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コンセプトは「自分が20 代の時に泊まりたい宿」

企業名:ゲストハウスシヨウゴロ  取材先ご担当者様:代表:小林正吾郎氏

島外から移住した経営者が“新しい風”を吹かせる

神津島はダイビングやトレッキングといったレジャーで人気があり、来島客はゴールデンウィークと夏休みに集中する。当宿も例外ではなく、繁忙期に年間売上の大半を確保する状況であったが…

企業概要

ゲストハウスシヨウゴロ(代表:小林正吾郎氏)は、島の玄関口である神津島港から徒歩約5分、透き通る青い海と白い砂浜の対比が印象的な前浜海岸からほど近くに立地する。
小林氏は、東京都区内で生まれ育ち、ダイビングインストラクターや家業の後継者を経て、地域おこし協力隊として委嘱を受けて神津島に移住した。「いずれは何か事業を立ち上げたい」という思いを持っていた小林氏は、島の豊かな自然と人の温かさに触れる中で、当地で創業する決意を固めた。そして、若い人が気軽に泊まれる宿が少ないことに着目し、「自分が20代の時に泊まりたい宿」をコンセプトとして、食事を提供しないゲストハウス形態の宿を開業した。
2018年の開業以来、主にゲストハウス形態の宿を好む若い顧客層から、清潔感があり女性専用室も備えるドミトリー、調理器具の充実したキッチン等の設備と、小林氏の温かみのある接客が高評価を得ており、順調に客数を伸ばしている。

企業の悩み

神津島はダイビングやトレッキングといったレジャーで人気があり、来島客はゴールデンウィークと夏休みに集中する。当宿も例外ではなく、繁忙期は満室で機会損失が発生する一方で、閑散期は利用率が低く、繁忙期に年間売上の大半を確保する状況であった。
「星空ガイド」の資格を取得していた小林氏は、閑散期の客数増加に向けて、神津島が日本で2番目の「星空保護区」に認定されたことに着目し、星空観察をメニューに加えようと考えた。さらに、天候不良時でも楽しめるプラネタリウム投影機を備えた宿泊棟増設を思い立ち、実現に向けて、新たに創設された事業再構築補助金を申請した。一方で、宿を一人で切り盛りする中で、今後どうしていくべきかと思い悩み、明確な答えが出ないことも多かった。
そこで、以前からアドバイスを受けていた神津島村商工会に相談したところ、本プロジェクトの利用を勧められた。アシストコースによる支援を視野に入れ、まずは経営診断を受診することとなった。

導き出された課題

経営戦略策定や販売促進に明るい専門家が選定され、経営診断を行った。優先的課題として次の2点が抽出された。
①事業計画の立案
宿泊棟増設後の運営のしかたや集客等について、小林氏の頭の中に既に大枠のイメージはあったものの、それらがまだ十分に整理されていない状態であった。そのため、目標と時期ごとにすべきことを明確化した体系的な事業計画を立てることが必要とされた。
②閑散期の集客増に向けた戦略の具体化
星空観察とプラネタリウムは、閑散期に来島して当宿を利用する目的と意味を創り出すうえで素晴らしい発想ではあるものの、ターゲットや魅力の伝え方等、さらに煮詰める必要があるとされた。他にも、閑散期に利用してもらえる顧客層の掘り起こし、客単価の増加等も検討するようアドバイスされた。

提案された解決策

引き続き、アシストコースを活用して、同じ専門家が事業計画の策定と実行の支援を担当することになった。概ね月1回のペースで協議の場を設け、上記の課題①②について、小林氏の思いを客観的な視点から言葉と数字に落とし込んで、方向性と施策を煮詰めていった。
小林氏の思いを尊重し、客室数とスタッフ数を増やして繁忙期の需要を最大限取り込むのではなく、一人で回せる範囲で収益性を高める方向で、需要を平準化した「通年で宿泊客が途切れない宿」、宿泊料金は値上げせず「低料金で気軽に泊まれる宿」を目指す姿とした。
星空観察とプラネタリウムについては、完全な閑散期に新しいイベントを企画する、現在の繁忙期の前後を伸ばす方向で使う等、様々な方向性を検討した。プラネタリウム投影機を備えた宿泊棟増設については、6月に事業再構築補助金に採択されたものの、その後事務局から何度も修正を指示され、対応に苦慮していた。ここでも専門家からアドバイスを得て乗り切り、9月に交付決定を得て、建物の改装開始と投影機の発注に至った。
また、繁忙期の来訪客を閑散期にずらして需要を平準化させる点や、連泊を増やして客単価を増加させる点についても、ターゲット・仕組みづくり・アプローチを協議した。

提案した中小企業支援施策

その後の状況

アシストコース第5回の支援を完了した段階で、事業計画書を完成させることができた。この計画書では、3年後の目指す姿、重点課題と解決に向けて今後実行していく内容が可視化され、定量的な目標といかにして現状との差を埋めていくかも明確になった。
2021年12月現在、プラネタリウム投影機設置予定の宿泊棟の改装は完了しているが、投影機が半導体不足等の影響で未納となっている。納品後に本格稼働できるよう、サービス内容やオペレーションを煮詰めている。
他にも、閑散期の集客について、リモート授業の大学生が対象の「スタディケーション」、民宿では難しい「釣った魚を自分で捌きたい」というニーズに応える釣り人向けのプラン、若者や中年以上の女性ペア・グループ用のトレッキング向けプラン等を企画し、一部は試行も開始して可能性を探っている。客単価の増加については、平均宿泊日数を増やしてもらうべく、連泊割引等を検討中である。
今後は、リピーターをさらに増やすため、スマートフォンで気軽に回答できる顧客アンケートを実施し、今まで旅行サイトの口コミで漠然とは掴んでいた顧客満足度をよりきめ細かく把握したうえで、精度の高い企画と広告宣伝を行っていく予定である。

企業様の声

今回専門家の支援を受ける前は、様々なアイデアはあったものの、自問自答してもなかなか考えがまとまらず、自分一人で延々と“壁打ち”しているような感覚でした。一連の支援を通じて、自分が思っていることが可視化され、今後の目標とやるべきことが明確になりました。
神津島が日本で2番目の「星空保護区」であることは、まだ広くは知られていませんが、貴重な観光資源として活用していきたいです。他の観光資源の活用を含め、観光協会や他の事業者とも協力して島全体で取り組んでいくことで、島外からやってきた自分を快く迎え入れてくれた神津島の活性化のためにお役に立ちたいです。
(代表:小林正吾郎氏)

経営指導員の声

小林様が地域おこし協力隊として神津島で観光協会の仕事をなさったご縁で知り合い、ゲストハウスへの建物改装に必要な創業融資に始まって、開業後も継続的にご支援させていただいています。
小林様は島外から来られたがゆえに、神津島の良い点も悪い点もよく見えておられると感じます。今まで島にはなかった考えや感覚を存分に発揮され、神津島に“新しい風”を吹かせていただくことを祈念しております。
2022年以降、星空観察とプラネタリウム、閑散期の集客に向けたプロモーション等、新たな取り組みが本格化していく見通しです。それらを上手く軌道に乗せられるように、これからもご支援させていただきます。
(神津島村商工会:土谷良顕氏)

企業情報

企業名 ゲストハウスシヨウゴロ
代表者 代表:小林正吾郎氏
創業年 2018年
業種 サービス業(ゲストハウス)
所在地 東京都神津島村124
事業PR
URL https://shiyougoro.com/


中小企業診断士 松林栄一

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