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ハーネス業界初の事業形態で業界トップを狙う

企業名:アライ電子株式会社  取材先ご担当者様:代表取締役:佐藤悟志氏

商社から製造業へと転身した新社長が描く新生アライ電子の未来

製造業の経験がないため、事業を拡大しようにも、新規に仕事を受注していいかどうか判断することができなかった。常時1,000種類以上ある製品はアナログで管理されており、各製品がいま生産工程のどこを動いているのかが全くわからず…

企業概要

アライ電子株式会社(代表取締役:佐藤悟志氏)は、様々な機械を繋ぐ配線として使われるワイヤーハーネスを多品種少ロットで製造している。1992年に前社長の新井直明氏が設立して20年以上にわたり堅実な経営を続けてきたが、高齢となったため2016年11 月、現社長の佐藤氏に事業承継された。

佐藤氏は元々20年以上、当社にハーネス製造機器を卸す小規模な商社の経営者だった。前社長から相談を受けて事業承継先探しを手伝っていたが、紆余曲折を経て最終的に自分が承継することを決意した。その理由は、「技術力が高いことを知っていたため、この会社を残したい」と強く思ったからである。

企業の悩み

佐藤氏には事業を引き継いだ時点で構想があった。それは、全国のハーネス製造会社とのネットワークを持つ商社の強みと当社の高い技術力を融合させることである。

佐藤氏は技術面の見識があり、どの会社が何の技術を持っているかまで把握している。このネットワークを生かすことにより、従来100図面のうち20図面だけ対応ができないという理由で当社が失注していた案件を、その20図面に対応できる会社を探すことで受注することが可能になる。

しかし、そのような未来を描いていても、佐藤氏は製造業の経験がないため、事業を拡大しようにも、新規に仕事を受注していいかどうか判断することができなかった。常時1,000種類以上ある製品はアナログで管理されており、各製品がいま生産工程のどこを動いているのかが全くわからなかったのである。

工程管理システムを導入することにより製品を効率的に管理する必要があった。しかし、工程管理を推し進めようにもその方法がわからない。そのため、製造業の専門家に助言を受けるべく武蔵村山市商工会に支援を依頼した。

導き出された課題

経営診断の結果、主に、①生産プロセスの見える化、②現場のモチベーション向上が課題として導き出された。②については、佐藤氏にとって、商社時代は社員が2~3名だったのが、いきなり20名を超える社員を抱えることになり、全く勝手が異なっていたのだ。前社長のやり方に慣れ親しんだ社員に、自分の想い描く未来に共感してもらえるようにするためには、社員との信頼関係を構築する必要があった。

提案した中小企業支援施策

当社の希望により、成長アシストコースを利用して、専門家から具体的なアドバイスを受けながら、課題解決に取り組んでいくことになった。

はじめに取り組んだのは「タイムスタンプ制度」である。製品ごとに、製造に取り掛かってから終わるまでの時間を記入することで、一図面に対して各作業が何分かかっているのかを把握するのだ。さらに効率化を図るために、バーコードによる工程管理手法も導入した。これらの支援を通して、当社にとって何が必要なのか、また何が必要でないかが明確になってきた。

また、モチベーション向上の面では、前社長時代にはなかった経営理念を策定することで「何のために働いているのか」を明らかにし、新生アライ電子がどこに向かっているのかを社員と共有できるようにした。

その後の状況

変化の中で一番大きなものは、社員の意識が変わったことである。以前は、佐藤氏と工場長の二人で相談し、事前のアナウンスなしで「ここを変えるよ」と通達してきたため、社員からの反発もあった。整理・整頓を呼び掛けるにしても、何のために片付けるのか、どうすれば生産性が上がるのかなど、動機づけが後回しになっていたのだ。

しかし、専門家が加わり、事務や製造の主要メンバーと共に工程管理を学ぶ中で、目指すべき方向が一致してきた。また、事業計画を作り、利益目標を定めることで社員の中にコスト意識が芽生え、生産性を高める目的が共有されてきた。

先日は、製造業に関する講演会に多くの社員とともに参加した。帰り際に「こんなことをやったらよいのではないか」と、改善のアイデアを皆で出し合うことができたが、このようなことは以前にはなかったことである。ようやく、新生アライ電子として飛躍するための土壌が整った。

企業様の声

ハーネス製造業は、従来、端子屋さんや電線屋さんが起業するケースが多く、私のような商社出身者がやるのは初めてのケースになります。当社の売上規模はまだ業界でも下の方ですが、商社機能と製造機能でシナジー効果を出していけば、業界トップも狙えると思っています。

現在、生産工程の改善に取り組んでいますが、その活動を通して、工程管理より必要なことも見えてきました。それは、社員の技術をより高めることです。当社は、ほとんどの社員が5年以上勤務しており、技術力が非常に高いのですが、自分の担当作業しか対応できず、効率化を妨げている部分もあるのです。

多能工化などを推し進めながら課題をひとつひとつ解決していき、既に光るものを持っている人たちが、さらに光ってくれればいいなと思っています。

経営指導員の声

先代から引き継いだ産業機器・医療機器向けハーネス事業をより堅実なものとするため、「みんながちょっとずつ幸せになれる職場づくり」という考えのもと、職場改善・意識改革に取り組まれています。代表者が変われば社風も変わるものですが、「ちょっとずつ」というのがポイントで、押し付けるのではなく、スタッフと代表者、お互い理解しながら改善していく方法がとても良いと感じています。

今後も商工会として「ちょっとずつ」のお手伝いをしていければと思います。
(武蔵村山市商工会:千木良貴臣氏)

企業情報

企業名 アライ電子株式会社
代表者 佐藤悟志
創業年 1992
業種 製造業(ハーネス)
所在地 東京都武蔵村山市中藤4-2-1
事業PR
URL http://www.araidenshi.co.jp


中小企業診断士 石田紀彦

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