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新島ならではの焼酎で島外へ進出

企業名:株式会社宮原  取材先ご担当者様:代表取締役: 宮原淳氏

計画的な販路開拓活動でブランド力向上をめざす

足繁く各地の卸売業者や小売店を回るなど、粘り強く販路開拓を続けてきたことにより、今では都内を中心に30店以上の酒店で『嶋自慢』が取り扱われている。しかし、出荷量は期待したほどには伸びていなかったが…

企業概要

株式会社宮原(代表取締役:宮原淳氏)は、新島で90年以上続く老舗企業であり、現在は3つの事業を営んでいる。起業時から続く酒店では、ビールなどを含む飲料全般や生活雑貨を販売している。昭和40年頃に起業したガソリンスタンドは、島の交通を支えるインフラの一翼を担っている。もう1 つの柱である酒造業は、戦後に清酒200本の製造免許を取得したことに始まり、やがて焼酎の製造に軸足を移して現在に至る。

現社長の宮原氏は、起業者から数えて3代目にあたる。東京農業大学で醸造を学んだ後に当社に入社し、先代の急逝により15年前に代表取締役に就任した。社業のみならず、地元商工会の副会長を務めるなど、新島の経済活性化にも尽力している。

企業の悩み

もともと新島は伊豆大島や八丈島よりも人口が少なかったのに加え、近年は人口減少に拍車がかかっている。今のところ、当社の酒店とガソリンスタンドは比較的経営が安定しているが、将来的に島内の経済規模が縮小することは避けられそうにない。宮原氏は、今後の成長には島外に打って出ることが不可欠と考え、従来は島内消費がメインであった自社製の焼酎『嶋自慢』の製造量を増やし、島外でも販売する取り組みを続けてきた。

設備面については、社屋の一角で行っていた醸造などの製造プロセスを、新設した自社工場に移し、「ものづくり補助金」を活用して新型の蒸留器を導入。製造工程の複雑な焼酎を、多様なラインナップで量産する体制を整えてきた。

一方、販路については、足繁く各地の卸売業者や小売店を回るなど、粘り強く販路開拓を続けてきたことにより、今では都内を中心に30店以上の酒店で『嶋自慢』が取り扱われている。しかし、出荷量は期待したほどには伸びていなかった。

宮原氏が当社焼酎の販売拡大を加速するための作戦を考えていたところ、以前より補助金申請などでサポートを受けていた商工会の経営指導員から、本プロジェクトの経営診断を紹介された。一度、第三者である専門家の視点からアドバイスを受けるのも良いかもしれないと思い、経営診断を利用するに至った。

導き出された課題

チェックシートの内容を踏まえて、販路開拓に豊富な知見を持つ中小企業診断士が経営診断を実施し、現状と課題の整理を行なった。

経営診断の結果、自社ブランド焼酎の製造販売を重点的に行うという判断は妥当であるが、クリアしなければならない課題も多いことが示された。具体的には、①経営者の頭の中にある事業プランを「見える化」すること、②競合品との差別化ポイントを明確にしたうえでプロモーションを行うこと、③各事業を効率よく運営していくための組織強化の3 点である。

宮原氏は、薄々気づいてはいたが、第三者である専門家から改めて指摘されたことにより、一度全体像を整理し直し、順序立てて事業を進める必要性を再認識したという。

提案した中小企業支援施策

当社の希望により、成長アシストコースを利用して、専門家から具体的なアドバイスを受けながら、上記の課題解決に向けて取り組んでいくことになった。

専門家からは、販路開拓のためにはブランディングにより島のハンデを乗り越える必要があり、ラグビーワールドカップ2019、東京2020オリンピック・パラリンピックなど、人が多く集まる機会を控えて、東京圏で知名度を高めることが有効であるというアドバイスがなされた。宮原氏もこの点に納得し、専門家と一緒に、取り組みの優先順位の整理と計画づくりを進めていった。

当社には、新島村に伝わる希少なサツマイモである「あめりか芋」を使った焼酎、麦麹まで新島産の原料を使った「100%新島産」の焼酎など、特徴的な商品がある。しかし、客観的に見ると、一部のマニア以外は「新島産、それで?」という反応になりやすい。ブランド力向上のためには、当社の焼酎の魅力を明確にしたうえで、製造→流通→小売店・飲食店→一般顧客の流れの中で「適切な相手に、適切な方法で伝える」ことが欠かせない。支援の中では、この点に重きを置いて、当社商品の個性を明確にしたうえで、ブランド紹介のパンフレットを整えるなど、反復・継続的なプロモーションの基盤を整備していった。あわせて、どのような場で誰に訴求するのが効果的かを検討し、優先順位をつけながら、展示会などのイベントでPR を行うことになった。

その後の状況

専門家のアドバイスを受けながら、着々と準備を進め、2018年1月には日本百貨店(秋葉原)にコーナーを開設。他にも、東京都島しょ部で焼酎を造る蔵元の集まり「東京七島酒造組合」が連携して行う「東京島酒」のプロモーション(丸の内KITTE)などのイベントに積極的に参加することで、『嶋自慢』のPR に努めている。

今後も、今回の支援で策定した事業計画をもとに、優先順位を付けて様々なプロモーションを行うことにより、さらなる知名度向上が期待される。

企業様の声

今回支援していただいて大きかったのは、自分の頭の中にあるものを一回きちんと整理できたことです。これまで様々な取り組みを行ってきましたが、一度全体像を整理し、年や季節ごとにやるべきことを可視化できました。策定した計画をもとに、効果的なプロモーションを行って、当社ブランドの知名度を向上させていきたいです。

島で作った商品を島外へ販売するためには、輸送コストというハンデがあります。この点、製造業では、移出産品の価格を抑えるための補助金が農業・漁業ほど充実していません。当社でももちろん、商品の魅力を高め、価格以外のメリットを発信する努力はしますが、島の製造業についても支援策を充実していただけるとありがたいです。

経営指導員の声

宮原社長には長年、商工会の様々な活動にご協力をいただいています。「島に若い人が働く場所を増やし、活性化に貢献する」というビジョンに共感し、以前より資金調達、経営革新計画の承認、各種補助金の申請などをお手伝いしてきました。

今回の支援をきっかけとして、オンリーワンの「あめりか芋」焼酎など、独自の魅力ある商品について島外でのプロモーションを強化し、当社ブランドが浸透していくことを期待しています。
(新島村商工会:下井勝博氏)

企業情報

企業名 株式会社宮原
代表者 宮原淳
創業年 1926
業種 製造業・小売業(焼酎の製造販売、他)
所在地 東京都新島村本村1-1-5
事業PR
URL https://shimajiman.com/


中小企業診断士 松林栄一

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