るポンプをメインに請け負っており、新たな受注も欲しかったが、自社からの売り込みはできていなかった。そこで、作業員としてではなく、お客様に寄り添ったサービスマンとしての会話を意識するようになって、お客様のニーズをつかみ、水ポンプ以外の業務の定期的な受注につながった。
このような施策によって、コロナ下で様々な業種の企業が苦戦する中でも新たな受注を増やし、売上が落ち込むことなく推移している。今後も経済の不透明な状況が続く可能性はあるが、理想とする経営を実現するために、社員と一丸となった経営者の挑戦は続く。

企業様の声

今回のアシストコースでは、専門家と質の高い会話ができたことが、とても良い財産になりました。多くの気づきを得られ、自信にもつながりました。
メンテナンス業は労働集約型業務であり、規模拡大にあわせて人数を増やすことになりがちです。当社では工程を見直して人員の配置を工夫し、チーム数を増やしたりして人員不足を工面しています。緊急の依頼にも迅速に動けるように心がけていますが、お客様の期待に応えるために、社員への還元も充実させてモチベーションを保ち、サービスの質を上げていきたいです。
また、将来に向けてデジタル化を促進したいですね。今はヒアリングシートやエクセルでのデータベース構築等を行っていますが、最新の技術も考慮しながら、人手不足に対応できるような施策を考えていきたいです。
(代表取締役:大井宏之氏)

経営指導員の声

「質の高い会話ができた」と仰っていた大井様の言葉が印象的でした。経営診断で洗い出された複数の課題は、相互の関連性や取り組みの優先順位が複雑になりがちです。本支援では、大井氏と専門家が会話を行う中で明確になった課題や実行策を、「戦略マップ」に落とし込んで整理しています。これにより、複数の課題が全社課題のどこに位置付けられているか明確になり、改善の取り組みの目的も明確になるという効果があったのではないでしょうか。今後も「質の高い会話」ができる相手として、伴走支援ができればと考えております。
(担当経営指導員:武田宗太郎氏)

企業情報

企業名 yts株式会社
代表者 代表取締役:大井宏之氏
創業年 1951年
業種 サービス業(産業機械の修理・メンテナンス、衛生設備、空調設備の改修工事、技術コンサルティング)
所在地 東京都荒川区南千住2-15-7
事業PR
URL https://www.yamagishi-ts.co.jp


中小企業診断士 齋藤宏晃

一覧ページに戻る

< 経営診断・分析事例TOP

pagetop