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パワーハラスメントのない職場をめざして

ハラスメントとは「嫌がらせ」を意味する言葉で、企業の経営においても重要なテーマとなっています。2022年4月からは中小企業でもパワーハラスメントの防止措置が義務になることをご存じでしょうか? パワーハラスメントとは何か、何が該当するのか、どう対策するのかお伝えします。

(掲載日 2022/02/07)

パワーハラスメントを職場から撲滅しよう!!

ハラスメントは企業の抱える重大な問題およびリスクのうちの一つですが、職場の現状をみるとハラスメントをなくすことは簡単ではありません。経団連が、2021年12月14日に公表した「職場のハラスメント防止に関するアンケート結果」でも、パワーハラスメントに関する相談が増えたとする企業が44.0%と多くなっています。中小企業でも、2022年4月からパワーハラスメント防止措置が義務化されますので、その対策は急務です。

では、企業のとるべき対策にはどのようなものがあるのでしょうか…

労働局等への相談では「いじめ・嫌がらせ」がトップ

                         
職場におけるパワーハラスメントの現状について、都道府県労働局等への労働相談では<図表-1>の通り平成24年度(2012年度)から連続して「いじめ・嫌がらせ」というパワーハラスメントにつながるような相談がトップを占めています。

<図表1>

出典: 「令和2年度個別労働紛争解決制度の施行状況」(厚生労働省)令和3年6月30日

一見すると、令和2年度(2020年度)は少なくなっているようですが、大企業の職場における相談が別に計上されることになったためで、実際は増加しています。


パワーハラスメントとは…


では、どんな行為がパワーハラスメントとされるのでしょうか。厚生労働省のハラスメント対策総合サイトである「あかるい職場応援団」(https://www.no-harassment.mhlw.go.jp/)では、次のように定義されています。

1.職場のパワーハラスメントの3要素
(1)優越的な関係を背景とした言動であって
(2)業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより
(3)「平均的な労働者の感じ方」で労働者の就業環境が害される
上記の3要素すべてを満たすことが必要です。

2.代表的な6類型
(1)身体的な攻撃(暴行・傷害)
(2)精神的な攻撃(脅迫・名誉毀損・侮辱・ひどい暴言)
(3)人間関係からの切り離し(隔離・仲間はずし・無視)
(4)過大な要求(業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制・仕事の妨害)
(5)過小な要求(業務上の合理性なく能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと)
(6)個の侵害(私的なことに過度に立ち入ること)

パワーハラスメントの代表的な類型は以上の6類型がありますが、それ以外でもパワーハラスメントになる場合があることに注意が必要です。


これってパワーハラスメントになるの?


実際の職場では、パワーハラスメントになるかならないかの事例を知りたいという声が多いようです。
ここでは、厚生労働省の資料から、具体的な例について<図表-2>に挙げてみます。

<図表-2>

出典:令和2年1月15日厚生労働省告示第5号


<図表-2>の例は、あくまで一例です。実際にはさまざまな事例があり得ます。また、個別事案によっては、判断が違ってしまうこともあり得ますので、充分に注意して対応することが求められます。


事業主はどんな対策をとればいいの?


では、事業主は職場からパワーハラスメントをなくすために、どんな対策をすれば良いでしょうか。
以下、対策の基本的な枠組みを<図表-3>に示します。

<図表-3>

『予防するために』

1.トップのメッセージ
(1)組織のトップが、職場のパワーハラスメントは職場からなくすべきであることを明確に示すことが重要です。
(2)パワーハラスメントの撲滅は、全従業員が取り組むべき会社の課題であることを明確に発信しましょう。

2.ルールを決める
(1)就業規則に関係規定を設けたり、労使協定を締結します。
(2)就業規則を変更したときは、従業員への内容の周知が義務付けられています。従業員への説明会や文書配布を必ず実施してください。
(3)予防・解決についての方針やガイドラインを作成します。

