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システム導入でDX? その前に押さえておきたい3つのポイント<後編>

DXの必要性が高まり、既に取り組みを始められた企業もあるかと思いますが、本格的なシステム導入を行う前の準備がとても重要です。前編では、チーム作りの重要性についてお伝えしましたが、後編ではさらに踏み込んだ内容をお伝えしていきます。

(掲載日 2022/03/11)

システム導入でDX? その前に押さえておきたい3つのポイント<後編>

ポイント2 ユーザースキルの把握と統一


2つ目のポイントは、そのシステムを利用する各部署のメンバー一人一人(ユーザー)のスキルを把握すること、そして必要スキルに満たない人がいるのであれば底上げのための教育を行い、全体のスキル統一を図ることです。

ITスキルが足りないユーザーが多くいることが前もってわかっているのであれば、操作の難しいシステムの導入は避ける必要があります。もちろん、多くのシステムは慣れることで誰でも使えるレベルのものになっているはずですが、これまでアナログ的手法に自信をもって業務に力を発揮してきたベテランほど、ITを活用することに対する心理的ハードルが高く、導入後になかなか元のように力を発揮することができない場面はよく見かけます。システムを導入する前に、ITに触れる機会を積極的に提供し、必要であれば研修等を実施しながらITへの苦手意識を取り除いておくようにしましょう。

最近ではパソコンよりもスマートフォンやタブレットの方が身近になっており、そちらの方がハードルを低く感じる人も多いようです。ITに苦手意識のある社員が多い企業であれば、導入するシステムがそうした社員に対応できるものかどうかも選定時の検討要素の一つとして考えると良いでしょう。

また、IT導入に対しての心理的ハードルの一つに、「自分の仕事がITに奪われる」という考え方があります。経営者にとっては「業務の効率化」であっても、そこに実際に関わっている社員からは「私の仕事が無くなる=私の価値が無くなる」という見え方になっているかもしれません。スキル把握や教育研修の機会を通じて、ITによる業務変革で会社をどう変えていこうとしているのか、その時に一人一人に与えられる新たな役割や、社会に提供できる新たな価値などを、経営者の口からしっかり語っていただくことが非常に大切です。



ポイント3 本格導入前に簡易版システムを作る


3つ目のポイントは、現在の業務をIT(システム)を活用することでどのように変えていくことがベストなのか、シンプルにまとめた「簡易版システム」を本格導入前に作ってみることです。

各部署の課題を抽出し、どの課題解決に重点を置くことが企業全体で効率的になるのかを考え、優先度の高い課題から解決できるような仕組みを大まかに検討します。
一般的にシステム導入の際に最初に行われるのは「業務フローチャートの作成」ですが、小規模な仕組みを考えている場合にはそこまで難しいものでなくても大丈夫です。現在の業務の流れを、各部署でのタスク(やらなければいけない作業や課題)と一緒に書き出して見える化してみます。他の部署からは普段見えていないようなタスクが沢山あることに気が付くでしょう。

例えば製造業において基幹業務システムの導入を検討するのであれば、受注/仕入/生産計画/製造/納品/請求などのように業務ごとにタスクを書き出していきます。もし受注業務で、現在は電話・FAX・メールなど様々なツールで受注しているのだとしたら、誰がどのようなタイミングでその情報を受け取っているのか、そしてその後どのように製造部門に伝えているのか細かく書き出してみます
それを元に、今度はシステム導入後の業務の流れをイメージして、各部署のタスクを並べ替えてみましょう。全体が楽になるような業務の流れであれば一番良いですが、状況によってはあまり楽にならない部署や、今までになかったタスクが追加されるような部署も出てくるかもしれません。プロジェクトチーム内には、それぞれの部署の代表がいるはずですから、全体の目的に沿う形で相互の利益を調整するのに役立つはずです。

その上でExcelやスプレッドシートなどの身近なソフトを活用し、導入予定システムに近い動きをする仕組みを作ってみましょう。さきほどの受注業務を例に考えると、Googleフォームと呼ばれる無料の仕組みを使って受注情報を入力し、自動的に作成されるスプレッドシートで生産部門に見える化する、といった方法も考えられます。

特に今までは全くツールを活用せず、アナログな手法や、担当ごとにバラバラにデータ管理をしていたような場合には、このような簡易版システムを本格導入前に作ることを強くお勧めします。

それにより自社に本当に必要な機能は何か、システム選定時に注目すべきポイントがどこなのかが具体的に見えてくるようになります。また、関わるユーザーにも直接簡易版システムを触ってもらい、今後の業務の流れを理解してもらいながら、改善が必要なポイントなどの意見をもらうこともできるはずです。それにより、全社ワンチームとなって変革に向け意識を合わせていくことができますし、場合によってはコストのかかる大規模なシステム導入をしなくて済むことも考えられます。

システムを導入することは、多かれ少なかれ今までとは仕事の仕方が変わることになります。その際に絶対に譲れない線がどこなのか、見極めることができないままに導入するシステムを決めてしまうと、結果的に提供しているサービスや商品の価値を下げてしまうことにもなりかねません。事前に、どこまで具体的にシステム導入後の様子をイメージすることができるのか、これが成功のための大きなポイントです。



まとめ


多くの事業者さんを見ていると、「ITは導入するだけで魔法のように効率が上がるもの」と思われているのではないか感じることがあります。ITはあくまでツール(道具)です。本当に大切なのはそれを道具として使いこなすこと。道具を使うのは人ですから、ITに関わる人たち、そして仕事に関わる人たちが幸せになるような使い方でなければ意味がありません。

使う人にしっかり寄り添うシステム導入を実現できれば、困難な時代の中でも、組織を変革し企業自体の価値を上げることができるはずです。
ぜひご紹介した3つのポイントに注目して事前の準備を行い、システム導入を成功させ、貴社のDXを実現してください。

著者プロフィール

古澤 登志美(株式会社ワンズ・ワン 代表取締役)

中小企業診断士/ITコーディネータ
2001年に起業、パソコン出張サポートとITセミナー・研修を二本柱に、業務効率化やマーケティングを中心としたIT活用支援を続けている。システムありきではなく、働く人に注目し、社内の状況やユーザーのスキルに合わせた提案や支援を行うことで、継続的にIT活用するためのスキルを支援先に定着させることを得意とする。

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