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酪農・乳製品製造業の次世代に向けたステップアップを後押し

企業名:株式会社大島牛乳  取材先ご担当者様:代表取締役社長:白井嘉則氏

“どんぶり勘定”から脱却しPDCAを回す組織体制へ

人口減少に対応していくためには新商品が必要と考え、「さけるチーズ」の試作に着手したが、商品開発と販路開拓のノウハウを自社で賄うには不安を抱えていた。商品開発と販売戦略について支援を受けたいと考えていたところ・・・

企業概要

株式会社大島牛乳(代表取締役社長:白井嘉則氏)は、島内でホルスタインを飼育し、自社工場で牛乳・バター・アイスクリームを製造している。大島ではかつて酪農が盛んであったが徐々に衰退に向かった。以前は数件の農家が乳牛を育成し、他社が牛乳やバターを製造していたが、その会社が2007年に工場を閉鎖した。同年、生乳を使用する「牛乳煎餅」の製造者や学校給食に大島牛乳を利用する栄養士等、町民からの強い要望に応え、有志6名が当社を設立した。「大島の酪農を終わらせてはいけない」という思いで、牛乳やバターを製造し給食等を続けるためであった。
当社の牛乳は摂氏75度・20分の高温保持殺菌を採用し、豊かな風味が特長である。島内の小中学校の給食には当社の牛乳が採用されている。当社のバターやアイスクリームは島内のホテルや民宿、土産物店等で幅広く取り扱われ、地域の特産品としてふるさと納税の返礼品にも選ばれている。

企業の悩み

代表の白井氏は、長年大島での牛乳づくりに関わってきた。大島町の人口は過去20年で23%減少しており、向こう30年でさらに28%減少すると予測されている(国立社会保障・人口問題研究所「将来推計人口」より)。人口減少により牛乳の需要は減少していくと予想され、特に子どもの数に比例する学校給食の需要減少は当社に深刻な影響を与える。
白井氏は、人口減少に対応していくためには新商品が必要と考え、「さけるチーズ」の試作に着手したが、商品開発と販路開拓のノウハウを自社で賄うには不安を抱えていた。商品開発と販売戦略について支援を受けたい、またこの機会に経営全般について第三者からアドバイスを受けてみたいと考えていたところ、以前から夏祭り等でつながりのあった大島町商工会より、専門家から客観的な経営分析と課題解決の支援を受けられる本プロジェクトを紹介され、利用することにした。

導き出された課題

経営分析の結果、指摘された主な課題は、①事業計画の策定、②経営管理の改善、③人材の育成である。①事業計画の策定については、会社の進むべき方向を明らかにし、新商品の開発については価格設定や販路の選択等の戦略を立てて計画的に進める必要があるとされた。②経営管理の改善については、従来の経営がいわば成り行きで行われており、売上高や費用等のデータを分析したうえで、きめ細かくPDCAを回していくことが必要とされた。③人材の育成については、白井氏の後継者となる右腕的な人材がまだおらず、組織的な運営を可能にするメンバーの育成が必要とされた。

提案された解決策

アシストコースでは、専門家が毎回詳細でわかりやすい資料を準備してミーティングを実施し、段階を踏みながら当社についての現状把握と進むべき方向の検討が進められている。当社では、分析に使用できる各種のデータは揃っていたものの、それらを活用した実際の分析と経営改善には至っていなかった。今回、専門家が入り、月ごとの商品別売上高、各種の費用と営業利益率の関連、売上高と製造労務費の関連等、着眼点とデータを活用した分析結果を提供したうえで、白井氏の思いを酌み取りながら一緒に検討することで、当社の進むべき方向と改善すべきポイントが明確になっていった。
売上高については、牛乳は夏場の落ち込みが大きいため、原因究明と対策の立案を行うことになった。同時期に売上高の過半を占めるアイスクリームは、さらなる拡販施策を検討することとした。費用については、売上高と労務費が連動していない月があり、何の業務にどれだけ工数を費やしているかを把握したうえで、高利益率商品に重点的に工数を投入することになった。人材育成については、若手の人材も巻き込んでブレーンストーミング等を行い、商品開発や販促のアイデアを引き出して、経営への参画を促すことにした。

提案した中小企業支援施策

その後の状況

今回の取材は2024年12月に行われた。年明け以降、年内に検討した内容を振り返って運営・財務等の各分野の目標と実施内容を固めるとともに、新商品についても価格設定、販路の選定、プロモーション施策の検討等を行う予定である。最終回では当社の中期経営計画をまとめ、初年度の実施項目とスケジュールを確定させる予定である。
白井氏は、「当社を何とかしなければとは思いつつ、具体的な改善には踏み込めていませんでした。今回の支援によって、進むべき方向を明確にすることができ、それを共有したうえで従業員と一丸となって進んでいく見通しができました」と語る。
ミーティングには白井氏に加えて、若手ながら乳製品製造を統括しチーズ製造の勉強もしている工場長の山下氏も同席し、今回の支援が右腕人材の育成にもつながっている。

企業様の声

大島から酪農をなくしてはいけないという使命感を持って、長年にわたり当社に関わってきたのですが、正直なところ経営が“どんぶり勘定”になっていると自覚していました。今回、第三者である専門家に教えていただいた、時間当たりの生産性、客先別の利益率といった様々な視点からたくさんの気づきが得られ、頭の中の整理ができるとともに、「変わらなきゃ!」という思いが強まりました。自分の後を任せる若手のスタッフに参画してもらえたことも大きいです。
今後は、地域で担っている学校給食の牛乳提供を継続するとともに、従業員のアイデアを活かしながら創意工夫を行っていくことで、人口が減少しても継続・発展していける強い企業を目指していきます。
(代表取締役社長:白井嘉則氏)

支援者の声

株式会社大島牛乳様は、島で唯一の乳製品製造業であり、学校給食の牛乳はもちろん、ホテルや民宿における食事やデザート、土産物の焼き菓子「牛乳煎餅」の製造等にも欠かせない、大島にとって大切な企業です。これまでも、経営理念の策定等でご支援させていただきましたが、今回は新商品についてご相談を受けたことをきっかけに、本プロジェクトでのご支援が始まりました。
島の人口が大幅に減少することが予想される中、それをカバーできるような事業展開を行うことが求められています。新商品開発や販路確保は容易なことではありませんので、大島牛乳様のチャレンジが実を結ぶよう、適宜専門家と連携しながら今後も継続的にご支援して参ります。
(大島町商工会:黒木真由羅氏)

企業情報

企業名 株式会社大島牛乳
代表者 代表取締役社長:白井嘉則氏
創業年 2007
業種 製造業(酪農、牛乳・バター・アイスクリームの製造)
所在地 東京都大島町岡田新開87-1
事業PR
URL https://x.com/oshimagyunyu


中小企業診断士 松林栄一

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