3.実態を把握する
(1)従業員を対象にアンケートを実施する。
(2)従業員向けの相談窓口を設置している場合は、アンケートに合わせて必ず相談窓口を紹介しましょう。
(3)アンケート以外の方法として、個人面談の自己申告項目に入れることも有効です。

4.教育する
(1)管理監督者と一般従業員に分けた研修を実施しましょう。企業規模が小さいときは、管理監督者と一般従業員を合わせて実施しましょう。
(2)研修内容には、トップのメッセージを入れましょう。会社のルールや取組内容を加えると効果的です。

5.周知する
(1)組織の方針や取組について周知・啓発しましょう。
(2)周知は計画的かつ継続して実施していきましょう。

『解決するために』

6.相談や解決の場を設置する
(1)企業内外に相談窓口を設置します。外部の専門家との連携も効果的です。
(2)相談しやすくするために、相談者の秘密が守られることや不利益な取り扱いを受けないこと、相談窓口での対応の仕方を明確にしておきましょう。
(3)相談対応の流れは以下のように行いましょう。
 ①相談窓口(一次対応)   ②事実関係の確認   ③とるべき措置の検討  
 ④行為者・相談者へのフォロー   ⑤再発防止策の検討

7.再発防止のための取組
(1)行為者に対する再発防止研修を実施しましょう。
(2)予防のための取組内容について、継続的に検証、見直して従業員の理解を深めていくことが一番の再発防止策です。
(3)相談者に対しても、その後の職場が安全で快適な環境になっているか確かめましょう。

以上ですが、「明るい職場応援団」HPには分かりやすい動画や研修資料等が充実しています。また、「パワーハラスメント対策導入マニュアル」第4版(厚生労働省)も参考資料が豊富にありますので、ぜひ参考にしてみてください。


パワーハラスメントが及ぼす影響


パワーハラスメントが起きた場合、職場や被害者等にどんな影響があるでしょうか。ここでは、職場や被害者の健康、行為者等に分けて考えてみます。
1.職場での影響
(1)従業員モラールの低下
(2)生産性の低下
(3)企業イメージの悪化等

2.被害者の健康
(1)心理的ストレス反応・うつ病
(2) パワハラ目撃者もメンタル不調リスク上昇等

3.行為者等
(1)社内での処分
 懲罰規定(就業規則):「減給」「降格」「懲戒解雇」など
(2)民事上の責任⇒損害賠償責任
 (行為者) 不法行為責任
 (会  社) 債務不履行責任(安全配慮義務違反)、使用者責任
(3)社会的責任
 社会的信用・社会的地位の失墜、家庭の崩壊等

出典:「ビジネス・レイバー・トレンド」(2019年10月号。独立行政法人労働政策・研修機構)
「管理職向け自習用テキスト」(「明るい職場応援団」HP)より、筆者作成。



パワーハラスメントのない職場をめざして


冒頭で紹介しましたようにパワーハラスメントは年々増加しています。また、日本を代表するような企業やスポーツクラブでパワーハラスメントが起こったとの記事が、新聞紙上で報道されています。パワーハラスメントはなくすことは、「言うは易く行うは難し」というのが現実の様です。
パワーハラスメントをなくすには、取組に対する継続的な検証と見直しと同時に、現場の管理者が日頃の信頼関係を大切にすることが基本です。風通しの良い職場づくりを心がけ、グレーゾーンの問題が発生したときこそ、きちんと処理する(問題は芽の段階で摘み取る)ことが重要となります。

そして、あなたの会社・職場からパワーハラスメントを撲滅してください。

著者プロフィール

宮﨑 博之(宮﨑経営労務管理支援事務所 代表)

中小企業診断士、特定社会保険労務士
サービス業の会社で、35年間人事・採用、労務・安全、教育、許認可、福利厚生等の総務関連業務に従事、60歳定年を機に独立する。豊富な経験を活かし中小企業の“ヒト”に関するお悩み事について、伴走型で支援している。

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