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卸売型から加工型への展開をめざして

企業名:株式会社丸伴  取材先ご担当者様:代表取締役: 松本和夫氏

金目鯛のブランド化で神津島を元気に

鮮魚は年間通して同じ質や量では出荷できない。旬の時期に捕れた金目鯛を加工品として販売し、より多くの方に味わってほしい。そう考えて『釜めしの素』等を商品化したが、思うように売れていない…

企業概要

株式会社丸伴(代表取締役:松本和夫氏)は、1960年に先々代が創始した、くさやの加工業がルーツである。その後、鮮魚や加工品の小売業を始めた先代が早世して跡を継いだ時、松本氏は19歳であった。以来45年間、鮮魚の仲卸事業に注力し、今では港に水揚げされる鮮魚の約5 割を購入する、島で最大手の仲卸業者である。

島の近海で捕れる魚の中で、特筆すべきは金目鯛である。くっきりとした目、鮮やかな赤色で、ほどよく脂の乗った神津島の金目鯛は、刺身やしゃぶしゃぶ等の素材として人気がある。日戻りの漁船が水揚げする金目鯛を、温度管理のノウハウにより新鮮なまま出荷する当社は、都内をはじめ各地の高級料亭等、多数の顧客を有している。

一方、小売部門は青果物も取り扱う「スーパーまるはん」として発展を遂げ、今では島の人々の生活に無くてはならない店舗になっている。こちらの運営は、後継者が担っている。

企業の悩み

当社が扱う神津島の金目鯛は着実に売れているものの、ブランド化については静岡県稲取・下田、千葉県銚子等に先行されている。松本氏は、これらの他地域産品と差別化し、神津島ブランドを確立することで、雇用を創出し島を元気にしたい、という強い想いを抱いている。

一方、鮮魚は年間通して同じ質や量では出荷できない。旬の時期に捕れた金目鯛を加工品として販売し、より多くの方に味わってほしい。そう考えて『釜めしの素』等を商品化したが、思うように売れていない。また、加工事業の本格展開には、多額の設備投資が必要になる。

松本氏は、神津島ブランドの確立に向けて商品開発や設備投資に関するサポートを得ようと、日頃より社会保険等の様々な相談に乗ってもらっていた、身近な商工会の経営指導員に相談し、当事業の利用に至った。

導き出された課題

島の事情に精通している中小経営診断士による経営診断の結果、島内人口が減少する中、島外販売を充実させる必要性が改めて浮き彫りになった。ただし、規模の大きな加工事業にはリスクもあるため、本格的着手に先だって商品開発や設備投資を含む総合的な事業計画を策定し、必要資金を調達するようアドバイスされた。

また、加工事業を本格展開する際に、ネックになるのは人材不足である。就業規則や賃金規定等、人事制度全体を見直し、魅力的な職場づくりをすることで優秀な人材を集め、現場を任せられる従業員として育成する必要についても言及された。

提案した中小企業支援施策

当社の希望により、中小企業活力向上事業(成長アシストコース)を利用して、専門家から具体的なアドバイスを受けながら、上記の課題解決に向けて取り組んでいくことになった。

食品加工や卸売分野に強い専門家がディレクターとして選定され、支援がスタートした。

当社からは「成長産業等設備投資特別支援助成事業」の利用希望が出されたが、同事業は商品開発や販売先に目処が立った企業の、生産に向けた設備投資を支援するものである。そこで、近い将来の同事業を利用した設備投資を見据えつつ、今回の支援では、商品開発に先立つ神津島の金目鯛自体のブランディングに取り組むことになった。

支援の中では、デザインや販促に強い専門家をアドバイザーとして招聘した。ワークショップ的な手法により、神津島の金目鯛ならではの魅力を、島外の一般消費者にもわかりやすい明快な言葉やデザインに落とし込み、ブランドコンセプトとして整理することができた。

その後の状況

現在は、これまでの支援を活かしながら、既存の卸先の店頭で使用するリーフレット等、神津島の金目鯛の魅力を伝える販促グッズの作成が進められている。まずは鮮魚としての金目鯛のブランディングを先行させ、その後はブランドイメージを体現した加工品の商品開発と生産・販売計画の具体化を進める予定である。

商品開発については、物単体にとどまらず、神津島の金目鯛の魅力が端的に表現され、一般消費者に効果的に伝わるよう、ネーミングやパッケージデザイン、動画によるプロモーション等までを含めた、トータルな視点での商品設計の支援が予定されている。

企業様の声

早期に設備投資に着手したい、そのために助成金を使いたいという、当初の目論見とは異なったが、今回経営診断と成長アシストコースで支援を受けたことは、意義深かったと感じている。

以前は「名前を付ければブランドだ」と思っていたが、専門家との話し合いの中で、そう簡単なものではないと分かった。今まではおぼろげに見えていた神津島や島の金目鯛の魅力を、第三者にわかるように改めて整理することができ、例えば「脂ののった金目鯛の旨みを活かした加工品を作り、美味しさを誠実に伝えたい」等、これからの商品開発の方向性も見えてきた。

神津島では少子高齢化と人口減少が進んでおり、働ける場所が少ないために、若い人が島外に出て行き戻ってこないという悪循環を生んでいる。自分たちを育んでくれた神津島に働ける場所を増やし、人口を増加させることで島に恩返しをしたい。そのためにも、商工会等の公的機関や支援施策を活用しながら、加工業への進出をぜひ成功させたい。

経営指導員の声

当社は、パートを含めると仲買と小売の両事業で計42人を雇用しており、島の重要な雇用の担い手になっている。加工業への進出はハードルの高い取組ではあるが、何としても成功させていただきたい。今後も惜しみなくバックアップさせていただくので、何でも遠慮なく相談し、支援施策の利用等でうまく商工会を活用してほしい。
(神津島村商工会:土谷良顕氏)

企業情報

企業名 株式会社丸伴
代表者 松本和夫
創業年 1960
業種 卸売・小売業
所在地 東京都神津島村102
事業PR
URL


中小企業診断士 松林栄一

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