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経営革新を続ける地酒専門店『籠屋』 ~後継者の夢に向かって一歩踏み出す~

企業名:有限会社秋元酒店  取材先ご担当者様:代表取締役 秋元 賢 様

経営革新を続ける地酒専門店『籠屋』 ~後継者の夢に向かって一歩踏み出す~

長い間一般消費者や飲食店等への酒類販売を本業としてきた当社にとって、ビール・発泡酒の醸造やレストラン経営は全く未知の領域である。後継者の夢に向かって、何からどのように手を付けていけばよいのか?

企業概要

 有限会社秋元酒店(取締役:秋元 賢社長)は、「籠屋」の商号で知られる老舗の酒店である。かつて主要街道であった青山道に面するこの地は、すぐ近くに多摩川の渡しがあり、鮎漁が盛んであった。「籠屋」の名は、明治35年に初代がこの地で鮎漁などに用いる籠を製造・販売する事業を始めたことに由来する。大正3年に祖父が店舗を改装した頃から、籠屋としての事業以外に、街道沿いの旦那衆などに店頭で日本酒を飲ませるようになり、当店と酒との関係が深まっていった。

 現社長である秋元賢氏が18歳で入店した頃、先代は経営を酒屋専業にシフトしており、高度成長期にあって、特にビールの販売が好調であった。やがて、道幅の広い新道が別にできると、人や車の流れはそちらへ移行してしまい、近隣は急速に寂れていった。周囲が閑静な住宅街になっていく中、ここで商売を続けていくにはどうしたらよいか?と自問してたどり着いたのは、自分が心から売りたいと思う日本酒を、自ら汗をかいて売ることだ。

 平成5年に始め、取材時点で127回を数える「狛江でおいしい地酒を楽しむ会」では、全国の蔵元から取り寄せた味わい深い日本酒を、会費制で来場者に提供し続けている。この会や日常の営業の中で、当店のファンになったお客様から日本酒に関する情報がもたらされ、社長自ら各地の蔵元へ足を運んで、取扱交渉をすることも多い。定評に安住せず、よりこだわりのある品揃え、訴求力のある陳列、後継者や若手従業員への権限移譲などの経営革新を続けてきた当店は、今では後継者の慈一氏がセレクトするワイン等も加え、遠くからでもお客様に探して来ていただける酒店に成長している。

企業の悩み

 後継者の慈一氏は、大学で醸造を専攻し、最近では「ロバート・パーカー ワインテイスター認定プログラム」でテイスター検定資格も取得した本格派で、地域農業の振興を通じた地域活性化に大いなる関心を抱いてきた。既に、農業者と連携して、狛江市特産のえだまめで造った発泡酒「こまえ~る」を製品化・販売する等の実績を上げている。この「こまえ~る」の生産では原料を他県のビール工場へ送って醸造を委託しているが、将来は自社に醸造設備を備えて地域産品を用いたビールや発泡酒を生産し、近隣で生産された食材を用いた料理とともに提供するという、地産地消型のレストラン経営を夢見ている。

 とはいえ、長い間一般消費者や飲食店等への酒類販売を本業としてきた当社にとって、ビール・発泡酒の醸造やレストラン経営は全く未知の領域である。後継者の夢に向かって、何からどのように手を付けていけばよいのか?と考えあぐねて商工会へ相談したところ、道筋を考える一助として当事業の経営診断を利用することとなった。

導き出された課題

 中小企業診断士による企業診断の結果、夢を実現するためには段階的な取り組みが必要であり、計画を立てて進めていくようアドバイスがなされた。

 具体的には、1年目は建物建築許可の可能性を確認する、製品と最低製造量の見通しを付ける、臭気や汚水の対策について検討する、酒類製造免許の申請を準備する等であり、2年目は計画を近隣住民などにご説明し賛成いただくこと、商品形態の決定とそれに応じた設備の仮発注、試作品づくり、レストランに関するコンセプトやデザイン・メニュー等の検討、市内を中心とした販路候補先に対する呼びかけ等である。

 特に、昔と違って近隣が住宅地に変貌しており、地域に根ざした企業として発展していくためには近隣住民の納得が欠かせないため、事業説明会の開催や苦情窓口の明確化などを怠らないように勧められた。

提案した中小企業支援施策

 中小企業診断士からは以下の支援施策の紹介を受けた。商工会の経営指導員と相談した結果、一つひとつの課題が大きくかつ慎重に対処すべきものを含んでいるため、焦らずに進めていくこととなり、今後必要に応じて専門家の派遣によりサポートを受けていくこととなった。



エキスパートバンク(専門家派遣) 狛江市商工会(東京都商工会連合会)


 小規模事業者のニーズに合わせて、専門家が経営・営業・生産・技術など各種の課題解決に関する具体的、実践的な助言を行うことでサポートする事業。年度内に3回まで無料で専門家の支援を得られる。

その後の状況

 後継者の夢を具体的に実現する時期を2年後と措定し、企業診断の中で明らかになった必要な取り組み項目についてどのように進めていくかを検討しているところである。土地の用途変更や酒類製造免許の取得など、当社の一存で左右できない課題もあり、臭気や汚水の問題を起こさない醸造設備の設計など、専門業者の協力を仰ぎたい点もあるため、それらを一つずつ丁寧に解決していくことで、夢に近づいていこうとしている。

 また、既存事業については、引き続き品揃えにこだわり、ファン層の開拓を図り続けるとともに、BCP(事業継続計画)を意識しながら徐々に事業承継の準備を進めている。

企業様の声

 この何十年かで近隣の環境は劇的に変わり、当店はいつの間にか幹線道路から離れた立地になってしまいました。その中でどのように生き延びていくかを考え、品揃えにこだわった地酒専門店というポジションを指向して経営してきました。とはいえ、そのやり方に固執するつもりはありません。かつて自分がそうであったように、若い人にはやりたいことを積極的に責任を持ってやってもらい、達成感を得てほしいのです。後継者の夢についても、できる限りの応援をしたいと思っています。

 一方で、醸造設備の建設やレストラン経営についてはまだノウハウがなく、そもそも何と何をどういう順番でやればよいのか自体、皆目見当が付いていませんでした。ですので、商工会に今回の企業診断をお願いして本当によかったと思っています。やらなければいけないことをリストアップし、取り組む順番についてもアドバイスをいただきましたので、これを踏まえて後継者は一歩ずつ着実に夢に近づいていくことでしょう。これからも、必要な場面ではエキスパート派遣などで専門家にサポートいただけると心強いです。

企業情報

企業名 有限会社秋元酒店
代表者 秋元 賢
創業年 明治35年
業種 小売業(酒類・食料品)
所在地 東京都狛江市駒井町3-34-3
事業PR
URL http://www.houzan.com/

平成26年1月9日
松林 栄一

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