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2 マーケティング(顧客関係性(CRM))

顧客データの活用、継続的接触など、既存顧客を維持・深耕する仕組みがある

新規顧客の獲得より、既存顧客の維持が重要

 モノへの消費支出減少や人口減少社会の到来など、21世紀においては「パイ」の増加を前提としない企業経営が要求されています。

 今の時代、顧客は放っておけば、どんどん減少してしまいます。顧客獲得を重視するマーケティングから、既存顧客の優良顧客化や、既存顧客の流出防止を重視する顧客維持のマーケティングへ、力点をシフトさせていくことが必要なのです。

 顧客との「継続的接触」は、顧客維持のための有効な手段となります。その理由として、以下の2つの要因をあげることができます。

 ①自社の存在を常に顧客の心にとどめておく効果
 ② 接触そのものによる好意の増加(社会心理学で「親近性効果」と呼ば
れる)

 下図に示すように、継続接触による顧客維持効果が大きいのは、大企業ではなく中小企業です。たしかに、顧客との接触活動(例えば、「御用聞き」)は、もともと中小企業が得意としていた分野です。

顧客維持の手法とタイミング

 継続的接触の具体的な手段としては、顧客訪問、電話の利用、ダイレクトメール、Eメールの送付等が考えられます。情報紙を接触手段として利用するのも効果的でしょう。

 接触そのものが顧客維持には有効ですが、以下のようにタイミングよく顧客と接触することで、さらにその効果を高めることができます。

  1. 顧客の個人的イベント : 誕生日、記念日など
  2. 商品のサイクル : 購買後まもなく、購入後Xか月目、保証期間終了前など
  3. 顧客の購買サイクル : 買い替え時期、在庫がなくなる直前など
  4. 変化 : 季節の変わり目、新アイテムの導入など
  5. 顧客の変化 : 購買頻度の変化、住所変更、特定商品の購入など

資料:岩崎邦彦「スモールビジネス・マーケティング:小規模を強みに変えるマーケティング・プログラム」中央経済社、2004年

 このほか、顧客維持の手法としては、ポイントカードなどのフリークエント・ショッパーズ・プログラムや、DM等のパーソナル・メディアによる販売後の継続的接触・定期的接触、さらには顧客の組織化、次回購入予約サービスなど、さまざまな手法があります。

Case Study

長期継続的な関係から多くのメリットを引き出せ

 O社は、試作の仕事は原価でもよいと割り切っている。試作品のうち5 分の3 は量産品につながるので、それを受注して収益を確保している。
 試作の仕事は手間の割に利益率が高くないため、試作品を引き受けている同業者は少ないという。しかし、試作を発注する企業の開発部門との付き合いは3~5 年先の情報が入ってくるため、同社にとっては貴重な情報源となっている。また、試作品を仕上げる過程でのさまざまな問題解決の経験が社内にノウハウとして残り、他の仕事への応用として生かせるメリットもある。
(プラスチック金型製作/射出成形・13人)

顧客とより多く接触し、商機につなげろ

 P社では、ある顧客の要求に応えることで同じ業界のなかに製品が広がっていくことがよくある。また、顧客のところへまめに出入りしていると、その顧客の社内でも製品が広がっていく。例えばこれができるならこっちはどうだ、といった具合だ。そして、複数の顧客に販売すると、次のステップとして全国展開のために広告を打つ、というかたちで着実に販売経路を拡げてきた。
(振動計測装置等製造・23人)

Step Up

(1)取引量に応じた割引やポイントカードなど、顧客に特典を与えて囲い込みを図っている

 顧客の維持には、そのための仕組みを設けることが有効です。顧客を維持するための仕組みのことを「ロイヤルティ・プログラム」と呼びます。ロイヤルティ・プログラムは、自社との関係を強化するような顧客の購買行動に対して、金銭的報酬や特別扱いなどで報いるための仕組みです。その代表は、ポイントカードやスタンプカードです。

 ポイントカードの効果は、顧客の維持だけではありません。ポイントカードを利用することによって、顧客の購買履歴(購入品、購買日、利用頻度、平均購買金額など)などを把握することが可能になります。すなわち、“個客(” 一人ひとりの顧客)の顔が見えるようになるのです。このような顧客データを蓄積し、分析することによってマーケティング効率を向上させていくことも重要です。

(2)いつどんな商談をすすめたかを記録し、参照することができる

 企業が顧客に対して、効果的な接触活動を行うためには、個々の顧客との取引状況を記録し、適宜参照することができるようにしておくことが重要です。そのためには、顧客データベースを構築することが有効です。

 取引状況にあわせた顧客接触の事例として、米穀専門店の「米びつ管理」をあげることができます。顧客の購買サイクル、前回の購入日時がわかれば、いつ頃に顧客の米びつが空(から)になるのかが予測できます。

 米びつが、空になる少し前に顧客に接触することができれば、顧客が継続的に自店を利用してくれる可能性は高まるでしょう。逆に、米びつが空になってしばらくして接触した場合は、その間に顧客は別の店から米を購入してしまうかもしれません。

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