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賑わいを取り戻した新しい「瀬音の湯」

企業名:新四季創造株式会社  取材先ご担当者様:支配人:渡邉智宣氏

収益改善を実現するための組織改革と集客力向上戦略

満員の来場客で賑わっていた「瀬音の湯」であったが、コロナ禍に入ると温泉への来場者が極端に減り、施設経営の収支はプラスからマイナスに変わった。自力で事業の改善に取り組んでいたが、悩みを相談する機会は持てずにいたところ・・・

企業概要

新四季創造株式会社(代表取締役:中嶋博幸氏)はあきる野市にある温泉施設「秋川渓谷瀬音の湯」(支配人:渡邉智宣氏)を経営している。
浴槽からの大きな窓越しの風景は、春は新緑、夏は深緑、秋は紅葉、冬は雪景色で顧客を楽しませ、湯の香とヌルヌルと柔らかい湯触りが特徴の施設である。露天風呂やサウナを備えた近代的な造りで、木の椅子に木製風の桶と、昔ながらの温泉のように楽しめる浴場設備は多くのファンの心をつかんでいる。温泉以外にも秋川渓谷と深々とした山々に囲まれた眺望豊かなレストランでのお食事と、東京とは思えないほどの星空を満喫できるコテージでの宿泊が魅力である。レストランでは秋川のアユをはじめ、地元の食材をふんだんに使用した多彩なメニューの料理があり、直売所では地元の新鮮な朝採り野菜を中心とした特産品を販売する等、地域活性化に貢献している。

企業の悩み

満員の来場客で賑わっていた「瀬音の湯」であったが、コロナ禍に入ると温泉への来場者が極端に減り、施設経営の収支はプラスからマイナスに変わった。これまでの施設責任者(支配人)を含む前経営陣の多くは退職し、渡邉氏が新たな支配人として就任した。就任前から経営に対する責任が不明確で、財務管理を適切に行っておらず、利益を生み出す収益体質ではなかった。温泉部門は黒字であったが、飲食部門と宿泊部門が赤字の状態であった。しかし部門別の収支に着目することなく、コロナ禍になってからようやく収支の実態が判明した。パート従業員が現場に精通する一方、正社員は現場のことをわからない状況が長年続いていた。また従業員は発生した問題に対して場当たり的に動く受動的な姿勢で、積極的な集客策が実施されることもなく、顧客を喜ばせることや顧客ニーズに対する意識も低いものであった。
渡邉支配人は自力で事業の改善に取り組んでいたが、悩みを相談する機会は持てずにいたところ、あきる野商工会から専門家による経営分析を受けることができる本プロジェクトを紹介された。

導き出された課題

経営分析の結果、指摘された課題は、①経営目標の設定と事業計画の策定、②組織体制の改善、③
集客力向上の3点である。
これらの課題を解決するためには、各部門の収益性や従業員の行動を見える化したうえで、コストを意識した財務体質の改善、指揮命令系統が明確な組織づくりや顧客ニーズを踏まえた集客に取り組む必要がある。そのために、数値目標の浸透、全体最適になっていない組織体制の改善、生産性を高めるための従業員の意識改革や社員教育が求められる。また「瀬音の湯」が地域活性化の拠点となるべき施設であるにも関わらず、集客力が弱いため、従業員が顧客のリピートにつながるような顧客サービスに積極的に取り組むことも課題であった。渡邉氏は、これらの課題を解決するため、本プロジェクトのアシストコースを受け
ることにした。

提案された解決策

アシストコースを利用して、専門家から具体的なアドバイスを受けながら、問題解決に向けて取り組んだ。
まずは、会社としての売上目標や利益目標を根拠とともに全従業員に説明し、意識改革を行った。売上目標や利益目標から事業計画を立て、温泉部門、飲食部門および宿泊部門の事業ごとに、どのように経営していくか具体的な数値目標を考えさせた。その一つが、赤字であったレストラン事業の外部委託化である。委託化を実現すると売上は減少したが、家賃収入の確保が企業全体の収益改善に寄与した。また、適正水準を超える状態になっていた人件費をはじめ経費全般を見直して、無駄な費用の削減を行った。さらに従業員の働き方の見直しや、就業規則の改定等も進め、改善のための下地づくりを行った。その結果、従業員は自発的に顧客サービスを行うようになり、ハロウィンやクリスマスといったイベントや行事を年間スケジュールとして組み入れて実施することで、集客力向上につながった。当初は一部の従業員に反発もあったが、今ではイルミネーションの設営や正月飾り等、イベント準備に従業員が楽しんで取り組むようにもなった。

提案した中小企業支援施策

その後の状況

渡邉氏の改善策に対して、初めは従業員の反応は冷ややかであったが、徐々に「何かやらなければ」という意識が芽生えてきた。長年、正社員は現場を知らず、パート従業員に任せていたため、「こういう風に変えてください」と言っても簡単には変わらない。そのため、丁寧に「変える理由を納得させる」プロセスを続けたところ効果が表れ、少しずつ変わっていった。結果として一部退職者が出たものの、多くの従業員に考え方を浸透できたため、次第に改善に向けた変化を受け入れる組織体制を構築することができた。組織は部門ごとに統制され、社内の命令系統や権限・責任が定められた結果、現場を知らない正社員はいなくなった。給与体系を年功序列に基づいたものから実績に応じたものへと変更し、無駄な経費も削減した。「赤字経営が当たり前」だった収支は黒字化した。さらに年間を通じて行ってきた集客イベントは顧客に着実に浸透し、観光シーズンを中心に、コロナ禍以前よりも多くの来場客があった。

企業様の声

私の改革を応援していただいたことで、「私は一人ではない」と実感できたことがうれしかったです。あきる野商工会の経営指導員や中小企業診断士に、「渡邉支配人がやっていることは正しいことなので、自信を持ってやってほしい」と言われて、背中を力強く押してもらえました。イベントの開催や集客する方法については、私の考え方も採り入れながら専門家としての提案もいただけたので、実質的に改革の後押しをしていただいたと思っています。2023年4月から行動計画に本格的に取り組みましたが、同年12月には成果を実感できました。今後は安定した黒字経営化を目指し、地域活性化につながる施策をどんどん
打っていきたいです。
(支配人:渡邉智宣氏)

支援者の声

渡邉支配人は、コロナ禍も重なり早急な経営改善が必要な時期に着任され、直ちに過去10年の収支状況の分析、事業の外部委託の検討等を行う中で、従前の経営体制からの脱却に苦労されていました。そのなかで本プロジェクトによる支援では、渡邉支配人の考える経営改革の方向性が正しいと後押しすることや料金体制変更の助言、地元住民や学生を巻き込むような集客イベント実施の提案等を行いました。そして事業計画作成支援後の決算収支では売上増、費用削減に成功し、目標であった黒字化も達成できました。渡邉支配人のリーダーシップと従業員の皆様の努力の賜物であると思慮するとともに、あきる野市を代表する観光拠点施設として益々の発展を期待します。
(あきる野商工会:齊藤政幸氏)

企業情報

企業名 新四季創造株式会社
代表者 代表取締役:中嶋博幸氏
創業年 2006
業種 サービス業(温泉施設経営)
所在地 東京都あきる野市乙津565
事業PR
URL http://www.seotonoyu.jp/


中小企業診断士 上杉嘉邦

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