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専門家コラム

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差別化を実現する「顧客価値」とは?

どうすれば顧客は、自社の商品やサービスを購入してくれるのでしょうか? そのヒントとなるものが「顧客価値」の考え方です。そして、他社との差別化を実現するフレームワークとは・・・

顧客価値提案の考え方

他社との差別化の出発点はユニークな顧客価値の提案


「顧客は抱えている問題の解決のために製品やサービスを買う」


顧客がモノやサービスを買うのは、モノやサービス自体が欲しいからではなく、それらによって何らかの便益やソリューションを得たいからです。たとえば、電動ドリルを購入するのは「穴を開けたいから」であり、ジムに通うのは「若々しい肉体を手にしたいから」です。

世の中には実に多くの製品やサービスが存在しますが、顧客が抱えている問題をすべて解決できているわけではありません。また、顧客自身、必ずしも自らが抱えている問題に気がついているわけでもありません。よって、世の中がまだ満たしていない問題、潜在的には存在するが、まだ誰も気がついていない問題を満たすことができれば、大きな差別化となります。

しかしながら、ユニークな顧客価値を発見することは、容易ではありません。そこで、本コラムでは、顧客価値を発見するためのフレームワークをいくつかご紹介します。

フレームワーク(1) ≪顧客価値の基本式≫

顧客価値は、次の式で示されます。

顧客価値 = ベネフィット(便益) ÷ コスト


ベネフィットには、理性面でのベネフィットと感性面でのベネフィットがあります。

「機能(性能・スペック)的価値」が理性面でのベネフィットにあたり、「情緒的価値(商品を使ってみて感じる価値)」や、「自己実現価値(自分のパーソナリティを表現してくれる価値)」は、感性面でのベネフィットになります。

石鹸を例にすると、「汚れがより落ちる」「泡立ちがよい」が機能的価値、「色や香り」「感触」「サッパリ感」が情緒的価値、「自然素材」「ナチュラル志向」「ラグジュアリー感」が自己実現価値になります。

サービス業の場合には、ベネフィットに加え、「プロセス品質(提供過程の品質)」が加わることがあります。
製品のように形がないサービスの場合、購入前に適切な品質評価をすることが困難です。場合によっては、購入後も妥当な品質評価ができません。よって、利用者は、サービスの提供過程でサービスの質を評価しがちです。

サービス内容それ自体は他と大差なくても、スタッフが顧客の事情に即して真摯に対応すれば、顧客にとっての価値や満足は高くなります。

一方、コストには、金銭面でのコスト(顧客の支払額)、時間面でのコスト(製品を買いに行く、あるいはサービスを利用できる場所までいくのに要する時間)、肉体面でのコスト(商品やサービスを手にし、据え付けて、利用可能にするまでの身体的疲労)、精神面でのコスト(使い勝手を覚える手間など)があります。
 
分子のベネフィットを上げるか、分母のコストを下げれば、顧客価値は上がります。2つのベネフィット、4つのコストのいずれかを自社で貢献できないか考えてみてください。

フレームワーク(2) ≪使用シーンを考える≫

同じ商品・サービスであっても、状況によって顧客が価値を見出す点は様々です。

1.越境財
消費者の環境変化を作る原因となるアイテム

例:インターネット、自動車・バイク、旅行・観光、アミューズメント施設

2.守護財
消費者の危機を救い癒しや慈悲をもたらすアイテム

例:食品・飲料、銀行・保険、ホームセキュリティ、家電、家具・インテリア、美容、健康機器、アクセサリー

3.強化財
消費者を成長させ活力や能力を高めるアイテム

例)パソコン、ステーショナリー、書籍、スポーツ用品、ファッション、食品・飲料、教育

4.報酬財
消費者の勝利により獲得・贈与されるアイテム

例)住宅、高級車、宝飾品、貴金属、教育、アルコール類、嗜好品


たとえば、エステは人によっては「自分を変えてくれるもの」「成長させ活力や能力を高めるもの」「勝利により獲得・贈与されるもの」であったりします。

「自社の製品・サービスは顧客にとってどのような価値があるか?(どのような価値を提供したいか?)」考えてみましょう。

フレームワーク(3) ≪顧客の不都合を取り去る≫

フレームワーク(1)で、顧客にとってのコスト(使用にあたっての何らかの手間ヒマ)を取り上げました。顧客にとってのコスト(不都合)を取り除くためには、次の3つの「不」に注目する必要があります。

●使用上の「不便」を取り去る

「使いやすさ」「気軽さ」「頼みやすさ」「わかりやすさ」など、「にくさ」を「やすさ」に変える。
例)アマゾンのネット注文・即日配送

●やりすぎから「不必要」を取り去る

顧客にとって必要な価値の提供にしぼる
例)QBハウス、シンプル携帯電話、立ち飲み屋

●ガッカリ感とも言うべき「不確実性」を取り去る

顧客が購入する前に感じる「購入後の後悔」を解消する
例)返品自由、価値保証(成果課金)、従量料金制、お試し利用

フレームワーク(4) ≪消費者の活動を考える≫

フレームワーク(3)で取り上げた顧客の不都合を取り去るためには、顧客の購買や使用にあたってのプロセスに注目する必要があります。

<購入ステージ>
1.問題認識(ニーズの顕在化)
2.情報探索
3.商品選択
4.注文
5.配送
6.支払い(ファイナンス)
7.商品受け取り

<用事解決ステージ>
8.商品据付・組立
9.使用マスター
10.用事解決

<継続ステージ>
11.商品返品
12.メンテナンス
13.商品廃棄
14.商品取り替え・アップグレード


売り手(企業)側は、えてして販売時点がゴールと考えてしまいますが、顧客にとって購入時点はその後の使用にあたってのスタートにすぎません。消費者はこのプロセスのいずれかに問題を抱えています。消費者の活動全体に目を拡げて自社が貢献できることを考えてみましょう。

フレームワーク(5) ≪メリハリをつける≫

顧客にとってのベネフィットを考える上でありがちなのが、何でもかんでも機能をつけてしまうということです。「顧客の望むことは様々だからいろいろな機能をつけたほうがよい」「たくさん機能をつけたほうが差別化できる」という発想がまだまだ根強い気がします。

しかしながら機能の多くは利用者にとって不必要なものであったりします。また機能を増やすとそれだけコスト(顧客にとっては価格)に跳ね返ります。「機能は最小限度でよいから安いものを」という顧客は多く存在します。「不必要な機能を取り除いて顧客が求めやすい価格で提供すること」も立派な差別化なのです(これを「マイナスの差別化」といいます)。

仮にある機能を充実させるにしても、自社の顧客にとっては価値のない他の機能を削るといったメリハリが必要です。メリハリのポイントは、次のとおりです。

●業界では当たり前とされるどの要素を「取り除く」べきか?
●どの要素を業界標準以下へと「減らす」べきか?
●どの要素を業界標準より「増やす」べきか?
●業界でこれまで提供されていないどの要素を「付け加える」べきか?


中小企業の場合、機能面(理性面でのベネフィット)での差別化はかなり難しいでしょう。しかしながら、それ以外のベネフィットやコストで顧客価値に貢献することはできます。本コラムでご紹介したフレームワークを組織で共有し、顧客価値のアイデア出しの材料に使って頂ければ幸いです。


<参考>
『ジョブ理論』クレイトン M クリステンセン他著 ハーパーコリンズ・ ジャパン
『売れる仕掛けはこうしてつくる』栗木契、清水信年、余田拓郎編 日本経済新聞社
『ビジネスモデルのグランドデザイン』川上昌直著 中央経済社
『ブルー・オーシャン戦略』W・チャン・キム (著)、レネ・モボルニュ ランダムハウス講談社
『事例でわかる物語マーケティング』山川悟著 日本能率協会マネジメントセンター

著者プロフィール

三枝 元(サエグサ ゲン)(中小企業診断士)

大手製造業の法人営業、大手資格受験指導校の社員講師を経て独立。ビジネスモデル、モチベーション管理、チーム・プロジェクト管理、ビジネス・コミュニケーション、ビジネス思考法、法人営業などの企業支援、企業研修(セミナー)、執筆活動を行っている。
著書:「中小企業診断士のための経済学入門」(同友館)など

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